なぜ日本人は年齢を聞かないのか?ベトナム人が不安に思う日本への印象
日本に関心を持って訪日する旅行者が増えていますが、実際問題として日本人はどのように思われているのでしょうか。
今回は、ベトナム取材中に出会ったベトナム人に、「日本と日本人をどのように思うか」を会う人会う人に片っ端から聞いてみました。
とはいえ、サンプル数の少ない、偏った意見になっている可能性もあるので、その辺を頭に入れながら話半分で読んでみてくださいね。
なぜ別居の親との関係が淡泊なの?

最初は、日本滞在経験を持つ現地ガイドの方の意見です。日本人は、別居する自分の親との関係において、少し淡泊な印象があると言っていました。
もちろん「日本人」といってもグラデーションがあるはずです。親子関係が濃密な家族もたくさん存在するはず。現に、半数近くの人は別居の親と、週に1回の頻度で電話連絡などをしているデータもあります。
「便りが無いのはいい便り」といった言葉があると思えば、なかなかの頻度ではないでしょうか。別居する親を不安に感じている人も8割以上に達するとのデータもあります。
筆者の暮らす北陸のように、親の面倒を見るために故郷に帰ってくる人も存在する様子を見ると、日本人のほとんどが、親との関係が淡泊というわけではないのかもしれません。

しかし、ベトナム人の場合は、もう少し濃密な形で親との接触があるとの話です。例えば、離れて暮らしていても、月に3回くらいは会いに行くとの話がありました。
さらに、遠く離れた自分の親を見守るために、監視カメラを親の家に設置して、親の一挙手一投足を「スマホ」でチェックできるようにしている人も少なくないのだとか。
それだけ親が大切で、親孝行が人生の重要なテーマみたいです。やはり、儒教の影響をベトナムは強く受けているとの話。日本も同じと言えば同じですが、親子関係を大事にする意識は、ベトナム人の方が色濃く表れているみたいですね。
どうして初対面なのに年齢を隠すの?

日本人は初対面の人と話す時、お互いの年齢を直球では絶対に聞きません(よね?)。
欧米諸国のように、年齢を気にしないから聞かないのではなく、年齢を気にしすぎているからかえって聞けないみたいな状況でしょうか。特に、異性(女性)に対して年齢を質問する行為はなかなかハードルが高いはずです。

一方で、ベトナム人は、年齢に関する質問を早々に直球でします。日本では、考えられないと思いますが、年齢を聞かないと逆に失礼にあたるのだとか。
その理由は、年齢の上下によって相手の呼び方が変わるからです。「〇〇さん」のような便利な言葉がベトナム語にはなく、人称代名詞が年齢の上下・性別で毎回変わるため、相手の年齢を知らないと相手を呼べなくなってしまうそう。
明らかに見た目で、年齢の違いがはっきり分かる場合は別ですが、微妙な感じの時は必ず聞くみたいです。現に筆者もベトナム取材中に、同年齢ぐらいの女性にインタビューしていて、ほどなく年齢を聞かれました。
それまでは、なんだかビジネスライクだった応対も、私の方が何歳か上だと分かると急にリラックスして「私のお兄さん」と親し気な雰囲気に切り替わりました。年齢が分からずに、困っていたのかもしれませんね。
裏表の顔がある日本人に衝撃

多くのベトナム人が口にした日本人の印象は、日本人の裏表の激しさです。本音と建て前を分ける日本人は確かに多いですよね。
現に、本音を表明しない頻度の高さを国際比較した上で日本人の裏表の激しさを確認した研究もあります。この裏表の使い分けが、ベトナム人にはやはり理解できないみたいです。
例えば、日本の会社で働いた経験のあるベトナム人の方の話。会社でニコニコ話してくれる会社のメンバーと、プライベートの買い物中にばったり会ったそうです。
「〇〇さーん!」と手を振りながら、日本人の仲間にベトナム人が話し掛けたところ、冷たい感じであしらわれたそう。しかし、翌日会社で会うと、いつものように親し気に接してくれたので混乱したのだとか。

他にも、当たり障りなく普段は上司と接しているのに、お酒が入ると文句ばかり言う日本人だとか、グループディスカッションでは賛成の雰囲気だったのに、個別に話すと本当は反対だったと明かす日本人だとか。
皆の前では美味しいと言って食べた料理を、よくよく聞くと実は好きではなかった日本人の話も出てきました。読みながら「私かも」と、ギクッとした日本人もいるのではないでしょうか。
キン族(越人)が約86%と国民の大半を占めながら、53の少数民族が存在し、地続きで国境を接する隣国から国境を越えて人の出入りがあるベトナムの場合、直球でものを言わないと双方に理解ができないそうです。
感情を表に出さず、本音をなかなか口にしない日本人の性格はやはり、理解が難しいみたいですね。
日本人は「神様」を食べている?!

クジラの肉を普段、食べますか?日本捕鯨協会の調査を見る限り、多くの日本人にとって食べる頻度は減っている様子。「クジラの肉ってまだ、食べていいの?」と感じる若い人も多いのだとか。
しかし、クジラの肉に対する興味そのものは高いみたいです。和歌山や長崎など、地域によっては、クジラ肉に親しんでいる土地も存在します。
国際捕鯨委員会(IWC)を2019年(平成31年・令和元年)に日本が脱退し、商業捕鯨を再開したニュースを覚えている人もいるかもしれません。
要するに、日本ではまだ、クジラは食べる生き物なのですね。しかし、このクジラを食べる文化は、ベトナム人にとって衝撃的らしいです。
絶滅の恐れ、捕殺方法の残酷さなど、世界的な捕鯨反対運動とはまた異なる意味で衝撃的に感じるそう。ベトナム人にとってクジラは神様。言い換えると日本人は、自分たちの神様を食べているように見えるのですね。

どうして、ベトナムではクジラは神様なのか。例えば、台風接近の海で漁船が大波にもまれていると、クジラがぴたりと船体に身を寄せ、転覆を防いでくれるそうです。
実際には、クジラも泳ぎ疲れ、船体に身を預けているだけかもしれないみたいですが、なんであれ、海上で嵐に遭った不安な人間の心には「人間を助けてくれる神様のような存在」に見えるらしいです。
大魚教という宗教もあり、クジラのお寺があって、クジラを神として祭るそうです。特に、ベトナム北部で根強い信仰みたいですから、日本に遊びに来たベトナム人には「クジラ食べる?」などと勧めない方がいいかもしれませんね。
以上、ベトナム人が感じる日本人の印象をいくつか紹介しました。他にもいろいろあって、夏でもお風呂に入る人たちだとか、むっつりスケベだとかの言葉も聞こえてきました。
今度ベトナムに行った時には、現地の人と話す時に、会話の糸口としてぜひ活用してみてくださいね。
- source:「捕鯨文化」を守り続けたい、自販機で販売・ふるさと納税返礼品にも…商業捕鯨再開4年 – 読売新聞/11月20日の「家族の日」に合わせ、「離れて暮らす親に関する意識調査」を実施 – ZDNET/本音を表明しない頻度調査一異文化理解のために – 前川智子/ベトナム社会主義共和国(Socialist Republic of Viet Nam)基礎データ – 外務省/全国1,200人に聞く「鯨食に関する意識調査」 – 日本捕鯨協会/海の神:ベトナムの漁師に伝わるクジラ信仰 – 新潮社/近年のベトナムにおけるベトナム儒教研究 – 今井昭夫
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