海外への「日本酒」輸出が過去最高に。なぜ外国人はSAKEを愛するのか?

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2023/09/23

選択肢の多様化、偏ったイメージが「日本酒」離れを加速する

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どうして、海外ではこれほど人気のある日本酒が、国内では人気を落としているのでしょうか。

農林水産省などの資料を見ると、国内市場における選択肢の多様化が挙げられています。

ビールもあればハイボールもある、レモンサワーもあればカクテルもある、さまざまなお酒の選択肢がある中で、日本酒を選ぶ理由が思い浮かばないといった感じでしょうか。

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日本酒ビジネスを海外で展開する日本人起業家にインタビューしたBBCニュースの記事では、他の要因として日本酒の”負のイメージ”も挙げられています。

みなさんは日本酒にどのような印象がありますか?筆者の場合、少し前まで「ワンカップ酒」の印象が強かったです。

実際にワンカップ酒を飲んだ経験がないにもかかわらず、外でワンカップ酒を飲む高齢男性の印象から、勝手に日本酒に対しておじさんくさい印象を抱いていました。

あとは『ドリフ大爆笑』のコントなどを通じて、とっくりからおちょこに日本酒をついで酔っぱらっているような、デフォルメされた「サラリーマン」の印象も強いです。

そのようなイメージの蓄積で、飲まず嫌いの若い人も存在するのではないでしょうか。現に、飲まず嫌いな若者を日本酒好きにする日本酒セットづくりのためのクラウドファンディングまで存在するくらいです。

イメージの偏りに加えて、多様な選択肢が市場に出回っている、そのせいで国内ではますます、飲まない人が増えているのかもしれませんね。


酒蔵の数は日本の誇り

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しかし、日本各地にある「酒蔵」は、日本の伝統そのものです。

かつてフランス人に対して、『フランスのワインと日本のワインは、どう違うのか?』と聞いた経験があります。

味に関する答えが返ってくると思いきや、フランスワインの輸出を手掛けるそのフランス人は「ワイナリーの数が違う」と即座に答えました。

『日本には、全国各地にいくつもの酒蔵があるだろう。同じように、フランスには各地にワイナリーがある。フランスが日本酒をつくっても絶対に追いつけないように、日本がワインをつくっても、フランスには絶対に追いつけない。文化の厚みが違うからだ』

といった趣旨の発言をしていました。確かに、筆者の暮らす富山県の酒造組合の組合員だけを見ても、19の酒蔵の名前があります。

同じ北陸の石川には33の酒蔵、福井には27の酒蔵があります。ワイナリーは、そんなにたくさんありません。

国税庁の資料によると、富山県は3カ所、石川県は4カ所、福井県は1カ所です(令和3年1月1日時点)。それでも近年、かなり増えたみたいですが…。

ワイングラスで大吟醸酒を飲んでみる

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酒蔵の数だけ歴史もあります。今まで日本酒に触れてこなかった人も、この機会に注目してくれるとうれしいですね。

しかも多くの酒蔵は、それぞれの土地の文化・経済を支えてきた歴史があるため、産業観光などの分野に進出しているケースが目立ちます。

例えば、富山県では、若鶴酒造が自社の敷地内に観光施設をつくっていますし、福井の黒龍酒造は「ESHIKOTO(えしこと)」という、とてもすてきな観光施設を立ち上げています。各地の酒蔵は、いわば日本人のお出かけ先にも、旅先にもなってくれるわけです。

海外で評価された日本文化が逆輸入されて、国内でも価値が見直されるといった構図は、これまでさまざまな分野で起きてきました。

ちょっと悔しいですが、ミーハー根性で、上質な日本酒をワイングラスに入れて飲んでみてもいいのかもしれません(実際に、フルーティーな大吟醸酒などはワイングラスが味的にも向いていると専門家は語ります)。

ちなみに、日本酒の知識を海外で語ると、かなりうれしそうに聞いてもらえる場面に出くわす可能性が高いです。

旅行メディアらしくまとめると、海外旅行に出かける予定の人は、自国の文化である酒を復習してから訪れてみてください。プラスアルファの思い出が残るかもしれませんよ。

【参考】

 

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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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