24歳の暑い夜。2019年のあの日、私は「香港」に恋をした

2日目の朝、香港島へ

image by:編集部

翌日、すっきりとした目覚めではなかった。田舎の祖母の家を思い出すような、暑さと湿気に体が包まれている。

窓からは日差しがガンガンに差し込み、太陽が「まだ起きないのか!」と威圧的に声をかけてくるような天気だ。シャワーを浴びて、とりあえずホテルを出ることに。

向かった先は、香港に土地勘のある先輩がおすすめしてくれたカフェ。香港では「香港式ミルクティー」と「菠蘿油(ポーローパーウ)」というパンが有名だそう。

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目的地に到着するころには、数十分前に浴びたシャワーが無駄に感じられるほど汗だくだった。店内に入り、1階にいた店員さんに声をかけると、2階へ案内された。

Mido Cafe」というお店の店内はとてもクラシックなつくりで、昭和ノスタルジックを感じるタイルと、飾りっ気のないテーブルと硬い椅子が並んでいる。

残念ながら店内は撮影禁止とのことで、注文した食事の写真だけをスマホにおさめた。

「香港式ミルクティー」image by:編集部

西洋の文化の交わる香港では独自のカフェ文化が発展してきたようで、「香港式ミルクティー」は日本のミルクティーとは異なり、甘さは控えめ。

エバミルクという無糖の練乳が入っていて、甘さは卓上にあるお砂糖で追加するというスタイル。

「香港式ミルクティー」と「菠蘿油」image by:編集部

そして最近、日本でも見かけるようになってきた菠蘿油。サクっとした生地がメロンパンを彷彿とさせるが、しっとり感が絶妙にたまらない。


パンの間に挟まったバターはたしか無塩バターだった気がするけど、記憶が確かではないので、もう一度香港に確かめに行かなくてはならない。

訪問したときはお昼時だったが、店内は観光客の私でもゆったりとした時間を過ごせるほど客足はまばらな状況だった。

軽く腹ごしらえを終えたところで「香港島」へ向かうことに。どうやらホテル近くの港から出ているフェリーで行くことができるようだ。

スターフェリー乗り場 image by:編集部

コンビニでも売られている「八達通オクトパス)」というICカードを購入して、乗船場へと向かった。土日祝の大人の乗車料金は片道3.7香港ドル。日本円で約52円ほど(1香港ドル14.24円で計算<2021年6月29日時点>)という、かなりの安さ。

乗り場には私のような観光客っぽい人から、なぜか黒い服を着た人をちらほらと見かけた。

「オクトパス」でピっとするだけ image by:編集部

そのときは香港で黒い服が流行っているのだと思っていたが、その服に意味があることを知ったのは、もう少しあとになってからだった。

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香港島行きの船の椅子には「☆」マークが施されていた。遊び心のある(しかし硬い)椅子に座って数十分ほどのんびりしていると、すぐに目的地に到着。

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船を降りたら、とりあえず人出があるほうに向かって歩く。きっと観光地には多くの人が集まるから、付いていけばどこかにたどり着けると思ったのだ。

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人の流れに乗って到着した先には、黒い服を着た人たちの人混みがあった。その日、香港島の中心部でデモが行われていたのだ。

当時の香港では、2019〜2020年にかけて「香港民主化デモ」が行われていた。

これは「逃亡犯条例の完全撤回」や「普通選挙の実現」など、5つの目標である「五大要求」の達成を目的としたデモだ。

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若者からお年寄り、現地に在住しているであろう外国人までが、みな黒い服を着て集まっていた。

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不勉強で香港についてほんの少しの情報しか持ち合わせていなかった私は、フェリーの上では香港島の「ビクトリアピーク」から高層ビル群を一望したり、「銅鑼湾(コーズウェイ・ベイ)」でお買い物をしたり、かつてイギリス統治時代にイギリス人が多く住んでいた「上環(ションワン)」でレトロな景色を楽しんだり、そんな当たり前だったはずの観光体験に胸を膨らませていた。だが、そんな楽しめるような雰囲気は、一切ない。

街の至るところで交通規制が行われており、大通りにはデモに参加している人たちであふれ、ほとんどのお店は閉まっていた。

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ようやく私は、日本にいるときニュースサイトでチラリと読んだ記事を思い出した。Slack上で同僚にシェアされたニュースを、PCの画面越し、他人事のように遠くの立場で読んだ。

それは、もちろん現実として目の前にあった。実情を肌で感じた私は、市民が一致団結している姿にいままで感じたことのない気持ちを抱く。

異文化にもかかわらず、身に降りかかってくるかのようなリアルさで、感じたことのないカルチャーショックを受けたことを、いまも覚えている。

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