えいたそ、ありがとう。引きこもりだった私が「でんぱ組.inc」に出会って全国制覇までした話
緊張する初対面への足取り
チェキ撮影の当日。午前中でバイトを切り上げ、会場へと向かう足取りは緊張しきっていた。
うまく話せなくても写真写りが悪くてもいいから、とにかく存在を確かめにいこう。あんなにいい子なのは画面の中だけかもしれないし、実際に会ったらそうでもないかもしれないよな。
雨降りの屋外で2時間並ぶも、心はまったく休まらない。
会ったときのことを頭のなかで何度もシミュレーションしながら、時がくるのを待つ。
「会いたいけど寒いし緊張してきたし、すでに帰りたくなってきた…」
周りのオタクたちは何を余裕ぶってんだよ。全員古参なのか?えいたそに何度も会ったことがあるのか?きっとすでに認知されていて、名前を呼んでもらえたりするんだろうな。いいなあ。あーーー緊張してきた。やっぱりくるのやめておけばよかっ……
「わあ〜〜〜!よろしくお願いしま〜〜す☆」
えいたそだ!!!!!!!!
チェキのブースはハルカカナタ先なのに、何メートルも離れた私のところまで声が聞こえてくる。ほかの子の声はまだ聞こえないけど、やっぱりえいたその声量は半端ないなあ…。
彼女が入ってくると同時に、色めき立つ周りのオタクたち。
さっきまで黙々とスマホをいじっていた人たちが「きょうも元気だね〜」「声かわいい…」と笑顔になっている。こんな離れたところの人の空気まで一瞬で変えるなんて、やはり彼女は太陽神かなにかなのかな。
「アイドル」の権化
えいたそがそこにいる。緊張で震えるなか前の人の撮影が終わるのを待ち、スタッフに促されるがままに彼女の元へ。
「わ〜〜〜!こんにちは〜〜☆」
こちらに気がつくと、えいたそは語尾に”星”がついているような、弾けた笑顔で話しかけてくれた。
続けて「パーカーおしゃれに着てくれてありがとうねぇ」と、グッズの着こなしまで褒められる。好きな子が自分を肯定してくれているこの世は現実か?
チェキにはとっさのできごとに「あ、いえ、はは…」とニヤけた自分が写っていた。
初接触は一瞬にして終わってしまった。だけどみんなが彼女を好きになるのがわかった。些細なことを気にかけて、褒めてくれる。相手を否定せずに認めてくれる。押しつけもせず、「自分は自分」でいいんだと思わせてくれる包容力がある。
そうだ、本来「アイドル」とは「偶像」の意。神仏のように誇り高い、尊い存在こそ真のアイドルなのだ。