「変人」は褒め言葉?誰でも参加できるユニークな「京大変人講座」

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2019/08/30

西に自然豊かな鴨川が流れ、東には銀閣寺などの観光名所が点在する、京都市左京区の京都大学。東大と並ぶ「日本の頭脳」であると共に、その自由な学風に惹かれて一風変わった研究者や個性的な学生が全国から集まってくることでも知られています。

その京都大学で、「京大変人講座」という、なんともキャッチーなタイトルの公開講座が行なわれているのをご存じですか?いったいどんな講義が行なわれているのでしょうか?今回は、「京大変人講座」についてご紹介していきます!

思わず「え?それ何」と身を乗り出したくなる講座が目白押し!

京大のシンボル「時計台」

「京大変人講座」とは、いったいどんな講座なのでしょうか。まずは、公式HPをチェックして、これまで開かれた講座のタイトルをちょっとのぞき見してみると…

<第1回>
変人がいなければ、世の中は進歩しない。変人はイノベーションの素。変人の意義を京大が熱く語る!
【講師】神川龍馬先生(総合人間学部助教/生物学)

<第2回>
みんな、心の底で思ってた。でも、誰も言えなかった「安全・安心が人類を滅ぼす」
【講師】那須耕介先生(人間・環境学研究科准教授/法哲学)

<第3回>
我々は酸素という毒の中で生きている…「地球史46億年の無計画」
【講師】小木曽哲先生(人間・環境学研究科教授/地球科学)

<第4回>
変人にも神はついている!「カオスの闇の八百万の神―無計画という最適解―」
【講師】酒井敏先生(人間・環境学研究科教授/流体力学)

<第5回>
素数ものさしのプロデューサーが語る不便益という発想「恋愛も不便じゃなけりゃ萌えない」
【講師】川上浩司先生(デザイン学ユニット教授)

<第6回>
なぜ鮨屋のおやじは怒っているのか?「サービスとは闘いである」
【講師】山内裕先生(経営管理大学准教授)


と、なんとも気になる講座ばかり。
「安全・安心が人類を滅ぼすってどういうこと?」
「酸素って『毒』なの?」
「そういえば鮨屋の親父は怒っているイメージあるけど、あれって狙ってしてるの?」
など、いろんな疑問が浮かんできます。公開講座のため、学生はもちろん、一般の受講もOK。他の公開講座ではあまり見られない若い世代の受講生も多いのが特徴だそう。今年4月には、これまでの講義内容をまとめた『京大変人講座』(三笠書房)が発刊され、話題となっています。

講座を企画した京大大学院教授の酒井敏先生に、「変人」についてもう少しお話を伺いました。

イノベーションは「無から有を生む」ものではないんです。

京大大学院教授の酒井先生

――先生、今日はよろしくお願いいたします。京都大学は「めちゃくちゃ賢い人が行く大学」と同時に、「変わった先生や学生が多くいる」というイメージを薄々は感じていたのですが、まさか当の京大の先生から「変人」という言葉を聞くとは思いませんでした。

先生は、「変人」という言葉と共に「京大的アホ」というさらに刺激的な言葉も著書『京大的アホがなぜ必要か カオスな世界の生存戦略』(集英社新書)の中で使われています。

酒井:私が京大の理学部に入学した時、当時の京大の先生からよく「アホなことせい」と言われていました。今から40年以上も前のことです。私も「しっかりと勉強して、世の中の役に立つ人間にならなくては」とまでは思っていませんでしたが、建前としては、マジメに勉強するのが大学生のあるべき道だと考えていました。

それだけに入学早々「アホなことせい」と言われた時は、正直面食らいましたね。最初は意味がわからず戸惑うしかありませんでした(笑)。でも、「アホ」というのは、「賢い」の反対語ではなく、「常識」や「マジメ」から反対にあるものということに気づいて、「アホ」に含まれる深い意味を実感するようになったんです。

身振り手振りを交えながら、「京大的アホ」について語る酒井先生

――先生のなかで「アホになる」という言葉は、どういう意味で捉えていますか?

酒井:「アホになる」というのは、「先入観にとらわれず新しいことに挑戦すること」。他人からすると「なんだかよくわからないことに夢中になっている人」ですよね。たとえば、携帯電話についているカメラ。「アホ」な技術者が面白いと思って作ったのでしょうが、発売した時は「なぜ携帯電話にカメラをつける必要があるのか?」と多くの人が首をかしげていました。

けれども、「アホ」な女子高生が「写メ」というブームを生み出し、徐々に携帯で撮影する人が増えてきて、スマートフォンの登場で一気に当たり前になった。そしてQRコードが誕生すると、世界の決済システムまで変えようとしている。

こんなこと、携帯にカメラをつけた技術者が考えていたはずがありませんよ(笑)。でも、それまで全く繋がりのなかったたくさんの「アホ」が繋がりを生んだとき、大きなイノベーションに変わったんだと私は考えています。

――なるほど。では、どうして「アホになる」ということが、京大では必要なのでしょうか?

酒井:先ほどの携帯カメラの例でもわかる通り、「アホになる」こととイノベーション生み出すことには大きな関係があります。イノベーションと聞くと「無から有を生み出す」とイメージされる方も多いですが、決してそんなことがないというのは先ほどのカメラつき携帯電話でおわかりだと思います。同時に、「マジメに何かに取り組めばイノベーションに繋がる」ということもないんです。

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