24歳の暑い夜。2019年のあの日、私は「香港」に恋をした
滞在時間はほんのわずか。香港島からの帰りの船は、行きよりも乗船時間が短いように感じた。この胸にある気持ちは何なのか?答えが道に落ちていないか探すように下ばかり見て、街をとぼとぼ歩いた。
無性にお酒を飲みたい気分になり、たまたま見つけた酒屋に入ってビールをいくつか調達する。そそくさとホテルにもどり、いちもくさんにシャワールームへ向かった。
シャワーを終え、簡易冷蔵庫で冷やしたビールを飲む。風呂上がりのビールがうまいとはよくいうが、そのときはあまり味を感じなかった。
2本目のビールを飲み終えたところで、ようやく気持ちの切り替えができ、再び外へ出ることに。ちょうど停車していたバスに、思い切って飛び乗る。
香港といえば2階建てのオープンバスが有名だが、私が乗ったのは観光用ではなく、市民の足として活躍する2階建てバス。
すべて前払いらしく、先に乗車する人にならってオクトパスをかざす。そのまま2階へ上がり、席に座ったら、適当な場所で降りることにした。
車内はかなり揺れたが、地元の人たちは動揺することなく乗り続けている。ちなみにバスを降りるときは日本と同じように「ベル」があるので、押すだけで止まってくれるのが便利だ。
バスを降りたら、とりあえず飲食店に入って腹ごしらえをすることに。香港島にいるときは緊張のため感じなかったが、かなりの空腹だったようだ。
バス停からほど近い場所にあったお店には、店頭に写真付きのメニューが掲げられていた。きっと「いいね」マークが記載されているメニューは、おすすめ料理のはず。入店してすぐに、目星をつけていた料理を注文する。
カフェを紹介してくれた先輩から香港では食器を「お茶で洗う」と聞いていたが、洗うようなお茶がどこにも見当たらなかったので、そのまま食べることにした。
運ばれてきた料理からは、美味しそうな香りが漂っている。具材は牛肉とタマネギとネギと、謎の葉っぱ。麺はフォーのような半透明の平打ち麺。
実際に食べてみると、麺の食感はフォーそのままだった。そしてなんといってもスープが美味しい。なぜ香港のスープはどこもかしこもこんなに美味しくて、ずっと飲んでいられるのだろうか。不思議だ。
一通り腹ごしらえを終えたので、お店を出て街を歩く。
日本語で書いている火鍋の食材店や人がたくさん集う八百屋、いろんなお店が立ち並んでいた。
たった数分しか歩いていない距離でも、香港の街には楽しみがたくさん詰まっている。日も暮れ始め、だんだんと街に灯りがともり始めていた。
暗いはずの裏路地もネオンに照らされて、ほのかに明るくなってくる。2度目の香港の夜がすぐそこまでやってきていた。
次なる目的地である「廟街(テンプルストリート)」を目指す。この場所には、俳優・満島ひかりさんが参加した「MONDO GROSSO(モンド・グロッソ)」の名曲『ラビリンス』のPVに登場する場所があるのだ。
道端にはオープンスペースで飲食店のテーブルが出ており、たくさんの人が楽しそうにお酒を飲んでいた。いつもならちょっと一杯といきたいところだが、お腹も膨れていた私は、満島ひかりさんの歌声をイヤホンで聞くだけで十分だった。
そのまま市場の雰囲気を楽しみながら十分に歩き回った後、「ビクトリア・ハーバー」の夜景を見るために再び港へ向かう。合計すると結構な時間を歩いているはずなのに、なぜか足取りが軽い。
途中、屋台でワッフルを購入した。香港ではメジャーなグルメで、街を歩くといたるところでお店を見かける。名前は「鶏蛋仔(ケイタンシ)」という食べ物らしい。
これがまた食べ出したら止まらない美味しさ。お腹はいっぱいのはずなのに、気がついたらペロリと食べきっていた。
ベビーカステラのような見た目だけど、サクサクとした食感で中はふわっとしている。選んだ味はプレーンだったが、甘さが程よくて軽いおやつ感覚で食べられるのも嬉しい。