湯に、宿に癒される。冬季は幻となる乳頭温泉郷の秘湯「黒湯温泉」
雰囲気抜群の混浴露天を堪能
「黒湯温泉」には「上の湯」と「下の湯」と呼ばれる2つの源泉があります。どちらも酸性の単純硫黄温泉で、若干酸性度が高い「上の湯」がこの宿のシンボルとなっている混浴露天。
柱や柵にも自然のままの形をした木や枝を使った杉皮葺きの東屋は鄙(ひな)びた温泉情緒にあふれ、東屋の先に広がる山の翠に溶け込む素朴な湯屋の雰囲気は、完璧な一枚の絵のよう。
露天というより野天と呼ぶのが相応しく、森の中に置かれた桃源郷ともいえます。
露天の手前には内湯もあり、こちらもまたいぶし銀のようなレトロ可愛さ。どこをどう切り取ってもいい塩梅に絵として完成してしまう佇まいはさすがとしか言いようがありません。
露天へと続く内湯も同じく混浴なので、混雑時においては女性はタイミングを見図れるかが勝敗となりそうです。
温泉場はもちろんその文化に至るまで昔ながらのスタイルを継承する「黒湯温泉」では湯浴み着の着用が禁止なので、男性客が多くて寛げそうもないという時は、宿泊客のみ利用可能な「上の湯」を引いた男女別の内湯を利用するといいでしょう。
また、「上の湯」よりも若干中性よりの「下の湯」の湯小屋は男女別に作られています。静かにゆっくり湯浴みを楽しみたいならこちらの方が落ち着くかもしれません。
私が宿泊した時は、圧倒的に男性客の方が多かったので「上の湯」の混浴は素通りで済ませました。「下の湯」の女湯は常にガラガラだったので、広い露天をほとんど貸し切りで楽しむ方を選択。
フォトジェニックさでは「上の湯」には負けますが、ゆっくりと星空を眺めながら長湯を決め込むなら、気兼ねなく湯につかったり涼んだりできる「下の湯」の方がおすすめです。
また、「上の湯」「下の湯」ともに打たせ湯があるのも「黒湯温泉」の特徴で、半ば野天とも呼べる空間でフレッシュな温泉を頭から浴び、肩や背中に飛沫を受ける開放感といったら!
はるばる乳頭の山奥で味わえる自然のエネルギーとの一体感。これこそ夏の温泉の醍醐味です。