えいたそ、ありがとう。引きこもりだった私が「でんぱ組.inc」に出会って全国制覇までした話
彼女に会ったら、なにかが変わるかも
数日経っても、ショーに出ていた女の子たちが頭から離れない。奇抜な衣装が気になるのか、オタたちの勢いに圧倒されたのか…自分でも真意はわからなかったが、興味のままにライブ動画を漁りながらその気持ちを確かめていた。
彼女たちは「でんぱ組.inc」というらしい。
超絶早口の電波ソングからエッジの効いたロックナンバーに渋谷系、実にバラエティに富んだ楽曲に、寸劇のような振り付けもおもしろい。しかもメンバーそれぞれなにかのオタクというのもキャラクターが立っている。
正統派アイドルの王道ではないが、それぞれがアイデンティティを貫く強さに、また一気に引き込まれてしまった。
とくに目を引いたのは、「黄色」いメンバーカラーの成瀬瑛美ちゃん。通称「えいたそ」。
2次元から飛び出してきたようなアニメ声の彼女は、元気すぎて圧倒されるほど。グループのなかでも群を抜く歌唱力で、強すぎる個性を放っていた。
でも、人見知りな自分からすれば、彼女のような明るいムードメーカーはもっとも苦手なタイプ。
ましてやそんな子がアイドルをしていたら、周りから好かれてちやほやされて「人生イージーモードでやってきたんだろ」と、ひねくれた自分が顔を出すのだ。
だが、彼女は違った。
何もしなくてももてはやされるような、かわいさだけをクローズアップされた”アイドル”とはひと味もふた味も違う。自分と同じように絵を描くことが好きで、アニメも漫画も好きな彼女は、大学時代に引きこもりだったこともあるという。
第一印象では突き抜けたキャラクターのように見えるが、実は空気を読んで振る舞っているかのような繊細さもあり、周りを気遣い常に明るく場を盛り上げる姿は、まさに現代のナイチンゲール。
太陽のような暖かさに、画面越しでも凍りきったわたしの心がどんどん溶かされていくのがわかった。
「この子に会ってみたい」
人付き合いが苦手で、学生時代を引きこもって過ごした私が、はじめて人に会いたいと感じた瞬間だった。
彼女に会ったら、話したら、自分になにか変化が起きるかもしれない。そう思ったわたしは、次のチェキ撮影の日を楽しみにカウントダウンを進めるのだった。