女性の自転車姿が卑猥だった?100年前までは非常識だった現代の日本の常識

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2023/06/07

なぜか女性が乗れなかった「自転車」

「マダム・バタフライ」と称された三浦環氏(1917年)image by:No known restrictions on publication., Public domain, via Wikimedia Commons

自転車」には普段、どれくらい乗りますか?

子どものころに乗っていたという方、日常の移動の手段にいまでもしている方など、現代人の暮らしに深く根差した交通手段が自転車だと思います。

もちろん、男性が乗っても、女性が乗っても、大人が乗っても、子どもが乗っても、何も問題ありません。しかし、100年くらい前までは女性が乗ることのできない乗り物だったそう。考えられませんよね。

女性による自転車クラブ「女子嗜輪会」が誕生した時期は、1900(明治33)年。

クラブの一員にして後に、日本最初のオペラ歌手となる三浦環(みうらたまき)氏が、自宅から上野の音楽学校まで自転車で毎日通学していると、見物客が通学路に集まり、新聞が取り上げ、小説のモデルにもなるくらい、センセーショナルな出来事に見えたそうです。

明治時代に自転車通学する女学生。image by:東洋文化協会, Public domain, via Wikimedia Commons

明治の後半になると、一部、私立女子大学の体育の授業で女性の自転車練習がスタートしたり、国産自転車が増加し値段も下がる大正時代になると、自転車を運転する女性が増え始めました。

しかし、自転車に乗らないという時代はまだまだ続きます。自転車に乗る若い女性から違和感が消えた時期は、昭和に入ってからです。しかも、戦後の都会から。

例えば、第二次世界大戦前後の離島に就任した小学校の先生と子どもたちの関係を描いた木下恵介監督の映画『二十四の瞳』では、高峰秀子氏演じる女性教師が自転車に乗っていたために、島民から反感を買うシーンが見られます。

『二十四の瞳』image by:(c)1954 松竹大船 / Shochiku Ofuna Studio / Shochiku Co., Ltd., Public domain, via Wikimedia Commons

どうして、自転車に女性は、乗ってはいけなかったのでしょうか。


孫引きの情報で恐縮ですが、1934(昭和9)年の『読売新聞』に、驚くべき主張が掲載されているそうです。

女性にとって自転車が好ましくない乗り物とされる理由として、自転車のサドルが女性の局部を刺激するため、結婚生活に悪影響を与えるとの考え方が存在したのだとか。

要するに、ちょっとみだらで下品に見えたわけです。その姿に、何かを感じる人もいれば、感情的には同じ根っこから、はしたないと感じる人もいました。

銀座通りを闊歩するモダンガール (1928年)image by:Kagayama Kyoyo, Public domain, via Wikimedia Commons

しかし、皮肉にも、第二次世界大戦で国家の「台所事情」が苦しくなると、自転車による郵便物の集配業務などが女性に解禁されます。

「女性の自転車=戦時下のナショナリズムに貢献する健全さ」と解釈されるようになったのですね。

戦後には、自転車に乗る女性に対する偏見が時代遅れとされるようになります。女性解放のイメージとその意識変革が結び付き、現代に至ります。

女性が自転車に乗れない時代があった、しかも、その時代は意外に、ちょっと前まで続いていたのですね。

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