あの人気映画の聖地へ!蒸気機関車と歴史ロマンに包まれたスコットランドの旅

グルメやホテルステイ、ショッピングなど、旅の楽しみ方はさまざま。中でも、実際に足を運び、身体でその土地の空気やカルチャーを体験できるのは、とても貴重な思い出となることでしょう。

メルマガ『出たっきり邦人【欧州編】』から、休暇を兼ねて訪れたスコットランドの歴史ある村「グレンフィナン」での旅をご紹介。誰もが知っていると言っても過言ではない、かの有名な魔法学校映画でも使用された高架橋と、村に訪れ、学んだ歴史や感じたことをお話ししてくれています。

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『ハリー・ポッター』の世界が広がるスコットランドの歴史ある村

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蒸気機関車オタクの主人は、リタイアしてから近場を主に、さまざまな駅や線路沿いに赴いて写真を撮りに行きます。数秒間の出来事だけのために時間と手間をかけるのですが、本人はとても楽しんでいるのです。

今年は近場ばかりでなく、休暇を兼ねて、ほかの地でも蒸気機関車を鑑賞することにしました。

春にイングランド南西部のドーセット地方に出かけ、そこの蒸気機関車を堪能しました。そして秋にはスコットランドの「グレンフィナン」という村に行き、そこの「ジャコバイト蒸気機関車」を心いくまで楽しんできたのでした。

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グレンフィナンはスコットランドのハイランド地域にあり、ケントの我が家からでは、ブリテン島の右下から左上に向かうことを意味します。

朝の2時半に出発し、3回の休憩を挟んで、13時間半かけてグレンフィナンに到着しました。走行距離約900km、非常に遠いところですが、その甲斐はあり、ハイランドの美しい景観を心から満喫しました。


グレンフィナンを有名にしているのは、高い丘の中に架かっている曲線状の鉄道用高架橋「グレンフィナン高架橋」です。21本のコンクリートのアーチ型の柱に支えられたこの高架橋は1897年に着工され、鉄道は1901年に開通されました。柱の高さは30m、地面から見上げ、イギリスの古いエンジニアリングに再度感動するのでした。

この高架橋をさらに有名にさせたのは、『ハリー・ポッター』の映画で、魔法使いの学校、「ホグワーツ」へ向かう汽車のシーンで使われたことでした。ハリポタ人気で観光客が年々増加し、地元の人たちの静かな生活に影響を与えています。オーバーツーリズムの問題はスコットランドの片田舎にもあるのでした。

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かなりの訪問客があり、駐車場はすぐ一杯になるという話を聞いていたので、それなら高架橋に徒歩で行ける宿泊先を探すことにしました。スコットランド語で「グレン」とは「谷」を意味し、「フィナン」は川の名前です。フィナン川が流れる谷間、そこがグレンフィナン、そしてフィナン川は高架橋近くの細長いシール湖に流れ込みます。

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私たちの宿泊コテージはシール湖のすぐ側で、小川と小さい滝に面していました。美しい自然と素晴らしい環境、冬は大変だと思いながらも、まだ晩夏の名残りがある秋のハイランドで静かなひとときを過ごしたのでした。高架橋まで徒歩10分、毎日2回高架橋に出向き、紅葉する丘を背景に蒸気を上げながら走る機関車を楽しみました。

地上から鑑賞するのもいいですが、高台から高架橋を見下ろす方が景観が素晴らしいので、実にたくさんの訪問客が汽車の到着時間に先立って、丘を登って行きます。高台から眺める、線路のカーブに沿って蒸気を上げながら走る汽車の姿は圧巻でした。

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いろんな人種の観光客でごった返していましたが、みんなとてもマナーが良く、親切な人が多かったです。犬連れも多く、我が家の老犬も毎日の高架橋への散歩を楽しみました。

ハリポタ・ツアーで来ている団体が必ずおり、テーマソングを口ずさむ若者たちもいました。お土産屋とカフェは大繁盛、オーバーツーリズムかもしれませんが、現地に雇用を創出し、歳入を増やしていることも事実なのです。

汽車の乗車チケットは発売と同時にすぐ売り切れるそうで、3年目にやっとチケットをゲットしたオーストラリア人の話をあるツアーガイドさんがしていました。この蒸気機関車は非常にポピュラーで、地域経済に大きく貢献しているようです。

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4年ぶりのスコットランド、やはり水が美味しい。もっと近ければもっと頻繁に来たいものです。グレンフィナンはイギリスで一番高い山「ベン・ネヴィス」から近く、その麓の町「フォート・ウィリアム」では観光客と登山客がたくさんいました。富士山の半分の高さもないですが、ベン・ネヴィス山の登山はとてもポピュラーです。

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実はハイランド地方は35年ぶりです。35年前にキャンパーでスコットランド一周をした時にグレンフィナンを通過しているのですが、今のように有名ではなかったので、何も知らなかったわけです。

フィナン川がシール湖に注ぎ込むところにボニー・プリンス・チャーリーの像がある記念塔が立っています。この王子の名前は聞いたことがあっても、詳しくは知りませんでした。

旅行の楽しみの一つは歴史の知識を増やす機会でもあることです。ネットで何でも調べられる現代、ホリデー中の歴史勉強は私にとっては大切な時間の過ごし方でもあるのです。

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チャーリー王子はスチュアート朝最後の国王ジェームス2世(スコットランドではジェームス7世)の孫であり、断首されたチャールズ1世の曾孫です。ジェームス2世は1688年の名誉革命/無血革命でイギリス国王の座を奪われ、フランスに亡命しました。

その孫であるチャーリー王子はローマで生まれましたが、14世紀から王位に就いている自分たちスチュアート家の子孫が正統なイギリス王位継承者であると宣言し、1745年にスコットランドに渡り、それなりのサポートを得て、当時のジョージ2世と戦うために南下して行きました。その蜂起の場所がグレンフィナンだったので、そこに記念碑が建てられていたのでした。

これら戦士たちは「ジャコバイト」と呼ばれていました。ラテン語の「ジャコバス」は英語では「ジェームス」のことで、ジャコバイトとはすなわちジェームス2世擁護派を指しており、「ジャコバイト蒸気機関車」の名の由来に納得したのでした。

結局チャーリー王子のジャコバイトたちは負けてしまいますが、スコットランドはイギリスの一部であっても、独自の文化が保たれていますし、自然の美しさと厳しさは太古の昔から変わっていません。

中世のイギリスは国家権力の争いばかりでしたが、国王が絶対権力を持つ時代から議会が権力を持つ時代に移行していました。また、カトリックとプロテスタントの争いも続いていた時代でした。

カトリックへの回帰に躍起するジェームス2世の追放を企てた議会、代わりにオランダから渡って来て王位に就いたオレンジ公ウィリアム3世はそんな議会がお膳立てしたのでした。

21世紀の現在、その議会の力はかなり落ちており、大企業や国際金融資本が実質的な権力を握っていますね。やがて彼らの力も弱まり、代わりに人工知能AIが権力者になる日が来るかもしれません。人工知能はもうSFの域を脱して、かなり身近なものになっていますものね。

現在デジタルID導入を巡って、多くの国民が反対の声を高く上げています。デジタルIDとデジタル通貨、それらから利権を得る輩たちが虎視眈々と普及のために尽力しているのが感じ取られます。

大きな潮流は止められない。その中で賢く泳いでいくだけですね。コンピューターがなかった時代を覚えている世代と、スマホと育った世代、考え方や価値観は違っても、平和に過ごし、文明の利器の恩恵を受け、好きなことをしていたいのは同じです。グレンフィナンで出会った世界各国からの老若男女たちがそれを象徴していると感じました。

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【著者】 出たっきり邦人 【発行周期】 週刊(金・火)

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