俺、東京に行くことになったけん。夢を追いかける大人の「上京物語」

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2020/04/11

立ち止まって原点にもどる場所「ゼロキロポスト」

image by:徳永秀一郎

ドームレリーフの次に東京駅でおすすめしたいのが、「ゼロキロポスト」です。ゼロキロポストとは、鉄道の起点のこと。

この東京駅のゼロキロポストに向かう電車を「上り(のぼり)」、ゼロキロポストから離れていく電車を「下り(くだり)」といいます。ゼロキロポストは全国各地からの目標地点であり、全国各地へのスタート地点、つまり「原点」です。

私は故郷が九州ですので、東海道新幹線のホームのゼロキロポストに思い入れがあります。ここを目指してやってきましたし、この線路が故郷へと繋がっています。そして東京での生活のなかで孤独を感じたり、悩みが生じたりしたときには、少しだけ時間を取ってここへ来て故郷へ思いを馳せることも。

image by:徳永秀一郎

それと同時に原点を思い出します。つまり「なぜこれほどまでに東京に来たいと思っていたのか?」ということです。初めて東京に行きたいと思ったのは私が中学生のときでした。当時は単純な憧れだったのですが、中学生のころに「月9」という言葉が出だした時期と重なります。

月9、つまり月曜日の午後9時に放送されるテレビドラマは、とてもオシャレな人たちが、オシャレなライフスタイルを体現する世界があることを私たちに教えてくれました。そしてその舞台は大抵「東京」でした。

田舎の中学生の王道を走っていた私は、なんとなくのイメージで東京に憧れ、暇をみつけては社会科の地図帳を開いて、東京23 区の場所と名前を覚えるというような遊びをする日々。

しかし大人になり、自分の人生というドラマの舞台は東京ではなく、東京への道を切り開くためにまずは地元の北九州で頑張ってお金を貯めるというところから始まることになりました。

27歳のときに不動産という仕事をすると決め、私がいますぐ東京に行けないのであれば、逆に東京に負けない新しいオシャレなテナントを福岡に誘致しようと頑張ってみました。そこで海外で頑張っている店舗に福岡で出店しませんかと、つたない英語で交渉に行ってみました。

ところが「福岡?知らない。でも東京になら行きたい」と英語で異口同音にいわれました。とても悔しかったのを覚えています。


福岡もとても魅力的な街です。東京よりも家賃は安く、オシャレな感性の持ち主も数多くいる、それを理解しようともせずに「東京」といわれたのが悔しかったのです。しかしビジネスは理屈のようで理屈ではない部分もあります。

例えば、東京都心部の物件では周辺人口に対して競合が5.6倍と多いですが福岡の中心部ではそれが2.3倍に抑えられており、飲食物の販売単価は変わらないのに家賃や人件費は東京より約3割ほど安く抑えられます。

このように筋の通った理屈ではなく、単に「東京に店舗がある(赤字であろうと)」という事実がビジネス上の重要な戦略だったりするわけです。

それを理解してからは、それであればまずはお望み通り東京に来てもらって、そこで日本という市場の良さを体感してもらい、そこから全国へご案内していくのが良いのではないだろうかと思いなおすようにしました。

そのためにはまずはなんとかして自分が東京に出て、東京の不動産を肌で体感して「東京いかがですか?素晴らしい都市でしょう?でも実は地方も良いですよ。なぜなら~」という自分自身の言葉に説得力をつけたい、そう考えました。

地方ではまた逆に、地方では競争の激しい東京とは違う厳しさがあります。パイが少ない分、少しでも手を抜けばすぐに潰れてしまうのです。地方の「こんなところに?」という場所に名店といわれるお店が多いのはそういった理由があります。

仕事をしているなかで、日本全国や世界に通じる類まれな技術やサービスをもつ人にたくさん出会い、そういう人たちが地方に埋もれたままになってしまうのはとてももったいないと感じるようになりました。

そういう人たちも東京を経由すれば、全国から来た人や世界から来た人に注目されて、その人たちを通じて「地方の宝」から「日本の宝」や「世界の宝」になっていく力が十分あると信じています。

そのためにもまず私自身が東京に出て、地方にはこんなに素晴らしい宝がありますよという発信を不動産を通してやりたいと思ったのです。それが私の原点、つまりゼロキロポストです。

image by:徳永秀一郎

いざというときには、ここからいつでも地元へ帰ることができます。また家族や友人に、ここへ来てもらうこともできます。そう考えると、寂しさは薄らいでいきます。

いつでも帰ることができるのだから、今はもう少しだけ頑張ろう。地元の友人やライバルはこの線路の先できっと頑張っているのだから、自分はここ東京でもっと頑張ろう。このゼロキロポストはそのように思わせてくれる場所です。

そして改めて自分が東京へやってきた夢と目標を思い出し、決意を新たにゼロキロポストに背を向け、再び前を向いて進み始めるようにしています。

image by:徳永秀一郎

ゼロキロポストは各地へ向かう各路線の駅のホームや線路近くの至るところで見つけることができます。

基本的に改札のなかにありますが、電車や新幹線に乗る用事がないときでも140円の入場券を改札横の券売機で購入して入場することができます。またゼロキロポストは大抵、ホームの中ほどにあります。

東京駅には、あなたの故郷と繋がるゼロキロポストがあることと思いますので、ぜひそれを見つけ出し、孤独を感じたり困難に直面したりしたときには少しだけ時間を取って「原点」を訪れてみてください。

なんのために東京に出てきたのか、東京に出てきたいと思った時の気持ち。まさにそこからがスタートかもしれませんよ。

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