J-POPが世界を席巻…「好きな日本の曲は?」に外国人が総ツッコミ

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2024/06/19

戦後に培われた歌謡曲のメロディーがJ-POPの原点

新宿にある「昭和歌謡館」image by:Ned Snowman/Shutterstock.com

このユニークさについてプロの音楽家はどのように感じているのでしょうか。

フランスのカンヌで開催される世界最大規模の音楽見本市「MIDEM」にて、日本音楽出版社協会がワークショップを主催した際、マーティ・フリードマンという世界的なギタリストが「What is J-POP?」というテーマで語っています。

その際、プロの音楽家であるマーティ・フリードマンさんは日本の音楽、日本の音楽業界を次のように形容しています。

「it’s a different world. It’s like a different planet in my opinion(日本の音楽業界は異世界だ。それはまるで異なる惑星のように私は感じる)」

(「What is J-POP?」より引用。※ 日本語訳は筆者が挿入)

さらに、マーティ・フリードマンさんは、J-POPにおける最大の特長としてメロディーの巧みさを挙げています。

そのメロディは、戦後に培われた歌謡曲に由来するそう。確かに、歌謡曲全盛の時代(1960年代後半~70年代いっぱい)を「メロディの時代」と呼ぶ専門家も存在します。その影響が、現代まで脈々と受け継がれており、西野カナさんの楽曲などはその典型例なのだとか。

image by:Unsplash

プラスして、J-POPに見られる緻密な構成、つくり込みを、マーティ・フリードマンさんは指摘します。

コード、リズム、楽器の音色など、1980年代から発展した、いわゆる「サウンドの時代」の影響が、歌詞とメロディ以外の要素として、日本の曲には明確に感じられるそう。

例えば、アメリカやイギリス音楽の場合、4つのコード進行をひたすら繰り返して作曲するケースが一般的なのに対して日本の場合は、曲の始まりから終わりに至るまで素早くコードを変え続け、展開していると言います。

その素早いコード進行にもルールがあり、


「a rather long chord progression that takes you through a lot of different emotions till it gets to the end result.(かなり長いコード進行が、さまざまな感情を、終わりまで聴く者に抱かせる)」

(「What is J-POP?」より引用)

と評しています。

秋元康プロデュース「AKB48」のポスター。image by:Mr.pinate/Shutterstock.com

そこに、小室哲哉、中田ヤスタカ、つんく♂、秋元康(敬称略)のような才能あるプロデューサーが次々と現れ、巨大な国内マーケットと時流に合わせた音楽をつくり、結果として日本らしい、世界では類例を見ないような楽曲が完成していくのですね。

「It’s like candy pop music but the structure has got some deep technical elements in it(明るく陽気で気楽な音楽に見えても、音楽の構造には深い技術が用いられている)」

(「What is J-POP?」より引用。※ 日本語訳は筆者が挿入)

と感じるマーティ・フリードマンさんは、AKB48の『ヘビーローテーション』を初めて聞いた際に、

「oh my God, this is the ultimate(なんてこった、これは究極の音楽だ)」

(「What is J-POP?」より引用。※ 日本語訳は筆者が挿入)

とすら感じたそうです。

国民の「素養」が日本の音楽をユニークにしている

ギターを弾きながら歌う路上ライブ。image by:Edu Snacker/Shutterstock.com

さらに、J-POPの受け手である日本人そのものも、日本の音楽のユニークさに一役買っているとマーティ・フリードマンさんは指摘します。

アメリカでは、音楽をやっている人とやっていない人の間に決定的な溝があるものの、日本は違うと言います。

「if you go to Japan, every taxi driver has either played a piano or organ or touched the guitar. Everybody knows a little bit about music(日本に行けば、タクシードライバーですら、ピアノやオルガンを弾いた経験があったり、ギターを弾いた経験があったりする。全ての人が音楽をかじっている)」

(「What is J-POP?」より引用。※ 日本語訳は筆者が挿入)

確かに、言われてみると、ピアノの普及率は世界トップクラス。子どものころに何らかの楽器を習っていた人は少なくないのではないでしょうか。

筆者自身も、高校生のころにちょっとだけドラムをたたいていましたし、30歳を過ぎてからギターを手習いし始めました。

子どもを育てる今は、わが子のピアノの習い事をきっかけに、ピアノを一緒に練習し始めて、簡単な楽譜が読めるようになりました。

日本人のつくり手がありのままに日本の音楽をつくり、日本人の聞き手が日本の音楽をありのままに愛する、その当たり前の循環が、海外の人たちにとって唯一無二の音楽を生むのだと考えられます。

 

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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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