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安さを超えた魅力がある。のんびり「深夜高速バス旅」のススメ

吉村 智樹
吉村 智樹
2019/12/17

旅へ出るとき、高速バスを利用した経験はありますか?

いま、『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)という本が話題となっています。発売早々に重版がかかるほどヒットしているのです

著者は大阪在住のフリーライター、スズキナオさん(40)。内容は、深夜便の高速バスを愛好するスズキさんが、「デイリーポータルZ」や「メシ通」など、さまざまなWebメディアに書いてきた約500本の記事の中から29本を厳選した傑作選です。

5年間で100回以上「深夜高速バス」を利用し、旅取材を続けるライターのスズキナオさん

読んでみると、深夜高速バス旅の魅力を綴った表題作をはじめ、フェリーや、ときには延々と歩くなど、スローペースな小旅行のルポルタージュがどれもとても味わい深い。

読むと深夜高速バスに乗ってみたくなること請け合い
時にはひたすら歩くことも

辿り着いた場所は、地味で控えめなお店ばかり。

老姉妹で営む喫茶店や、路地裏の大衆食堂、さらには究極の家系ラーメンということで、友だちの自宅でお母さんにラーメンを作ってもらうなど、ほのぼの、しみじみ、のほほんとした取材記事の数々が収められています。

どのエピソードもあまりにもいい湯加減なので、ページをめくるたびに肩の力が抜けてゆく気がするのです

おばあさん姉妹が営む喫茶店。その名も「思いつき」
店主さんの笑顔がたまらない大衆食堂


著者のスズキナオさんに、高速バスに惹かれる理由と、急がないのんびり旅の楽しみ方について、お話をうかがいました。

お金がなく時間だけがあった時期を救ってくれた安価な高速バス

──スズキさんが高速バスを多く利用するようになったきっかけは、なんでしょう。

スズキナオ

「僕は5年前まで東京のIT系広告企業に勤めていました。ただ、妻は大阪出身で、実家である幼稚園で働くことになり、5年前に家族で大阪へ引っ越したんです。深夜の高速バスを利用するようになったのは、実家が東京にあるし、寂しくなって東京の友だちに会うために往復しはじめたのがきっかけですね」

──頻繁に高速バスに乗るようになったのは、大阪への転居がきっかけだったのですか。

スズキナオ

「そうなんです。高速バスは、他の交通機関に較べ、運賃が安いですから。会社を辞めてフリーのライター業を始めたころは、小さなメディアに原稿を納める程度で、仕事もお金もない。けれども、時間だけはたっぷりある生活をしていました。なので新幹線や飛行機などよりも移動に時間がかかることは苦ではなかったし、それよりも、お金がかかる方が自分には考えられなかったんです」

──確かに高速バスは運賃が安くて助かりますよね。

スズキナオ

「安いんです。東京~大阪間で、平日だと深夜便が2,000円台であります

──に、2,000円台ですか!旅費を抑えるのならば高速バスは最適な乗り物ですね。しかし、2,000円台のバスとなると、トイレがついていないのでは。

スズキナオ

「はい、格安のバスになるとトイレの設置がない場合が多いです。そのため、乗車前は尿意をもよおしてしまうビールは控えています。乗車中の飲酒は禁じられているので、ときどき休憩時間に車外でウイスキーをストレートでキュッと飲んでいます」

──もうちょっと料金を上乗せして、トイレがついている高速バスに乗っても、それでも充分に安いのではないでしょうか。

スズキナオ

「確かに、いい高速バスはトイレがあって安心です。さらに人と人の間がしっかり開いていて、リクライニングもたっぷりできて快適です。でも、格安なバスは、それはそれで楽しいですよ。運賃が安いぶん、乗客は若者が多いし、海外からの旅行者がたくさんいます。ですから車内に『旅を楽しみたい』という独特な熱気が充満しているんです。また、どなたも旅慣れているため、発車するとすぐに静かに眠りにつく。皆さん、マナーがいいんです。安いだけが魅力ではないんです

「安さだけが高速バスの魅力ではない」と語るスズキさん

──なるほど。格安のバスならではの醍醐味があるんですね。

吉村 智樹

京都在住の放送作家兼フリーライター。街歩きと路上観察をライフワークとし、街で撮ったヘンな看板などを集めた関西版VOW三部作(宝島社)を上梓。新刊は『恐怖電視台』(竹書房)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)。テレビは『LIFE夢のカタチ』(朝日放送)『京都浪漫』(KB京都/BS11)『おとなの秘密基地』(テレビ愛知)に参加。まぐまぐにて「まぬけもの中毒」というメールマガジンをほぼ日刊で発行している(購読無料)。

安さを超えた魅力がある。のんびり「深夜高速バス旅」のススメ
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