境内には鍾乳洞。戦火を逃れた琉球八社のひとつ、金武観音寺を往く

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2015/07/15

梅雨も明けギラギラの太陽の下、観光トップシーズンに突入間近の沖縄。すでに、リゾートホテルが立ち並ぶ本島西海岸は多くの観光客でにぎわっています。

そんな西海岸に比べて正直マイナー感の否めない東海岸ですが、ローカル色豊かなおすすめ観光スポットがけっこうあります。ということで今回みなさんにご紹介するのは、沖縄本島東海岸、 金武きん町にある金武観音寺です(正式名称は金峯山観音寺ですが、今回は通称でいきます)。

※本記事は現段階でのお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウィルスの国内情報および各施設などの公式発表をご確認ください。

金武観音寺 金武町金武

金武観音寺 金武町金武

「何だよ〜、沖縄に行ってまで寺なんか見たくないよ」なんて言わないでください。じつは金武観音寺は、知る人ぞ知る観光スポットなのです。例えば、本島では珍しい戦前から残る木造建築の本堂は必見ですし、境内には入場可能な鍾乳洞があるなど、見どころ満載。

さて、金武観音寺は、16世紀に日秀上人によって創建された真言宗の寺ですが、成り立ちについて少々書きたいと思います。

1503年、上野国(群馬県)に生まれた日秀は、19歳のときに誤って家臣を殺害してしまい懺悔の念から高野山に入山。

その後、南方の海上にあるとされた浄土を目指す「補陀落ふだらく渡海」に紀伊の国(熊野)から出港します。しかし、船は途中で遭難(基本的には、物理的に存在しない場所に向かう捨身行ですので、遭難というのはちょっと語弊があるかも…)。

そして、沖縄の金武湾富花港に漂着後、金武観音寺を建てたとされています。

金武観音寺 金武町金武

梅雨明け後の6月下旬、このお寺を久しぶりにたずねてみました。7年ぶりの訪問です。沖縄らしいブロック塀で囲まれた境内へ、山門もない簡素な入口から入りました。参道を歩くとすぐに推定樹齢約350年のフクギが見えてきます。

金武観音寺 金武町金武

これは沖縄本島各地のフクギのなかでも希少な巨木。一見の価値ありですよ。そして参道正面には、立派な本堂が。木造建物の屋根は、沖縄の寺らしく、琉球赤瓦で葺かれています。


金武観音寺 金武町金武

戦時中、多くの木造建築が焼失した沖縄ですが、その中で金武観音寺は幸運にも戦火を免れた戦前のままの姿を残す貴重な木造建築なのだそう。この本堂は、本当に味があって見ごたえありですよ。

金武観音寺 金武町金武

本堂の内観も日本と沖縄の文化がミックスされた感じで独特。本堂を参拝後は境内を散策しました。庭園は和風でありながらも亜熱帯を感じさせる木々が林立し、自分がどこにいるのか一瞬分からなくなります。また、木の枝には、英語の文字が印字されたおみくじが結ばれていました。

金武観音寺 金武町金武

金武観音寺横にある米軍基地・キャンプ・ハンセンの影響も色濃く反映されているのがおもしろいですね。

さて、散策後は境内にある鍾乳洞へ。この洞窟は「日秀洞」または「金武鍾乳洞」とよばれ、洞内には観音寺鎮守「金武権現」と「水天」が祀られています(開門時間:7時~16時)。

7年前は入場料を払わなければ入れなかったのですが、現在は無料になっています(以前は、境内にあったお店に入場料を払う形でしたが、境内のお店もなくなっていました)。

金武鍾乳洞

20段程の急な石段を降りた先に、全長270mの洞窟があります。ただし、現在は奥の大広間部分は、自然環境保護のため立ち入りが制限されていますので、手前の空間しか見られません。

しかし、鍾乳石が広がる「大仏天蓋」、また、壁面に広がる美しいフローストーン(石灰華)の「金銀の滝」など見ごたえは十分ですよ。

金武鍾乳洞

洞内はほぼ1年を通して約18度の気温が保たれているそうで、少しひんやりして気持ちよかったです。

ちなみに7年前にたずねたときには、大量の泡盛が寝かせてある棚が並んでいたのですが、現在はありません(私も長男が生まれた際、記念に5年ほど泡盛をここで寝かせてもらっていました)。

実は、あまりにも増えすぎたので2010年に別の鍾乳洞へ移動したとのこと。今は観音寺駐車場横の鍾乳洞古酒蔵「龍の蔵」というお店が、鍾乳洞のボトルキープ(ボトルキープ料:5年貯蔵(税込1万800円)・12年貯蔵(税込2万1,600円))を受付けているようです(店舗では鍾乳洞貯蔵豆腐ようも販売)。

龍の蔵

ちなみに、鍾乳洞泡盛セラーの見学もガイド付きで行っているそうなので、興味のある方は「龍の蔵」へ。(鍾乳洞見学入場料:大人400円、中高生300円、小学生200円 見学時間:①11時②14時③15時30分)

龍の蔵

さあ、みなさんも一度金武観音寺へ足を運んでみてはいかがでしょうか。沖縄の仏教の歴史に触れる良い機会になるかもしれません。

また、ご結婚、お子様誕生などの記念に泡盛のボトルキープもいいと思いますよ。5年後、12年後に奥様とふたたび沖縄をおとずれ、鍾乳洞で熟成古酒となった泡盛をふたりで飲む、なんてすごくロマンティックじゃないでしょうか。20歳になったお子様といっしょに酒を酌み交わす、なんていうのもいいかも。

金武観音寺へのアクセスは、沖縄自動車道・金武I.C.下車後、国道329号線を北へ2〜3分ほど進み、金武バイパスとの分岐を旧道を走る形で左折し、キャンプハンセン第1ゲート入り口を過ぎた次の信号(右手にガソリンスタンド、左手に金海という居酒屋があります)を左折。

約230m進むと右手に「龍の蔵」、隣にお寺専用の駐車場があります。所用時間は、金武I.C.より車で約10分です。ぜひどうぞ。

金武観音寺

住所:沖縄県国頭郡金武町金武222
  • image by:伊波 一志
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1969年、沖縄生まれ。写真家。香川大学法学部卒。
2007年夏、44日間で四国八十八カ所1,200kmを踏破。現在、沖縄県在住で、主に『母の奄美』という作品撮りのため奄美大島を撮影中。家族は、妻と三人の子。

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