きっかけは学校給食。三重県津市の名物になった巨大餃子「津ぎょうざ」
学校給食だった「津ぎょうざ」目当てに大行列
では最後の質問。はじめは学校給食の献立だった津ぎょうざが、街のご当地グルメとなったいきさつを教えてください。
藤堂「津ぎょうざは津市民にとっては当たり前の存在でした。ところが他県出身の方が(現在は津ぎょうざ小学校のメンバー)『津の学校給食には津ぎょうざというとてもジャンボな餃子が出て、それが子供たちの人気No1メニューなのだ』という話を給食調理員さんからたまたま教えてもらい、『そんな大きくて、ユニークな餃子は日本中探してもないよ』と言ったんです。それを聞いて、今度は我々のほうが『そうか、津ぎょうざは珍しいものだったんだ』と気づかされました。『だったらお祭りの日に試験的に販売してみたらおもしろいんじゃないか』と思い立ち、2008年10月、県下最大級の『津まつり』に出展したところ、大行列。2日間で400個が完売したんです」
学校給食だった津ぎょうざはお祭りで一般販売され、かつて小学生だったお客さんたちが懐かしさもあって押し寄せたのだとか。そして「改めて食べたら、めっちゃおいしい!」と、ノスタルジーを越えてグルメとして再評価され、こうして街のシンボルとあいなったのです。
2016年「東海・北陸B1グランプリin坂井」では遂に栄えあるゴールドグランプリを受賞。津ぎょうざの皮のなかには30年を超える、小学生が立派に成人するまでのドラマが包み込まれていたのですね。
人気の秘密は練りこまれたラーメンの醤油だれ
では、独断で選ぶ「おすすめ津ぎょうざ」を紹介します。まずは自家製手もみ麺で人気の「ラーメン いたろう」の津ぎょうざ(1個300円 税込)。お客さんのほとんどが注文するという人気メニュー。週末は他府県からもわざわざ食べにやってくるのだとか。
店主の森正章さん曰く、
森「皮は厚めの特注品で食べごたえがあります。そしてラーメン屋ですので具にはラーメンのスープと“かえし”(醤油だれ)を練りこんでいます。ほか、干しエビの風味を効かせ、豚の背脂でコクを増しています」
運ばれてきた揚げたてを見てみると改めて「津ぎょうざって……デケーな」と目を見張ります。では、いただきます……これは、ぅぅうまい! がぶりとかじれば小籠包さながらにアツアツの肉汁とラーメンスープが溢れ出て、さらにエビの香りがふわっと舞い踊り、ひとつの餃子で多彩な楽しみがあるのです。
ラーメン いたろう
三重県津市丸之内4-20
059-223-1600
11:30〜14:00 17:30〜20:30 LO(売り切れ次第閉店あり)
定休日 日曜夜 月曜
公式HP
ちゃんこスープをかけて食べる相撲部屋の味
続いては、元大島部屋のちゃんこを継いでいる「金鍋 本店」。厨房スタッフも元関取という本格力士料理のお店です。女将の平松佐智恵さんは先代旭國がまだ幕下だった17歳の頃から50年以上のおつきあいがあるという筋金入りの相撲好き。
こちらの名物は「津ぎょうざ茶漬け」。餃子の中身は、ごまの混ぜごはん。鶏ガラでだしをとったソップ炊きのスープをかけていただきます。これでお値段300円(税込)はコスパ良すぎでは。
平松「大島部屋に伝わるちゃんこスープのおいしさをまず知ってもらおうと、あえて安価に設定しています。ごまを和えたごはんを詰めているのは、ごまはちゃんこに欠かせないものだから」
アツアツのちゃんこスープを注ぎ、海苔とネギで香りよく仕上げた逸品。揚げた皮がスープにほろほろとほどけ、ワンタンのような役目を果たします。しじみじ、うまい。誰しも軍配をあげる絶品です。
金鍋 本店
三重県津市南丸之内9-43
059-224-0075
11:30~14:00(LO13:30)*ライチタイム営業は不定
17:00~22:00(LO21:00)
定休日 火曜日(臨時休業あり)
店によってさまざまな創意工夫がなされ、冴えたアイデアを内包した津ぎょうざ。とても知的な食べ物だと感じました。発祥が小学校であることも、なるほどうなずけます。皆さんも全店コンプリートを目指してみてはいかがでしょう。きっと気分がアゲアゲになりますよ。
写真・文/吉村智樹