次こそは…「ロケット最先端のまち」を目指す南紀串本を旅してわかった熱狂ぶり

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2024/09/07

2024年3月、和歌山県串本町にあるロケット射場「スペースポート紀伊」から小型ロケット「カイロス」の初号機が打ち上げられた。成功すれば民間単独としては国内初と注目されていたが残念ながら飛行中断処置を行い、ミッションは成功しなかった。

専門家は「ロケット開発で失敗自体は珍しいことではない」と話す。町の人々も「簡単じゃない事は分かっている」「次に期待したい」とポジティブな声が多い。

そんな串本町は、本州最南端に位置する美しい海と自然豊かな町。温泉があって、新鮮な魚が食べられる人気観光地。そして今、新しく“ロケットのまち”という顔を持ち始めた。そんな南紀串本を旅してみた。

image by:旅人間

贅沢すぎる豪快なロケットカレー

串本でロケットといえば、実はグルメが画期的というのをご存知だろうか?その中でも「レストラン サンドリア」のロケットカレー高さは約35センチ、そのインパクトには圧倒させられる。

正式名は「串シーフードロケットフライカレー」、その名の通りカレーの上にシーフードを揚げた串が贅沢にのっている。上から天然の有頭えび、とこぶしのフライ、生マグロのフライ。ホタテのフライ、スルメいかのフライと続く。

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天然の有頭えびはロケットをイメージ、射場から打上がる瞬間を再現している。シーフードフライは噴射の白煙、そしてライスとパプリカによる臨場感ある演出も見逃せない。

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料理長の東丈二さんに話を聞くと、串本の「串」、飛ぶの「フライ」をかけたそうだ。しかしカレーのライス部分に串を刺しても重さで串は倒れてしまう。この点に最も苦心したと語る。試行錯誤した結果、地元のサツマイモ「なんたん蜜姫」をライスの中に埋め込んで土台にすることによって、この常識破りなカレーが完成したのだ。

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驚くのは見た目だけではない。味へのこだわりもスゴイ!3日かけて作った自慢のルーは甘みが先、あとから辛さがやって来る。そこに新鮮なシーフードのフライがたっぷりと加わる贅沢さ。エビは大きさと天然にこだわっている。他にも具材は出来る限り地元の素材を使い串本の魅力を詰め込んでいる。尚、とこぶしのフライは冬にはカキフライとなる。これぞ一度食べたら忘れられない絶品カレーと言えるだろう。

ただし、混雑時は提供まで時間がかかる場合があるそうだ。筆者の感想を付け加えると、どれだけ待っても食べる価値はある。それほど見事なカレーと断言したい。


  • レストラン サンドリア
  • 和歌山県東牟婁郡串本町串本2505
  • 0735-62-5667
  • 9:00~21:00(不定休)  
  • 公式サイト

常識の枠を飛び出す老舗のロケット饅頭

串本でロケットグルメを語るうえで、外してはいけない店は他にもある。それは明治26年創業の老舗「うすかわ饅頭 儀平」がつくるロケット饅頭だ。

正式な商品名は「ロケット饅頭 そらのかけはし」という。その風貌は独特、全く饅頭には見えない。ロケットの形をし、黄身餡のチョコレート生地の焼き饅頭で、全体をホワイトチョコレートで覆い、羽根部分には小豆の蜜漬けが入っている。

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更に驚くのは饅頭にアイス棒が刺さっている点だ。この棒で火を噴きながら飛ぶイメージを出しているという。冷やして食べるとチョコのパリッとした食感も楽しめる。製造部長の丸山さんは「串本のロケットは偉大な挑戦、だから同じように今までにない斬新な饅頭を作った」と話す。

パッケージのイラストデザインには橋杭岩の間からロケットが天空に向かってグングンと上って行く様が描かれている。また、箱を開ければ、下箱の内側は宇宙が描かれ雲の形になっており、その上を飛ぶかのように“ロケット饅頭”は全て上向きで入れられている細かい点も注目のポイントだ。

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関西の絶景スポットとして知られる「橋杭岩」の目の前にある店舗で購入し、ロケット饅頭を片手に持って映える写真を撮るのも良い。パッケージのイラストデザインにあるようにロケットの打上がる際、この岩と岩の間からロケットが見られるはずだ。

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  • うすかわ饅頭 儀平 串本橋杭店
  • 和歌山県東牟婁郡串本町くじ野川1489-2
  • 0735-62-5075
  • 8:00~17:00(定休日なし)
  • 公式サイト

串本で最初に誕生したロケットグルメ

串本で最初に誕生したロケットグルメは、おそらく潮岬観光タワーで売られている「ロケットドッグ」だ。串本にロケットの話が公表されてスグに商品化されたという。

このロケットの形をしたホットドッグには窓をイメージした玉子のスライスがのっており、カレーの風味でとっても食べやすい。尚、ここは本州最南端の地にある円筒形展望台の横にあるレストランで、地元の名物がお手頃価格で食べられる。

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  • 潮岬観光タワー
  • 和歌山県東牟婁郡串本町潮岬2706-26
  • 0735-62-0810
  • 9:00~17:00(定休日なし)
  • 公式サイト

ロケット打ち上げ、見える場所は?

「この目でロケットが打ち上がる瞬間を見てみたい!」そんな人は多いはず。種子島まで行くのは遠いけど、和歌山なら行ける。ところで、串本まで行ったとして、一体何処でロケットの打上げが見えるのだろうか?

初号機打上げの際には「田原海水浴場」と「旧浦神小学校」が見学場として設置された。今後もこの2ヶ所は見学場として使われる予定だという。

例えば、このような考え方もある。それは「ロケットが打ち上がる時、空を見上げたら見えるのではないか」である。しかし、カイロスロケットは大型ロケットではなく全長18mの小型ロケットだ。もし迫力ある姿を見たいないら、スペースポート紀伊の射場より約2㎞ほどの距離で見られる見学場に行くのが確実だろう。

尚、この2ヶ所の見学場の入場チケットは、打上げ日が発表され次第「カイロスロケット2号機打上げ応援サイト」で販売される。

https://wakayama-rocket.com/

●田原海水浴場(串本町)
JR紀伊田原駅から南東に徒歩で約10分の場所にある静かなビーチ。海を背にして山側にロケットが見られる。射場より約2㎞ほどなので、間近で見学が出来る。
住所:和歌山県東牟婁郡串本町田原

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●旧浦神小学校(那智勝浦町)
JR紀伊浦神駅から南へ歩いて約4分の旧浦神小学校は校舎屋上とグラウンドが見学場となる。中庭にはカイロスロケットのモニュメントがある。高さは14.5mで実物の約8割の大きさだとか。射場より約2㎞ほどなので、間近で見学が出来る。
場所:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町浦神

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●橋杭岩(はしぐいいわ)
ここは海上に大小約40個の岩が一列に約850メートルも続く関西の絶景スポットの一つ。打ち上がるロケットを奇岩とともに写真が撮れると期待されている絶好スポット。ただし、スペースポート紀伊から10km以上離れるので迫力は少し欠ける可能性があり、公式の見学場ではないので交通渋滞など混雑が予想される。

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●大江戸温泉物語 南紀串本の展望テラス
家族旅行に人気の宿「大江戸温泉物語 南紀串本」の屋上にある展望テラスも初号機打上げの際、支配人の配慮で特別に開放され話題になった。もちろん宿泊者優先となる。

橋杭岩と同様、射場から離れるので迫力は少し欠ける可能性はあるが、混雑を避け、ゆったり見るには最適な場所と言えるだろう。

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ロケット打上げが見える宿「大江戸温泉物語 南紀串本」

ロケット打上げが見える宿としても注目されている「大江戸温泉物語 南紀串本」は旅情を感じゆったりと時間を過ごせる人気宿。橋杭岩から近い好立地、良心的な価格、絶景の露天風呂に海の幸が楽しめるバイキング、串本旅行で満足度を重視するならコスパ一番ではないだろうか。

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大型客船のような景観のホテルのエントランスを過ぎると、開放感のあるロビーからは雄大な海が見える。チェックインし好きな浴衣を選び、館内を散策すれば、ゴロンと寝転がりながらマンガが読めるスペースや卓球コーナーがある。

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そして、何と言っても絶景の露天風呂が魅力的だ。対岸には紀伊大島、その左方向に橋杭岩が見える。ロケット射場であるスペースポート紀伊は橋杭岩の向こうに位置しているので将来的には露天風呂に入りながら打ち上るロケットが見られる可能性もある。そうなると世界でも珍しい“打上げロケットが見える露天風呂”が誕生するワケだ。

温泉はほんのり塩味を感じる塩化物泉で、入浴後もポカポカ感が長く続くのが特徴。季節によっては水平線から昇る朝日が見られるそうだ。夜は波の音に癒され、最高に気持ちが良い。

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また、海鮮たっぷりなバイキングが楽しめる料理も人気だ。特に新鮮な那智勝浦港水揚げの生まぐろのお造りやお寿司は見逃してはいけない。他にもシェフが目の前で焼くステーキ、揚げたてアツアツの天ぷら、子供が大好きな唐揚げやエビフライなどバリエーションは豊富、朝食は海鮮載せ放題の丼も出来る。夜も朝もお腹いっぱい食べられる。
(※ステーキは調味牛脂を注入した加工肉です)

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  • 大江戸温泉物語 南紀串本
  • 和歌山県東牟婁郡串本町串本2300-1
  • 050-3852-4451
  • 公式サイト

買って帰りたい!人気のロケット土産

串本旅行で話題になるのが“ロケット関連のお土産”だ。例えば、「道の駅 くしもと橋杭岩」では串本ロケットコーナーが設置されており、ロケットにちなんだお菓子や雑貨など色々なモノが売られている。

ロケットマニアの間ではピンバッジや公式ロゴの入った檜コースターが人気、初号機打上げの時にはロケットカイロスのフィギアを購入する人も多かったようだ。

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ロケット土産の中で人気が高いのは気軽に買えるお菓子。ロケットがプリントされたクッキー「ロケット発射台」、また「和歌山ロケット ラングドシャ」はフランスの伝統的な菓子の一種ラング・ド・シャに可愛いロケットの絵がプリントされており、ホロホロと崩れるような口溶けと共に評判だとか。他にも、ロケット型のケーキなどもある。

これらロケットに関する土産物は、「道の駅 くしもと橋杭岩」だけでなく「潮岬観光タワー」や「大江戸温泉物語 南紀串本」でも購入することが出来る。

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また、お酒好きな人には、小型ロケット「カイロス」にちなんで名づけられた芋焼酎がおすすめ。ねっとりとした食感と高い糖度が特長の串本町で昔から栽培されてきた品種のサツマイモ“なんたん蜜姫”は年間生産量は6~8tと少なく“幻のイモ”と言われている。甘い香りと優しい味わいの芋焼酎はたっぷりの氷と一緒にロックで飲みたい。

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やっぱり行きたい!串本の観光スポット

“ロケットのまち”として注目される串本町。ロケット打ち上げだけでなく、観光で立ち寄りたいスポットを3つ紹介しておこう、

●橋杭岩
ロケットの打上げが見えるスポットとして注目される「橋杭岩」は、早朝の日出のタイミングに行くのがおすすめ。満潮と干潮によって景観が全く異なるので時間帯をズラして郁夫も良いだろう。干潮時には奇岩のすぐ近くまで歩いて行くこともできる。また、道の駅で売っている「ぽんかんソフトクリーム」は大人気。濃厚でサッパリした口当たりの地元の名物ソフトだ。

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●潮岬
本州最南端の地、潮岬の先端には約10万㎡の大芝生が広がっている。この長閑な風景はドライブにおすすめのスポット。7階建て円筒形の「潮岬観光タワー」は全高37 m、展望台からは360度見渡せるので地球の丸さが実感できる。ここでは“本州最南端訪問証明書”も入手できるのも嬉しい。近くには潮岬灯台があるので併せていきたい。また車で20分ほど走らせ紀伊大島にある日本最初の石造灯台「樫野埼灯台」もおすすめだ。

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●串本海中公園
本州最南端の串本の海は、黒潮の恵み豊かなサンゴの海温帯と亜熱帯の生き物が分布する世界的に珍しい海環境と海中景観を持つことでしられている。串本海中公園では海の生き物たちの生態をじっくりとご観察できる水族館だけでなく、海中展望塔や海中観光船も魅力的だ。また、ウミガメの子供とふれあいが出来る「子ガメ・タッチング体験」も毎日開催されているので小さな子供さんが一緒のファミリーには特におすすめ。

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“ロケットのまち”串本を旅して…

今回は“ロケットのまち”として話題の本州最南端に位置する和歌山県串本町を巡ってみた。3月に初号機が打ち上げは失敗に終わり、その後は殆ど話題になっていない。しかし現地を歩いて地元の方と話せば、「これから町がどのように変わっていくのか?」という期待感が垣間見える。

ロケットカレーやロケット饅頭のインパクトの凄さ、露天風呂からロケットの打上げが見られる宿、串本町はとんでもない可能性に満ちた町に思える。

今後、ロケットの打ち上げが成功し、目標としては年間に20本は打ち上がるという話もある。実際にそうなると町は激変しているだろう。これから変わりゆく町、今から巡ってみてはどうだろうか。

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ちょっと変わった旅が好きなライター。 マラッカ海峡に沈んだお宝を探しにマレーシアに行ったり、 タイの奥地で首長族の村に泊まったり。 只今、関西の食べ歩きにハマり中!

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