歴史的建造物で日帰り温泉?昭和の粋がつまった伊東の名旅館「東海館」

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2023/08/16

古きよき時代のものに心を動かされるという方、タイムスリップのような体験がしたい方におすすめの隠れた名所が静岡県伊東市にある「東海館」です。

伊東市の指定文化財にも登録されている旧旅館は趣たっぷりで和風建築の美しさを凝縮した佇まい。今回は伊豆半島への旅行でぜひ訪れるべく魅力に迫ってみましょう。

かつては温泉旅館として賑わった「東海館」

image by:石黒まり花

東海館は昭和3年、東海道線が熱海まで繋がると同時に温泉宿として開館しました。木造3階建の和風建築は伊東温泉の中心街にあるので、観光途中に目にしたことのある方も多いでしょう。

伊東市内で材木商を営んでいた稲葉安太郎が創業者で、開館した後は湯治客、団体客問わず多くの人が訪れ賑わいました。

材木商が創業者ということも影響し、東海館には珍しい材木を使った飾りや流木を使った置き物など建物だけでなく中もすべて木で作られています。

温泉旅館として昭和を駆け抜け平成9年に閉館した後、伊東市に寄贈され平成13年には現在のような観光施設となりました。

広々とした館内にはなにがある?

image by:石黒まり花

昭和初期、高度経済成長期、バブル期と時代を超えて愛された名旅館である東海館。何度か増築を経て、現在残されているのは地上3階建て、一部は5階建てとなっている和風建築です。

日本中が元気だった時代、熱海の人気もピークを迎え伊東市にも多くの観光客が訪れました。団体客も個人客ももてなした東海館はとても広く立派な作り。いわゆるバブリーな作りではなくシックでかっこいい和風の佇まいなので、観光地化されるのも納得です。

現在の東海館は館内を自由に見学することができ、営業当時を思い起こさせる展示品に加え、客間や大広間などを見ることができます。


かつてこの場で多くの人がしっとりと温泉を楽しんだり、宴会で盛り上がったりしたのだろうなと思うと少し感傷的にもなってしまいますよ。

見学のための入場料は200円となっています。こんな低価格で歴史ある和風建築を自由に見学できるなんて嬉しいですよね。

3人の棟梁それぞれが想いを込めた館内は隅々までが芸術品

image by:石黒まり花

和風建築特有の唐破風の美しい玄関を抜けると昭和の温泉宿を思い起こさせる赤い絨毯が敷いてあり、その先に受付があります。受付で見学料を支払い、昭和の旅館へと足を踏み入れましょう。

3階建ての東海館の建築を担ったのは3人の棟梁。1人1フロアずつ担当を持ち、腕をかけて客間や手すりを作り上げて行ったのだとか。

廊下の飾り窓、美しい木彫りの欄間、書院障子など細部にまで気を配られた美しさで、棟梁たちが苦心して東海館の建築を進めていったことが伺えます。

3人で1つではなく1人に1フロアが任されたことで、競合しながら建築を進めていったに違いありません。和風建築の美しさがぎゅっと凝縮された廊下、客間、大広間は必見です。


2階には伊東の歴史を知る展示が勢ぞろい

2階は客室に加え、テーマごとの展示室となっており伊東市の歴史縁ある人物の展示を見ることができます。

展示室には徳川家康に仕えたイングランド人で、日本で初めて西洋式の帆船を建造した三浦按針(ウィリアム・アダムス)や伊東に別荘を持っていた東郷平八郎、伊豆国伊東と呼ばれていた時代の豪族、伊東祐親などの資料が展示されています。伊東祐親は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にも登場していましたね。

海から近い伊東市は初めて西洋式の船が作られた街ということもあり、三浦按針の展示室には船の模型や地球儀などが並べられています。伊東市の歴史を知るのにもとてもおすすめですよ。

3階は芸妓さんの宴会で盛り上がった大広間

image by:Shutterstock.com

展示を楽しんだ後は3階へ。3階は120畳の大広間があり、もちろんこちらも見学可能です。大広間は特に力を入れて作られたとされており、一段上がった舞台などもあります。

かつてはこの大広間で芸妓さんを呼んでの宴会が開かれていたのだとか。広い畳での大宴会、さぞかし盛り上がったことでしょう。

現在はこの広間を利用して、伊東観光協会主催のお座敷文化大学などが不定期で開催されています。お隣の部屋には芸妓さんのマネキン人形も飾られていて、当時の様子をイメージすることができますよ。

4階は伊東市を見渡せる望楼!

image by:石黒まり花

3階までで見ごたえは十分ですが、4階には望楼があるのでお忘れなく。階段を登った先にあるのは伊東市を一望できる望楼です。

この望楼は昭和40年代に増築されたものなのだとか。現在は一度に登れる人数が10人までと制限されているので気をつけましょう。

今でも温泉街を一望できる眺めのよさですが、昔はもっと遠くまで見渡せたのだそうです。特に晴れた日には心地のいい風が吹き込みとても気持ちよく時間が過ごせます。

広い館内を見て回ったら喫茶室でひとやすみ

image by:photoAC

抜群の雰囲気を味わえる東海館。1階には軽食や飲み物がいただける喫茶室もあるので、ひとやすみして行きましょう。受付で注文を済ませるスタイルなので注意してくださいね。

喫茶室はとても広く、畳の席と縁側のソファ席が用意されています。畳でリラックスするのもいいですし、日当たりのよい縁側で松川を眺めながら甘いものをいただくにもいいですね。席選びから迷ってしまいそうです。

メニューは伊東市の特産品、ぐり茶と和菓子のセットや昔懐かしい緑色のレトロなクリームソーダ、わらび餅など小腹にちょうどよい物からお蕎麦やうどんなども用意されています。


人気映画のモチーフにも。土日祝日は日帰り温泉の利用が可能

旅館としての営業は行っていない東海館ですが、土日祝日限定日帰り温泉が利用できます。実はこの温泉、大人気漫画「テルマエ・ロマエ」に登場する温泉宿のモチーフにもなっているんですよ。

昭和時代のレトロな温泉は、扉を開けたら湯けむりが全身を包みます。タイル張りのレトロな温泉は少し温めの優しいお湯で、ついつい長湯してしまいますよ。

文化財の中で温泉に入れるなんてとても贅沢ですよね。時間帯によって男湯と女湯が入れ替わるので、両方とも入浴してみるのもいいですね。

東海館でのんびり過ごそう

今回は伊東市の文化財「東海館」をご紹介しました。昭和時代から時を止めたような和風建築は見応え抜群。温泉あり、喫茶ありとゆっくり時間を使いたい場所です。東海館へ足を運んで、昭和レトロを思い切り体験してみませんか?

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元々インドア派だったはずが『恋する惑星』でウォン・カーウァイにハマり、初めての一人旅は上海へ。カメラ片手にどこへでも行くアクティブ旅女子になりました。現在は大学院に通いつつフリーライターとして、旅・アート・美容・ファッションをメインに活動しています。

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