名作、神奈川沖浪裏の展示も。カリフォルニアで「葛飾北斎コレクション」開催中

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2023/12/23

現在、アメリカの西海岸に位置するカリフォルニア州サンタアナ市の「Bowers Museum(バウワーズ博物館)」にて、大英博物館が所蔵する「葛飾北斎コレクション」の特別展覧会が開催されています(2023年10月21日~2024年1月7日)。

バウワーズ博物館外壁に吊るされた特別展覧会ポスター image by:角谷剛

展覧会は「Beyond the Great Wave」と名付けられています。これは北斎の代表作である「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」から来ているようです。ポスターや会場入り口にもこの作品が大きく使われています。

北斎はゴッホやモネなどのポスト印象派の画家たちに大きな影響を与えたとされています。江戸時代後半から明治にかけて、日本美術が西洋で流行したことを「ジャポニズム」と呼びますが、北斎はその代表格でもあり、世界美術史上の巨匠です。

今回の展覧会は、かつて日本から海を渡って大英博物館に運ばれた北斎の作品が、1世紀以上の時を超えて、さらに日本とは逆方向に地球を半周してアメリカ西海岸までやってきたというわけです。

博物館の外壁には特別展覧会ポスターが貼られ、正面入口を入ってすぐのスペースに特設会場が設けられています。私が訪れたのは平日の午前中でしたが、多くの人が列を作っていました。

100歳を超えるまで画家として成長し続けようとした北斎

北斎コレクション特別展覧会スペース入口 image by:角谷剛

展覧会場は6つのセクション(キャリア初期、成功と名声、自然界と超自然界への関心、私生活、不死の探求)に分かれ、北斎の画風やテーマがどのように変遷していったかを追いかける構成になっています。

私自身はまったく美術には詳しくありません。展示されていた作品がどのような芸術的価値があるのかについては正直よくわかりません。ただ、この展覧会で知った北斎の”人”としての姿に深い感銘を受けました。

江戸時代後期に生きた北斎は、90歳という当時としてはかなりの長寿を得た人です。少年のころから絵を描き始め、画家としての生涯活動期間は実に70年以上にも及びます。

「神奈川沖波裏」image by:After 葛飾北斎, Public domain,via Wikimedia Commons

さらに驚嘆するべきは、彼の代表作の多くは還暦(60歳)を過ぎてからの30年間で生み出されたということです。


北斎はその長い生涯で何回か画号を変えました。還暦を迎えてから用いるようになった号が「為一」です。

還暦とは普通なら隠居している年齢ですし、現代でも仕事から引退するための区切りとして使われる例が多いわけですが、北斎はこの年齢に着いて世間一般とはまったく別の捉え方をしていたようです。

引退するどころか、為一こと北斎はその後ますます精力的に作品を生み出し続けました。60歳を区切りに、心機一変して再び「一歳に為る」という北斎の気迫がその名に込められているかのようです。

71歳のときに発表した「富嶽三十六景」が最も有名な代表作となりましたが、北斎はそれでも歩みを止めませんでした。

あるときには「画狂老人卍」とも名乗り、画号を変えただけではなく、テーマや技法も常に新しいものに挑んでいきました。

「礫川雪ノ旦」image by:葛飾北斎, Public domain, via Wikimedia Commons

そして北斎はいつまでも自分に満足することがなかったようです。75歳で発表した『富嶽百景』の跋文(ばつぶん)において、自ら描く絵が100歳で「神妙の域」に到達し、110歳で「一点一格にして生きるがごとくならん」と希望を込めて述べています。もっともっと長く生きて画家として成長することを願っていたのです。

90歳で迎えた死の間際にも、「あと10年、せめて5年の命を天が与えてくれば、本物の画家になることができるのに」という意味の言葉を発したとも伝えられています。

この言葉は英訳されて、展覧会場の壁に大書されていました。きっと文化や社会の枠を超えてアメリカ人にも強い印象を与えるのでしょう。

世界のさまざまな歴史と美術を伝える「バウワーズ博物館」

バウワーズ博物館正面門前 image by:角谷剛

バウワーズ博物館」は1936年に設立された長い歴史を持ちます。1980年代後半に長く閉鎖された時期があり、大規模な改装がなされた現在の施設は1992年に一般再公開されたものです。

10万点以上のコレクションを所有し、ネイティブ・アメリカン、カリフォルニア、オセアニア、そして中国の古代芸術を常設展示しています。

今回の北斎コレクションが大英博物館との提携で実現したように、過去にも、南京博物館、上海博物館、大英博物館、東京国立博物館、バチカン美術館、ボゴタ黄金博物館といった、世界中のさまざまな博物館や美術館と提携しての特別展覧会をおこなってきました。

博物館があるサンタアナ市はロサンゼルスの南側に位置するオレンジ郡の中心にあります。ロサンゼルス国際空港からは車で1時間くらいの距離にあり、ディズニーランドやアナハイム・スタジアムといった観光スポットが集中するアナハイム市とも隣接する交通便利な場所です。

今年の冬にロサンゼルス周辺を訪れる予定がある人は、ぜひ「バウワーズ博物館」にも足を運んでみてはいかがでしょうか。

  • Bowers Museum(バウワーズ博物館)
  • 2002 N. Main St, Santa Ana, California
  • 714-567-3600
  • 料金:大人18ドル/シニア(62歳~)・学生(12歳~)15ドル/12歳以下無料
  • 開館日:火曜~日曜
  • 開館時間:10:00~16:00
  • ホームページ
  • image by:角谷剛
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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角谷剛(かくたに・ごう) アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大谷翔平を語らないで語る2018年のメジャーリーグ Kindle版』、『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。

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