怖いけど美しい。住人が消えた「ゴーストタウン」の不思議な魅力
たった一日で消えてしまった村
オラドゥール・シュル・グラヌ／フランス
「オラドゥール・シュル・グラヌ（Oradour-sur-Glane）」は、フランスのヌーヴェル＝アキテーヌ地域圏オート＝ヴィエンヌ県にある村です。
もともとドイツの占領下であったこの地で、哀しい事件が起こりました。
1944年4月10日。ナチスの武装親衛隊からオラドゥール村の村長へ、「村人の身分証を確認するので、全員を広場に集めるように」と指令が入ります。
学校に登校している児童や仕事中の者はもちろん、近隣の農家や村への来訪者など、見つけられる限りの人間はもれなく広場に集合させられました。
午後3時。集合を終えると、女性と子どもは教会に、男性は6つの物置や納屋に分かれて連行されます。
男性陣が連れられた場所に待ち構えるのは、機関銃を持ったドイツ兵。男性の足元をめがけて銃を乱射し、動けなくなった体に藁（わら）を被せ、次々と火をつけていきました。
ある納屋から男性6名が逃げ出しましたが、そのうちの1人は逃亡後すぐに発見され射殺されています。
教会にもドイツ兵が潜んでおり、女性たちが建物内に入るとともに可燃物を投げ入れて放火。さらに機関銃を乱射し、混乱のなか女性240名、子ども205名が命を落としました。
集合した人の虐殺していくと、今度は家に残っている人を探しにまわります。
寝たきりの老人はベッドごと焼かれ、村へ訪問にきた通りがかりの人までも射殺。生存者を容赦無く犠牲にしました。
村は徹底的に破壊され、以前の面影をうかがい知ることはできません。
1日にして村人642人の命が犠牲になり、親衛隊から逃げ切ったのはたったの26人。村はゴーストタウンと化しました。
戦後に当時のフランス大統領であるシャルル・ド・ゴールが、オラドゥール村を再建せずに遺構として残すことを決定。村は現在も廃墟同然の状態で保存され、哀しい歴史を後世に伝えるべく観光客を受け入れています。
