那須の人魚伝説。「乙女の滝」はちょっぴり切ないパワースポット

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2023/09/23

山が多く、自然ともに生きてきた日本では、至るところに「言い伝え」や「伝説」めいたお話が残されていますよね。昔から語り継がれてきた神秘的なお話は、知れば知るほどおもしろく、時には切なく心に残ります。

栃木県那須塩原市・白笹山が生み出す「乙女の滝」も、不思議な伝承の残る場所。今回はそんな乙女の滝の伝説をご紹介します。

白笹山が生み出す美しい滝

image by:石黒まり花

豊かな自然に囲まれた那須塩原市は、山に囲まれていることからトレッキングや登山にはぴったりのエリアです。

そんな栃木県から福島県に渡って連なるのが那須連山

連なる山々の代表には、茶臼岳、朝日岳、三本槍岳などが挙げられますが、「乙女の滝」を生み出すのは、そんな那須連山の一番西の端にそびえる白笹山。標高1719mの白笹山から沢名川に流れ込む清流が乙女の滝の源泉です。

乙女の滝までは、車もしくはJR黒磯駅からバスで向かうことができます。「乙女の滝」という名のバス停で下車すれば、目的地は目の前です。

一帯は国立公園に指定されていますが、乙女の滝は駐車場から徒歩5分ほどの場所に位置しているため、とても訪れやすく登山の必要もありません。気軽に立ち寄れるめずらしい滝と言えるでしょう。

「乙女の滝」はどんな滝?

image by:photoAC

気軽に行ける「乙女の滝」ですが、その姿はとても立派。登山やトレッキングを経てやっと辿り着けるような滝と比べても負けない美しさです。

白笹山からの清流が沢名川へ流れ込む場所にある乙女の滝は、幅5m、落差10mほどの小ぶりな滝です。しかし水量は豊富で流れ込む水がしっかり白く見えますよ。


滝の周囲には細かな水しぶきが舞い、天然のミストが癒し効果抜群。滝壺に入ったり、沢へ入るのは禁止されていますが、水に触れずとも澄み切った涼しい空気を味わうことができます。

パワースポット「乙女の滝」にまつわる伝説

常に水が流れ続ける滝は、パワースポットと呼ばれる場所が多いことをご存じでしょうか。

水には浄化作用があると言われており、滝は停滞しないことで運命を転がすパワーがあると考えられています。水しぶきで涼めるだけでなく、心までも癒してくれるのが滝の特徴です。

さらに、パワースポットと呼ばれる場所にはさまざまな言い伝えが残されていますよね。乙女の滝も同じく、多くの言い伝えが残されています。そんな乙女の滝にまつわる伝説をご紹介しましょう。

世界で唯一?山奥の人魚伝説

image by:photoAC

これはまだ、乙女の滝がその名を付けられる前のお話。

ある若者がこの滝を訪れました。すると、滝のすぐ側で、髪を洗う見目麗しい(みめうるわしい)女性と出会いました。女性は髪も美しく、まるで滝が流れるように見えたそうです。

若者は女性に見惚れていましたが、よく見ると、なんと足が魚のようになっていました。美しい女性は美しい人魚だったのです。

このお話が村人に伝わり、この滝は乙女の滝と呼ばれるようになったのだとか。

人魚の伝説は世界中にありますが、山奥の滝のそばに残されているのはおそらく乙女の滝だけ。海の近くではない場所にある人魚伝説なんて、逆に信憑性が高く感じてしまいませんか。

乙女の滝の名前の由来はいくつもあり、どれが真実なのか知る由はありません。この人魚伝説がもとになっているという説も、滝の流れる秀麗な様子が乙女の髪の流れに似ているからとも言われています。

妻の正体と与えられた玉。沼ッ原湿原の子守石

image by:photoAC

もうひとつの不思議なお話。

乙女の滝から少し離れたところ、沢名川の上流にある沼ッ原湿原(ぬまっぱらしつげん)。ハイキングの名所でもある沼ッ原湿原には、「沼ッ原の子守石」という今に伝えられるお話があります。

昔、沼ッ原湿原の近くに住んでいた男がいました。父母を亡くし一人で住んでいたところ、姫と名乗る女性が訪れ二人は夫婦となります。

しばらくして妻には子どもができ、いざお産の際、妻は部屋を決してのぞかないでほしいと頼みます。その場では約束をした男ですが、気が気ではなく、のぞかないでという約束を破り部屋をのぞき見てしまいました。

すると、八畳ほどの部屋にいたのは大きな蛇。

男の妻の正体は、沼ッ原湿原の主と伝えられる大蛇だったのです。蛇の姿を見られた妻は、「もうここで一緒に住むことはできない、子どもが泣いた時になめさせるように」ひとつの玉を残し去ってしまいます。

image by:Shutterstock.com

残された男は、子どもが泣く度にその玉をなめさせましたが、玉はどんどん小さくなりとうとうなくなってしまいました。困った男は妻に会おうと子どもを背負って湿原に向かい、そこにある石の上に腰を下ろしました。

すると妻であった大蛇が現れ、あの玉を再び渡してくれました。しかしその玉は、なんと蛇自身の目だったのです。

ふたつの目を男と子どもに差し出した蛇は、目が見えなくなってしまったため、朝晩に鐘を鳴らしてくれるようにと頼みました。その後、この地では朝6時と夕方6時に鐘の音が響くようになったそうです。
 
実は、乙女の滝に現れたのはこの盲目の蛇だったとも伝えられています。子どもを産み、目が見えなくなった後に、この乙女の滝で体を癒していたのかもしれませんね。


ちょっと切ない伝説の残る滝

今回は少し悲しく切ない伝説の残る「乙女の滝」をご紹介しました。摩訶不思議な伝説は時を超え現代に伝わり、その場所はパワースポットとして注目を集めています。

たとえ伝承が作られた物語だったとしても、多くの人が信じて訪れる乙女の滝にはすでに不思議な力が宿っているかもしれません。癒しと絶景の乙女の滝で、心休まる時間を過ごしてみませんか。

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元々インドア派だったはずが『恋する惑星』でウォン・カーウァイにハマり、初めての一人旅は上海へ。カメラ片手にどこへでも行くアクティブ旅女子になりました。現在は大学院に通いつつフリーライターとして、旅・アート・美容・ファッションをメインに活動しています。

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