日本最古の水族館。100年以上の歴史を誇る、富山「魚津水族館」

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2019/05/15

大水槽のアクリル製トンネルも日本初で導入した水族館

魚津水族館は、単に歴史が長いだけではありません。設備的にも学術的にも、日本初という快挙が他にもいくつかあります。例えば今ではどこの水族館でも見られるようになった大水槽の全面アクリル製トンネル。

魚津水族館に現存する日本初の全面アクリル製トンネル image by 魚津水族館

魚の姿を真下から、あるいは斜め下から眺められる画期的な水槽ですが、このトンネルは魚津水族館が日本で最初に設置したという歴史があります。

魚津水族館に展示されるマツカサウオ image by 魚津水族館

同水族館の学芸員である不破光大さんによれば、マツカサウオという魚の発光現象が最初に確認された場所も、魚津水族館だと言います。マツカサウオとは『広辞苑』に、

<全長15センチメートル。外観はまつかさに似、黄色。頤(あご)にある一対の発光器はバクテリアの作用で光る>(『広辞苑』(岩波書店)より引用)

と書かれています。「まつかさ」とは松ぼっくりですね。英語でもマツカサウオはpinecone fishと言います。pine coneとは松ぼっくり。その種鱗が閉じた状態にそっくりの網目のような模様の魚で、辞書にも書いてある通り、あごにある一対の発光器が光ります。この特徴は、まさに魚津水族館で1914年8月13日に、日本初どころか世界で初めて確認されたのだとか。当時発表された報告書を引用すると、

<大正三年八月十三日、朝来猛烈なる暴風雨あり、午後十時頃に至り、発電所故障の為、停電の結果魚津水族館内の一時に暗黒となりし際、水槽内にマツカサウヲの発光せるを発見するに至つた>(マツカサウオの発光の報告より引用)

とあります。嵐の夜に起きた偶然の大発見だったのですね。なんだかとてもドラマティックな話。「何か絵本にでもなりませんか?」と不破さんも冗談で言いますので、筆者がチャレンジしてみたいと思います。

学芸員との距離が近い水族館

魚津水族館はバックヤードも開放しているため、来館者はスタッフの作業風景を自由に見学できる。写真はバックヤードに入り、水槽を上から眺めたときの風景。(筆者撮影)

歴史ある同館ですが、規模だけで見ると少しこぢんまりとした印象を、訪れた人は受けるかもしれません。

同じ日本海側の近県にはジンベイザメが泳ぐ『のとじま水族館』や、新潟県の上越市に2018年オープンした『上越市立水族博物館うみがたり』などがあり、少し表現に迷いますが、北陸では「地味」な存在になっている面は正直、否定できません。

しかし、小規模な同館の良さとして、学芸員のフレンドリーさは他の館で期待できない魅力と言えるかもしれません。手元に『富山写真語 万華鏡・255号(魚津水族館)』という小冊子があり、その中でインタビューを受けている同館の別の学芸員も、

<けっこう館内をうろうろしてるんですよ。県外からいらしゃった水族館通の方が『こんなにひょこひょこ学芸員が出てくる水族館は他にないんじゃないの。でもそれがいいけどね』と言われました>(『富山写真語 万華鏡・255号(魚津水族館)』(ふるさと開発研究所)より引用)

と語っている通り。実際に筆者が子どもを連れて取材とは別に訪れた日も、水槽の中の生物にえさを与える学芸員が、われわれの視線に気づいて即興で生物の解説をしてくれました。


このスタッフと来客者の距離の近さも、魚津水族館の魅力だと言えるかもしれませんね。えさをもらうカメと与える学芸員の間にも、温かな気持ちのやりとりを感じたほどでした。

バックヤードにはスタッフ業務の解説もある。(筆者撮影)

上述した小冊子には、

<水族館が誕生して五年後、この地で米騒動が起きた>(『富山写真語 万華鏡・255号(魚津水族館)』より引用)

と書かれています。日本史の教科書にも掲載される歴史的な大事件の現場とすぐ近所で、米騒動よりも前に誕生したと聞くと、なおさら歴史の長さを感じます。北陸旅行の際には、ぜひとも立ち寄ってみてください。

  • 魚津水族館
  • 富山県魚津市三ケ1390
  • 0765-24-4100(8:30~17:00)
  • 大人750円/小・中学生410円/幼児100円
  • 12月1日から翌年の3月15日までの月曜日(月曜日が祝休日の場合は翌平日が休館日)と年末年始
  • 9:00~17:00(入館は16:30まで)
  • 魚津水族館 公式サイト
  • 参考
  • 富山写真語 万華鏡・255号(魚津水族館)(ふるさと開発研究所)
  • 富山のさかな(魚津水族館)
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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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