【歴史ミステリー】なぜ「五重塔」は、いまもなお全国で造られるのか?
全国各地、まずはチェックしたい五重塔は?
先ほどは22カ所の国宝、もしくは重要文化財の五重塔を一覧にしました。もちろん、明治以降に建てられた五重塔も数多く存在しますが、まずは実物を眺めて拝みたい塔は、上述の22カ所です。
北は青森から、南は山口県にまで至りますから、この22塔を巡るだけでも、かなりの旅になりそうですよね。
なかでも特徴的な塔をピックアップすると、法隆寺(奈良県)の五重塔は世界最古の木造建築であり、醍醐寺(京都府)の五重塔は、見た目のバランスがとても美しく、理想のプロポーションを持つ「名塔」と評価されていると聞きます。
また優美さでいえば、瑠璃光寺(山口)の五重塔を推す声も、筆者の周りでは少なくありません。
さらに厳島神社(広島県)、日光東照宮(栃木県)は世界文化遺産にも指定される神社でありながら、仏陀(ぶっだ)の墓という本来の意味を超えた信仰の対象として、五重塔が建てられています。
羽黒山(山形県)の五重塔に関しては、明治維新で吹き荒れた廃仏棄釈で破壊されそうになったものの、信者の機転で心柱に祭られていた観音菩薩像を隠し、日本の神である大国主命を祭って、難を逃れたという歴史を持つのだとか。
ほかにも、空海創建の教王護国寺(東寺)の五重塔では、日本一高い塔の周りに修行僧が並び、真言を唱える姿を眺められます。
上述した五重塔のはそれぞれに長い歴史があり、それぞれの役割があります。ひとつひとつの塔を巡り、歴史と人々の信仰心を感じながら手を合わせると、特別な感慨を得られるかもしれませんね。
五重塔の鑑賞の方法としては以下を意図的に見てみると、より楽しめるといわれています。
・一番下の層と一番上の層の大きさのバランス
下の層が大きく上が小さいとどっしりとした感があり、下の層と上の層がそれほど変わらないと、すらりとした印象を受ける。
・骨格の美と装飾の美の対比
→内部構造がそのまま外観になっている骨格と、窓や手すりなどの装飾で外観を整えている装飾の対比。
・張り出した屋根(軒)の深さと反り返り
・塔身(塔の本体)と屋根(軒)の配置のリズム
五重塔を拝む機会に恵まれたら、少し上述の点を意識してみるだけでも、見方が深まるはずですよ。
- 参考
- 『不滅の建築1 法隆寺五重塔』(毎日新聞社)
- 濵島正士、坂本功監修『五重塔のはなし』(建築資料研究社)
- 黒田重義著『大工力 -五重塔から立体トラスとまでー』(理工学社)
- 『NHK美の壺 五重塔』(NHK出版)
- 上田篤著『五重塔はなぜ倒れないか』(新潮社)
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- ※一部、本文内容を修正しました。(2019年2月13日)