鈴鹿峠がボーダーライン?東西「お雑煮」をたどる東海道五十三次
熱田まで来てもお雑煮は角もちとすまし汁が基本
小田原から東海道を西に進みましょう。箱根や沼津を通過し、掛川、浜松、岡崎などを経て、熱田神社で有名な熱田宿(宮宿)、つまり現在の名古屋市熱田区まで一気に目を転じます。
上述の『全国から集めた伝統の味 お雑煮100選』には、愛知県名古屋市のお雑煮が掲載されています。名古屋まで来てももちの形は角もち、かつお節でだしを取ったしょうゆのすまし汁スタイルが基本の様子。掲載されたお雑煮写真の具材は小松菜でしたから、関東風と変わりがありませんよね。しかし、同じ角もちでも調理方法に、少し変化が生まれ始めています。
関東風のお雑煮は角もちを焼いてからすまし汁に入れるのですが、静岡県や愛知県など東海エリアでは、同じ角もちでも焼かずに煮てすまし汁に入れるスタイルが主流(もちろん例外あり)のようです。
角もちは丸もちと違って、煮ると柔らかくなりすぎるという特徴があります。しかし、静岡や愛知まで来ると、関西の影響が強くなるからか、丸もちを煮てから入れる関西風の調理方法が、角もちで採用されているのですね。
<丸小餅はお雑煮の発祥の地、京都の食文化の影響を受けた西日本で主に用いる>(『全国から集めた伝統の味 お雑煮100選』より引用)
鈴鹿峠が東西の境界線
東海道五十三次は名古屋市を出ると、桑名、四日市と現在の三重県に入ります。さらに三重県内で亀山、関と来て、鈴鹿国定公園にも指定される鈴鹿峠を越えると、滋賀県内の土山、水口に続きます。まさにこの鈴鹿峠が、お雑煮の東西を大きく分ける境界線になっていると考えられます。
嫁実家のお雑煮。昆布だしに鶏肉、どんこ、もち菜とシンプル。お餅は親戚のとこでついたもの。三重県四日市 #お雑煮見せて pic.twitter.com/bU5MS3cu0N
ねぎとろ (@negittor) 2016年1月3日
しかし、四日市から南西に50kmほどしか離れていない同じ三重県内の名張は丸もち文化圏に属しています。同じく四日市から北西に50kmほどしか離れていない滋賀県の彦根も、丸もち、さらには白みその文化圏に入っています。実際にその違いは、TwitterやInstagramなどの各SNSを見てみると、容易に確認ができます。
そう考えると、三重県と滋賀県の県境になっている鈴鹿山脈、さらには鈴鹿山脈の南に縦走し、四日市と名張を隔てている布引山地がお雑煮の東西を隔てる境界線になっていると判断できますね。
東海道は現代の国道1号線。その国道1号線で言えば、重要伝統的建造物群保存地区にも指定される美しい宿場町の関から出発して鈴鹿山脈を越えようという鈴鹿峠こそが、東西お雑煮のボーダーラインになっているのですね。