旅も人生も、もっと楽しく編集できる。

【歴史ミステリー】なぜ「五重塔」は、いまもなお全国で造られるのか?

坂本 正敬
坂本 正敬
2019/02/07

京都の東山界隈を歩いてみると、八坂の塔が低層の町家の間に見えて、風情が感じられますよね。この「八坂の塔」は通称で、正式には1440年に建てられた法観寺の五重塔です。

五重塔といえば、法隆寺(奈良)の五重塔も有名ですが、この五重塔は法観寺や法隆寺以外だと、一体どれくらいあるのでしょうか?

そこで今回は各種の資料を基に、日本にある五重塔さまざまな切り口からまとめてみました。五重塔は全国に建てられていますので、五重塔を旅の目的に全国を巡っても面白いかもしれません。

五重塔は古代インドのストゥーパが起源

京都 醍醐寺の五重塔 image by: Shutterstock.com

建築資料研究社が出版した『五重塔のはなし』(監修・濵島正士、坂本功)という書籍が手元にあります。2010年発行と書かれているので、情報はその当時の内容になり、2019年の現在は情報が少し古くなっている可能性もありますが、巻末には「日本の五重塔の一覧表」が掲載されています。

その一覧表を見るとびっくりしますが、五重塔は平成に入ってからも続々と全国で新築されているようです。五重塔というと、冒頭にも紹介した国宝である法隆寺の五重塔や、興福寺(奈良)の五重塔などが有名ですから、なんとなくすごく古い印象があります。

しかし、平成になっても最初の20年くらいで、新しい五重塔が全国のお寺で30近く誕生しているのです。

では、なぜ平成になっても五重塔は建てられ続けているのでしょうか。その理由は、五重塔が「」である点を理解すると分かりやすいです。

image by:Matt Makes Photos/Shutterstock.com

最近、筆者の親しい知人の息子さんが他界しました。遺骨はまだ自宅にあり、仏壇の隣にある床の間には遺骨ととともに卒塔婆(そとうば、そとば)が立てかけられています。卒塔婆とは、お墓に立てるギザギザの形をした木の板で、

<上部を塔型にした細長い板。梵字・経文・戒名などを記す>(『広辞苑』(岩波書店)より引用)

と辞書にも書かれています。言い換えればあの卒塔婆は「塔」そのものでもあるのです。

そもそも卒塔婆という漢字は、古代インドで作られた、土をドーム状に盛り上げた墳墓(ストゥーパ)が中国に伝わったときに生まれています。卒塔婆は塔婆、塔とも略されていきました。

栃木 日光東照宮の五重塔 image by: Shutterstock.com

塔という漢字を『漢字源』(学盒研)で調べると、もともとは「」という字が使われていて、つくりは「」と同系だとされています。

「合」の字は、穴にふたを被せてぴたりと合わせる意味を持つそうで、仏陀(ぶっだ)など聖者の遺骨を収める場所を表します。

<これを「土」に埋め、時が経つにつれて「草木」が生え、やがて「塔」となる>(上田篤著『五重塔はなぜ倒れないか』(新潮社)より引用)

といった由来を「塔」という漢字は持つのだとか。

聖者の遺骨が納められた塔は当然、信仰や崇拝の対象になります。さらに仏教の経典の1つである『法華経』には、仏に心を開くための方法として、塔を建て、仏像・仏画を作って仏を供養する大切さが説かれています。

塔の建立は、仏を供養し、仏の世界に入る大切な方法のひとつなのです。また、五重塔は寺院建築や信仰心のシンボル的な役割も果たすため、歴史を通じていまでも五重塔が建立され続け、80を超える塔が現存しているのだと考えられます。

翻訳家/ライター。1979年東京生まれ、埼玉育ち、富山県在住。成城大学文芸学部芸術学科卒。国内外の紙媒体、WEB媒体に日本語と英語で執筆する。 主な訳書に『クールジャパン一般常識』(クールジャパン講師会)。

【歴史ミステリー】なぜ「五重塔」は、いまもなお全国で造られるのか?
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
TRiP EDiTORの最新情報をお届け
TRiPEDiTORオフィシャルメルマガ登録
TRiP EDiTORの最新記事が水・土で届きます
ついでに読みたい
株式会社KPG HOTEL&RESORT 美しい海を目の前に。愛犬と「アイランド ナガサキ」で過ごす癒し旅
 福井 「晴明神社」は京都だけじゃない。北陸のレトロな港町・敦賀を行く ★ 14
 京都 「華やかな北山」と「わび・さびの東山」。京都が見せる意外なふたつの顔 ★ 63
 京都 【オトナの京都】闇夜に浮かぶ嵐山花灯路が美しい ★ 20
 全国 【書評】里山にはきっと何かいる。恐怖に満ちた「人里と深山の境界」 ★ 31
 静岡 【神秘】西伊豆で見つけた「青の洞窟」と「東洋のモンサンミッシェル」 ★ 47