地元の名人が伝統を語り、高校生が書き記す。「聞き書き甲子園」で街おこし
名人の話を聞き書きする「聞き書き甲子園」
高校生が名人の話を聞き書きする「聞き書き甲子園」をご存知でしょうか。
「聞き書き甲子園」は、全国の高校生100人が、森や海・川などの自然を相手にし、自然とともに生きる名人を訪ね、彼らの話を聴いて、その知恵や技、人となりまで含めて記録する活動です。
目的は「次代を担う高校生と名人との世代を超えた交流を通して、伝統技術の発掘・伝承、森づくりなどに対する理解の醸成、地域活性化、青少年の健全育成を図る」こと。
今年も8月に選考を通った100人の高校生が全国から集まり、「森の名手・名人」「海・川の名人」への取材に向けた事前研修が始まりました。
その後、研修を受けた高校生たちは聞き書きのための計画を作成し、9月から12月にかけて、それぞれが各地の名人を訪問して、実際に聞き書きを行います。そして、12月から1月でレポートにまとめ、3月には成果の発表会を開催するという段取りです。
この「聞き書き甲子園」が始まったのは平成14年。今までに参加した高校生は、すでに1,400人を超えました。名人が語るひと言ひと言が、若い彼らの心にどのような化学反応を起こさせるのか、非常に興味深い活動です。今までの活動の記録は映像も含めて、「聞き書き甲子園」のWebサイトで見ることができます。
若者とシニア世代の交流プログラムは案外難しいものです。しかし、「聴き書き」なら比較的取り組みやすいのではないでしょうか。しかも、記録として確実に形が残ります。さらに、その中には貴重なお宝が含まれているかもしれないのです。
シニア世代は、高知県の女性のように“聴き手”として活動することもできれば、次世代に体験を伝える“語り手”になることもできます。そういう意味では、地方創生の重要なキーマンとも言えるでしょう。
次回は、実例として、東日本大震災の被災者の聴き書きを行い、冊子として記録に残す活動で支援しているNPOを紹介します。
◆聞き書き甲子園 http://www.foxfire-japan.com/
注)文中には「聞き書き」と「聴き書き」の二通りの表記があります。「聞き書き」は一般名称であり、「聞き書き甲子園」での表記、「聴き書き」は次回紹介するグループが用いている表記です。この原稿では、両者を使い分けています。
- image by:聞き書き甲子園,Chamelion Studio/Shutterstock.com(イメージ)
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