GWが最高の観測シーズン。意外な「蜃気楼のメッカ」はどこにある?
だいぶ温かくなりましたね。本格的な春の到来ですが、春の楽しみと言えばなんでしょうか?もちろん桜の鑑賞です。他には入学式や卒業式、入社式や転勤など新生活のスタートの季節でもあります。
しかし他にも、春の楽しみはあります。蜃気楼(しんきろう)ですね。岩波書店『広辞苑』にも春の季語として紹介される自然現象。そこで今回は春に楽しみに出かけたい日本の蜃気楼の名所を紹介したいと思います。
「蜃気楼」は日本で意外と身近な存在?
そもそも蜃気楼という自然現象を、今までに見た経験がありますか?「そんなもの日本でも見られるの?」と思うかもしれませんが、もちろん日本でも見られます。むしろ、蜃気楼の一種である「逃げ水」であれば、かなりの人が見た経験があるのではないでしょうか?
筆者は東京の西部で生まれ、埼玉県の南西部で育ちました。かつて武蔵野と言われたあたりですが、武蔵野の名物と言えば、逃げ水になります。春や夏、太陽が照って地面が暑くなると、遠くの道路の表面に、水たまりのような幻をよく見ました。少年時代の思い出のひとつです。
この逃げ水、正式には下位蜃気楼と言って、地表の下側にゆらゆらと蜃気楼が見えているため、遠くから見るとまるで水がたまっているように見えるのですね。
蜃気楼はどこでも見られる?
蜃気楼で有名な土地に、富山県の魚津市という場所があります。2002年、サッカーのワールドカップが日韓で開催された年に、魚津で初めて蜃気楼フォーラムが開催されました。
その記録集が魚津市と魚津市教育委員会から出版されており、その中でフォーラムのパネルディスカッション登壇者が、
<気象学上では、上暖下冷の条件が整えば、どこにでも発生する>(魚津市・魚津市教育委員会『蜃気楼フォーラムin魚津2002 記録集』より引用)
と発言しています。
上暖下冷の条件とはいきなり聞くと難しいですが、要するに地表や海面近くで温度の異なる空気の層が重なると、どこでも蜃気楼は発生するのですね。極端な話、南極でも蜃気楼は観測されていて、南極越冬隊員の宮内誠司さんなどが、積極的に写真を公開しています。
ただ、現象としてはどこでも起きる可能性があるとはいえ、出やすい場所はある程度決まっています。
国内で言えば、上述した富山県の魚津市を筆頭に、滋賀県の琵琶湖、福島県の猪苗代湖、三重県の四日市、熊本県の不知火、さらに北海道の石狩湾やオホーツク海、根室、別海、手稲山、苫小牧沖などですね。
この中で蜃気楼のメッカと言えば、恐らく富山県の魚津市が筆頭に挙げられると言えます。その理由は、古くから魚津市では蜃気楼の研究が進んでおり、観光の資源としても活用されてきたから。発生回数も安定して多めですから、蜃気楼を見たいと思ったら、真っ先に訪れる場所として悪くない選択肢になります。