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2019/04/17

富山県の魚津は蜃気楼の「先進地」

魚津の蜃気楼(富山県)image by:(公社)とやま観光推進機構

上述した蜃気楼フォーラムの中で行われた全国蜃気楼会議では、同じく上述の南極越冬隊員の宮内誠司さんが、魚津のように蜃気楼に対して人・暮らし・歴史などのバックグラウンドがないと、蜃気楼が出ても気づかない人が多いと指摘しています。

全国的に確認される場所は多いものの、蜃気楼について注目をしている人が少ないと、簡単に見過ごされてしまう恐れがあるのですね。

その点、魚津は観光資源として蜃気楼を全面に押し出しています。魚津で最も蜃気楼を目撃しやすい場所には海の駅蜃気楼と魚津埋没林博物館があり、同博物館では蜃気楼の再現装置(しんきろうDEにらめっこ)を作ったり、蜃気楼の仕組みを解説したりと、情報発信に力を入れています。

魚津埋没林博物館(富山県)image by:(公社)とやま観光推進機構

魚津には蜃気楼研究会も存在します。以前筆者が海岸まで蜃気楼をふらりと見に行ったら、会員の方に「これで見なさい」と双眼鏡を好意で貸してもらった思い出もあります。

歴史的にも1698年に駒谷散人が書いた『北越軍談』で、長尾景虎(上杉謙信)が1564年に魚津の海岸で馬を止めて蜃気楼を眺めたなどの記述が確認されます。

魚津における蜃気楼の発生の仕組みについて、地元の県立高校の教師が新説を発表し、定説を覆しつつあるといった歴史もあります。とにかく魚津は蜃気楼に関して人、暮らし、歴史のバックグランドがかなり分厚く育まれているため、他の地域と比べても日本で蜃気楼の「先進地」と呼べるのですね。

蜃気楼を見るときの心構えと持参したい装備

海の駅「蜃気楼」の駐車場は絶好の観察スポット(富山県)image by: (公社)とやま観光推進機構

ただ、物事を公平に記すために、蜃気楼を眺めに出かけるときの注意点をいくつか最後に述べたいと思います。筆者は現在、富山に移住して10年ほどになります。その間に何度か蜃気楼を眺めましたが、蜃気楼という現象に過剰なまでの期待を抱いていると、「がっかり」してしまう恐れがあります

蜃気楼は例えば、その場に存在しない町や物体が浮かび上がるような現象ではありません。目に見える景色が上に伸びたり、下に伸びたりするだけの話です。しかも、その変化は肉眼だと、かなり微妙です。蜃気楼による景観の変化は、

<腕をいっぱいに伸ばして持った5円玉の穴に入ってしまう大きさ>(魚津埋没林博物館の広報誌『うもれ木』より引用)

と書かれているくらい小さいです。その意味では、必ず望遠レンズを装着した一眼レフカメラ双眼鏡を持参したいです。スマホのカメラ機能では、到底満足のいく写真は撮影できません。


しかも、蜃気楼の「本場」魚津にわざわざ出かけても、見られない可能性は十分にあります。3月~6月が最も蜃気楼を確認しやすい時期になりますが、その間に蜃気楼が発生する回数は、2000年以降で最小4回最大で42回です。魚津に出かけたからと言って、必ず見られるとは限らないのですね。

魚津周辺から見える立山連峰の眺め。蜃気楼観察と共に楽しみたいimage by:(公社)とやま観光推進機構

富山の観光を盛り上げたい筆者としては、ぜひ魚津に来て眺めればいいと言いたいところ。ですが、まずは現在の住まいの近くに蜃気楼の名所を探し、その土地に双眼鏡か望遠レンズ付きの一眼レフカメラを持参し、蜃気楼を楽しんでみるといいかもしれません。

「なるほど、これは面白い現象だ!」

と心底感動し、さらなる興味がわいたとしたら、いよいよ蜃気楼の「先進地」魚津を目指してみるというスタンスが、ちょうどいいのかもしれませんね。

image by:(公社)とやま観光推進機構(魚津)

※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。

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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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