駅弁は“旅の記憶”そのもの。鉄道好き144人に聞いた「鉄道グルメ」の本音
鉄道旅の醍醐味は、移動そのものにあると言われます。けれどその旅路をいっそう豊かに彩ってくれるのが、駅弁や駅そば、駅カフェといった「鉄道グルメ」の存在ではないでしょうか。
列車がホームを滑り出し、窓の外を流れる景色が動き始めるなか、手元に広がるのは、ふたを開けたばかりの駅弁から立ちのぼる、湯気とともに漂うその土地の香り。
今回、株式会社NEXERと鉄道ひろばが共同で調査したのは、鉄道に興味がある全国の男女144名を対象に「鉄道グルメ・駅弁」についてのアンケート。見えてきたのは、単なる「食事」にとどまらない、旅の記憶そのものと結びついた鉄道グルメの奥深い魅力です。データと生の声を手がかりに、その世界をひもといていきましょう。
7割以上が実感する「鉄道旅×グルメ」の特別な体験

まず注目したいのが、鉄道グルメを「楽しんだことがある」と答えた方が全体の72.2%にのぼったという結果です。
裏を返せば、鉄道に興味を持つ方のおよそ4人に3人が、駅弁や駅そばといった鉄道ならではの食の体験を、旅の一部としてすでに楽しんでいるということ。ホームの立ち食いそばで出発前の高揚感に浸る人もいれば、車窓を眺めながら駅弁のふたを開ける瞬間を何よりの楽しみにしている人もいる。
鉄道グルメは、移動時間を「ただの移動」から「旅の醍醐味の一つ」へと変えてくれる、かけがえのない存在になっているようです。
一方で、27.8%の方はまだ鉄道グルメを体験していないという結果も見逃せません。これから初めての鉄道グルメに出会う方にとっては、まだ開かれていない旅の扉がそこに待っているともいえるでしょう。
記憶に刻まれた一品。「峠の釜めし」が不動の存在感

「これまでに食べた駅弁や鉄道グルメで、特に印象に残っているものは?」という問いに対して、ひときわ多くの声が集まったのが「峠の釜めし」でした。
益子焼の土釜に盛り付けられた素朴ながら滋味深い味わい。食べ終わった後も手元に残る器の温もり。長年にわたって愛され続けているのは、味だけでなく、五感のすべてに訴えかける体験としての完成度の高さゆえでしょう。

ほかにも、名古屋を代表する鉄道グルメとして名高い新幹線ホームのきしめんや、富山の「ますのすし」、岡山駅の「桃太郎の祭り寿司」、小淵沢駅の「元気甲斐」と「高原野菜とカツ弁当」など、全国各地の名物が次々と挙がりました。
興味深いのは、名古屋駅で「JR在来線ホームのきしめんが新幹線ホームと同じだと知った」という60代男性の声。鉄道グルメには、こうした小さな発見や驚きもまた旅の思い出として刻まれていくのです。
さらに、名古屋駅の「ぴよりん」のように比較的新しい鉄道スイーツの名前も登場しており、駅弁という枠組みを超えて、鉄道グルメの楽しみ方が多彩に広がっていることがうかがえます。
おいしさの先にあるもの。鉄道グルメが愛される理由

では、鉄道グルメのどんな点に魅力を感じているのか。複数回答で聞いた結果を見てみましょう。
最も多かったのは「味がおいしかった」で66.3%。これは至極まっとうな結果ですが、注目すべきはその先に続く回答です。「地域らしさを感じられた」が50.0%、「旅気分が高まった」が38.5%と、いずれも高い支持を集めました。
つまり、鉄道グルメの魅力は「おいしさ」だけで語り尽くせるものではないのです。窓の外を流れる景色を眺めながら、その土地で獲れた食材をいただく。ホームに立ち込めるだしの香りに誘われて、思わず暖簾をくぐる。そこにあるのは、「食べる」という行為を超えた、旅そのものの体験です。
お腹だけでなく、心まで満たしてくれる。鉄道グルメが多くの旅人を惹きつけてやまない理由は、この「体験としての豊かさ」にこそあるのではないでしょうか。
「ここでしか出会えない」が最大の決め手

駅弁を購入する際に最も重視するポイントを聞いたところ、1位は「地域限定かどうか」で27.9%でした。続いて「その土地の食材が使われていること」が25.0%、「価格」が14.4%という結果に。
とりわけ印象的なのは、上位2項目を合わせると半数を優に超えるという事実です。駅弁選びにおいて、「ご当地性」がいかに強い吸引力を持っているかが鮮明に浮かび上がります。
「その地域でしか食べられないグルメが最も価値があると感じる」(40代男性)
「現地ならではの味を求めたい」(40代男性)
「ご当地の食材を気軽に食べることが一つの観光になる」(50代男性)
寄せられた声からは、駅弁を「旅先でしか手に入らない特別な一品」として捉えている姿勢が一貫して読み取れます。
どこでも同じものが手に入る時代だからこそ、「ここでしか味わえない」という希少性が、旅人の心を強く動かしているのでしょう。
一方で、3位に入った「価格」に対する声にも耳を傾けたいところです。
「ボリュームの割に価格がやや高めのお弁当が多く、買うのにやや躊躇する」(50代男性)という率直な意見からは、近年の物価上昇を受けた消費者のリアルな心理がにじんでいます。旅先での特別な一食だからこそ奮発したい気持ちと、値上がりへの戸惑い。その間で揺れる旅人の姿は、いまの時代ならではの風景かもしれません。
ご当地で愛される美食が自宅に届くちょっとしたご褒美

「鉄道会社が販売する食品・グルメ商品をオンラインで購入したいと思ったことがあるか」という問いに対して、「ある」と答えた方は22.2%にとどまりました。
この数字は一見控えめに映りますが、裏を返せば、鉄道グルメは「現地で味わってこそ価値がある」と考える方が多いということ。列車の揺れ、車窓の景色、ホームの喧騒。そうした五感の記憶と結びついてこそ完成する体験を、画面越しの注文で代替することには、どこか物足りなさを感じるのかもしれません。
しかし、2割強の方が関心を示しているのもまた事実です。そしてその声の中には、なかなかユニークな願望も見え隠れしていました。
「有名な駅弁が毎月自宅に届けられるサブスクリプションサービス」(40代女性)という提案は、旅の余韻を日常に持ち込むという新しい楽しみ方の可能性を感じさせます。また「地域の小さな企業が作って売るような、あまり知られていない地元商品」(50代女性)に出会いたいという声からは、観光ガイドには載らない“知る人ぞ知る味”への好奇心がうかがえます。
有名駅弁を自宅で味わいたいという素朴な憧れと、まだ見ぬ地方の味を発掘したいという冒険心。オンラインという手段が、鉄道グルメの新たな入口になり得る可能性を、これらの声は静かに示しています。
今回の調査が教えてくれたのは、鉄道グルメが単なる「移動中の食事」ではなく、旅の記憶を形づくる大切なピースであるということです。
鉄道に興味を持つ方の7割以上が、すでにその魅力を体感している。駅弁選びの決め手は「ここでしか出会えない」ご当地性。そしてグルメの満足度は、味のおいしさだけでなく、「地域らしさ」や「旅気分の高まり」といった体験の豊かさに支えられている。
ふたを開けた瞬間に広がる、その土地ならではの彩りと香り。車窓を流れる景色とともに口に運ぶひと口は、きっと何年経っても色あせることのない旅の記憶になるはずです。
次の鉄道旅では、ぜひ少しだけ時間に余裕を持って、ホームや駅ナカを歩いてみてください。ガイドブックには載っていない、あなただけの「忘れられない一品」が、どこかの駅で静かに待っているかもしれません。
- source: 株式会社NEXERと鉄道ひろばによる調査(via PR TIMES)
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