【2024】京都綾部・ミツマタとシャガの森〜黄と白の可憐な花が埋め尽くす〜
場所は、京都府綾部市の市街地から約30km、福井県との県境に位置する「水源の里老富(おいとみ)」地区にある「市茅野杉(いちかやすぎ)の森」。山の奥深くに突如現れる幻想的な風景が話題を呼び、2024年のJALの公式カレンダーや「森の京都ガーデンツーリズム〜森と里山の庭めぐり〜」に選定されています。
例年、3月下旬からミツマタが、4月下旬からシャガの花が見ごろを迎え、それに合わせて森の一般公開が始まります。今年(2024年)の開園は、3月16日(土)〜5月19日(日)となっており、人気のぜんざいやコーヒー、特産品などの販売も行われます。清澄な山の空気と可憐な花を楽しみに、綾部を訪ねてみませんか?
綾部の森に春を告げる、ミツマタの黄色いじゅうたん
2024年の見ごろ予想:3月下旬から4月上旬
森の中を歩いていると、目の前に広がる黄色いミツマタの花園。山の上のほうまで続く黄色い花の絨毯に木漏れ日が差す様子は、まるで絵本の世界のようです。
ミツマタは、枝が3つに別れていることから三又=ミツマタと呼ばれ、新芽が芽吹く前、枝先に蜂の巣のような形をした黄色の花が咲きます。見た目のかわいらしさに加え、ラベンダーのような甘い香りも楽しめる魅力的なお花です。
樹高は2mほど、樹皮には強い繊維質があり、和紙の原料になることでも知られています。和紙は普段使わない?いえいえ、まもなく新デザインに変わる紙幣の原材料はこのミツマタなんですよ。ミツマタの和紙は、ほかの原料を使った和紙よりも印刷に適していることから重宝されているそうです。
ちなみに、綾部市黒谷町にはコウゾ(楮)を原料にした、昔ながらの手漉き和紙「黒谷和紙」の産地があります。ミツマタの群生地からは少し離れていますが、和紙つながりで訪ねてみてはいかがでしょう。
全国的にも類を見ない素晴らしいミツマタの群生は、どのようにして生まれたのでしょうか。群生地の保全をしている水源の里老富の代表・酒井省吾さんによると、これらは自生したのではなく、元はというと昭和初期、和紙の原料として売るために集落の方がわずかに植えたものなのだとか。
ところが、戦争が激しくなったために存在が忘れられ、戦後になっても森の中で誰にも知られることなく、ひっそりと花を咲かせていたのです。
様相が変わり始めたのは、この地域が大雪に見舞われた10数年前。倒木が相次いだため手入れを行なったところ、森に程よい光が入るようになり、ミツマタやシャガがどんどん増えていったそうです。災い転じて福となすとは、まさにこのことですね。
白いシャガの花が彩る小径を歩いて
2024年の見ごろ予想:4月下旬から5月中旬
ミツマタのシーズンが終わると、純白のシャガの花が森を埋め尽くします。写真は森の広場まで約400メートル続く「シャガの小径」。こんな素敵な小径を歩くことができるなんて、とってもロマンチックですよね♪
シャガは、白地に黄色と紫の個性的な模様が入った花を咲かせるアヤメに似た植物で、人里に近い山林の湿った木陰などに自生します。
このシャガの群生も全国に類を見ない規模なのですが、ミツマタ同様、ここに群生地があることは長く知られていませんでした。最初に発見されたのはシャガの群生で、雪害により森の木を伐採してから少し時を経た2015年のこと。綾部市の写真家・鈴木隆さんが風景撮影のポイントを探すために森に入り、偶然見つけたものなのです。
翌年にはミツマタの群生も発見され、木漏れ日と花々が織りなす幻想的な美しさから「神秘の森」と呼ばれるようになりました。
SNSやメディアでも話題になり、「神秘の森」を散策しに多くの人が訪れるように。昨年(2023年)は8,000人以上の来園者がミツマタ・シャガの群生を堪能しています。
また、昨年から今年にかけては、国土交通省が創設したジャパンガーデンツーリズムの「ガーデンツーリズム登録制度」にエントリーされた「森の京都ガーデンツーリズム〜森と里山の庭めぐり」の10庭園の一つにミツマタとシャガの群生地が選定されたり、世界の絶景写真でおなじみのJALの公式カレンダー「A WORLD OF BEAUTY 2024」にミツマタ群生地のシーンが選ばれたりと、ますます注目度が高まっています。
今や日本はおろか、世界中の人にインパクトを与えているミツマタとシャガの群生地。この素晴らしい景観は、森の豊かな自然あってのものですが、酒井さんら地元の方々の保全活動のおかげでもあります。
毎年継続して園路の清掃やシャガの群生地のシダ取りを行なっているほか、最近はシャガの葉や茎を食べてしまうシカの対策にも乗り出しているそうです。そんなお話を聞くと、「この景色は当たり前じゃないんだ」と改めて気付かされます。皆さんの努力を無駄にしないよう、マナーを守って散策したいですね。
「主役はミツマタやシャガの花ですが、静まり返った森の中に響き渡る鳥の声も素晴らしいので、そのあたりも意識しながら森全体を楽しんでほしいです」とおっしゃっていました。
休憩所「花やどり」の名物甘味に舌つづみ
とち餅は、この地で冬に食べられてきた伝統食。9、10月ごろにとちの実を拾い、茹でてからアクを抜き、もち米と一緒に蒸して作られます。このとち餅をトースターで焼くと、とちの香ばしい香りがふわ〜っと。焼いてそのまま食べるのも良いですし、砂糖しょう油をからめたり、小豆との相性もバツグンなので、ぜんざいにして食べるのもおすすめです♪
GW頃は花やどり周辺のボタンザクラが満開になり、こちらも見もの。営業時間中はトイレも開放されているので、長時間の滞在でも安心です。
また、期間中の土日に限り、大町バスターミナルとミツマタ・シャガ群生地を結ぶ無料送迎バスが運行しているので、マイカー以外での来園を予定している方はぜひご利用くださいね。アクセス手段を問わず、足元は汚れてもよいスニーカーがおすすめです。
開花情報は綾部市観光協会のHPやSNSで随時発信しています。訪れる前に必ずチェックしておきましょう。
■■INFORMATION■■
水源の里老富 ミツマタとシャガの群生地
京都府綾部市老富町在中
問い合わせ:0773-42-9550(綾部市観光協会)
※開園情報、「花やどり」の営業日は事前に必ずHP等で確認してください。
開園時間:10:00〜15:00
料金:200円(運営協力金)/高校生以下無料
服装:森の中を歩くので汚れてもよいスニーカーがおすすめ!
駐車場:あり(第1Pは20台、第2Pは40台駐車可)
アクセス:【自動車】国道27号「山家」交差点から府道1号に入り、福井県境まで直進、群生地まで駐車場から徒歩約5〜10分
【花やどり】
営業期間:3月16日(土)〜5月19日(日)までの水、金〜日曜日と祝日
※GW期間中の4月27日〜5月6日は休まず営業
営業時間:10:00〜15:00
- source:KYOTO SIDE
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