実はちゃんと意味があった!旅館で最初に出される「お菓子・梅干し」の役割
数日で行く旅には欠かせない宿選び。一日の疲れを癒す温泉やお食事は楽しみのひとつですよね。ちょっと奮発して贅沢なステイを求めるかたも多くいることでしょう。
日本の宿では、多種多様なおもてなしを受けられることでも海外からの人気を誇っていますが、そのひとつである「宿のお着きの菓子」には大きな意味を持っているのはご存じですか?今回は、旅の思い出や人気のお菓子と共にご紹介します。
※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウイルスの国内・各都道府県情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。
「宿のお着きの菓子」には大切な意味が?
まずは、いらっしゃいませ、と妙齢の女将に笑顔で迎えられて、一夜の宿に到着。仲居さんの案内で客室に通され、ふかふか座布団にどかっと腰を下ろします。
しかるのち、仲居さんが入れてくれた緑茶を一服。ふうと一息入れて、口をつくのは「やれやれ」です。見事にオッサンだな。
同行のカミさんを見ると、テーブルの上のお盆に載ったお着きの菓子に興味津々。僕は大酒飲みで甘いものにはそれほど興味はないのですが、人によってはこういうときに甘いものがないと寂しいものらしいですね。
ちなみに我がカミさんが過去に最も感激したお着きの菓子は、下諏訪温泉の桔梗屋さんで出てきた女将さん手作りの「花梨の砂糖煮」。売店の饅頭の宣伝とはレベルが違います。 お着きの菓子とは、かように宿の格を表現するものです。
それだけではありません。実はこのお茶とお菓子、温泉に入るための準備運動的な意味も持ち合わせているのです。ご存じでしたか?
このお着きの菓子とお茶を、いついただくのが良いのか、という議論もあるようですが、有体にいえば、入浴前にいただくのが良いです。
極端な空腹で入浴すると、貧血に陥りやすいほか、糖尿病の薬を飲んでいるような人は、低血糖の発作にもつながる可能性があるといわれているから。
温泉入浴によるカロリー消費は案外に大きく、42度の湯に10分入浴すると、ウオーキングを10分したのと同程度のカロリーを消費するといわれています。そこで、お着きの菓子程度の糖分を含んだものを食べるといいわけです。
お茶を飲むのは入浴前の水分補給になるほか、ビタミンCを含んでいるので、湯あたりを防ぐ効果もあるのだそう。さらに一説によると入浴前にお茶を飲むと、カテキンの吸収力が7倍くらいになるとか。
そんなわけで、お着きのお菓子とお茶には立派な意味があるのです。
話は変わって、最近はそれほどでもないのですが、いまだに宿のお着きのお菓子と共にしばしば添えられているのが「種なし梅」。
これにも意味があります。梅干しのクエン酸には疲労回復効果や食欲増進効果があり、旅の疲れも癒やされる上、夕食への期待も高まります。
この商品「まろやか干し梅」というのが正式名称で、山梨県の「ハッピーカンパニー」という会社の看板商品です。
物書きのサガとして、なぜにこんなにポピュラーになったのか、同社の広報部に電話をして聞いてみると、そもそも江戸時代以前はお菓子などがなく、旅人が宿に着くと梅干しを提供していたことから着想して商品化したとのこと。
最初に取り入れたのは山梨県石和温泉の宿数軒だったそうですが、いまや北海道から沖縄石垣島まで直取引している宿があるそうです。
直取引だけでも2,000軒以上、問屋を介した宿を入れると4,000軒以上もあるとのこと。しかも、この商品だけで年商25億円以上あるそうです。
いやはや驚きました。商品は「種なし梅」だけれども、旅先の自慢話の「タネ」になること必至だろうと思います。なんていったって25億円。お着きのお菓子、侮りがたし。
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