外国人観光客はビッグデータで取り込め。観光予報プラットフォーム、スタート
どんな風に活用できるのか?実例をもとにご紹介します
「観光予報プラットフォーム」が未来の「観光」のカタチを変える可能性を秘めたツールということはわかりましたが、具体的にはどのように活用することができるのでしょうか?
2017年に第1回「観光予報プラットフォーム活用コンテスト」が開催されました。見事コンテストで受賞した実例をみながら、いくつかご紹介してみたいと思います。
活用例その1:来客数予測により、残飯が減らせて、鮮度もアップ!
大賞・事業者部門賞を受賞した三重県伊勢市の有限会社ゑびや・株式会社ROXでは、観光予報プラットフォームの情報も含めた様々なデータを融合し、有限会社ゑびや(以下、ゑびや)の経営するゑびや大食堂の来客数を予測する機械学習のアルゴリズム開発に取り組んだそうです。
翌日の来客数を予測することで、翌日の仕込み、お米の炊飯量など、事前に準備する食材の量を調節し、残飯数の低減に成功する等の定量的な経営的メリットを得ることができたそうです。
更に、日別の来客予測を元に、時間帯別入店数や商品別販売個数予測を行うことで、鮮魚の斬り付けのタイミングや調理タイミングをコントロールして、より高鮮度で出来たての料理を素早く提供することにも成功したそうです。
仕込み食料の最適化は、どの地域の飲食店も必須の課題。今後の活用に期待が高まります。
活用例その2:実際の外国人旅行者の動向をふまえたインバウンド促進策を展開!
地域部門賞に輝いた神奈川県湯河原町では、ここ数年増加している外国人旅行者に対するインバウンドをさらに促進するために、「観光予報プラットフォーム」を活用し、諸外国への戦略的プロモーションを実施しています。
例えば、近年利用が増加していたタイをターゲットとして、ブログや SNS を活用した情報発信(ブロガーやインフルエンサーを招へいし、 タイの情報サイトに温泉の紹介と割引キャンペーン情報を掲載するなど)を行ったそうです。
このほかにも、周辺観光地域の宿泊状況を鑑み適正宿泊料金を設定したり、花火大会の実施最適日を検討するなど、これまで勘に頼っていたマーケティングを科学的エビデンスに基づき実施しているそうです。
実際の統計値に基づいた予測結果を用いて、インバウンド対応などに活用することで、より確実な観光戦略を促進できているのではないでしょうか。
活用例その3:夏フェスなどの「音楽ライブ」のスタッフ宿泊不足を解消!
フジロック、サマーソニック、ロック・イン・ジャパンといった大型フェスは、数日にわたり開催することや、最近では海外からの参加者も見られ、動員数が合計で10万人を越える大規模公演となっています。また、全国で行われている音楽ライブは、スタジアムやドーム等の公演も数万人規模を動員、さらに地方公演も増えています。
このような音楽ライブを開催するには、そのぶんスタッフも大勢が必要となってきます。実は、スタッフ用にライブ会場周辺のホテルを確保することが難しく、ライブ関係者にとって今、宿泊不足が深刻な問題となっているそうです。
そんな中、事業者部門 特別賞を受賞した株式会社 oricon ME(東京都)では、「音楽ライブ」と「旅行」という2つの視点で分析を行い、大型フェスやライブの会場と周辺観光エリアとの関わりや、地域の祭りなどイベントと、音楽ライブの会場の関わりを分析することなどにより、スタッフの宿泊不足の解消に取り組んでいるそうです。
また、観光の「ハイシーズン」の値と宿泊予測値を比較して、大型音楽ライブの来場者と観光客の影響を探る分析も行っています。
今後は、多くの若者や外国人をはじめ長期滞在が見込めるミュージックツーリズムとしての可能性、地域との連携の可能性、さらには他業界との連携の可能性が広がるきっかけになればと期待されています。
観光予報プラットフォーム開発者コメント
最後に、観光予報プラットフォーム推進協議会の事務局を務める公益社団法人日本観光振興協会の担当者の方に、今後への期待をお伺いしました。
「人口減少・少子高齢化に直面する地域では、「観光」による地域活性化に期待が高まっています。真の魅⼒ある地域づくりをすすめる上でも、今後の訪⽇外国⼈旅⾏者数拡大に向けても、これまので勘や経験に頼らず、科学的な根拠に基づくデータによるマーケティング、マネジメントが不可⽋です。
今後も、観光振興等に取り組む様々な方に対して(地方自治体、地域の観光協会、観光関連事業者など)、観光事業に有用なマーケティング・データを提供し、利用してもらうことで、地域の戦略的な取り組みを⽀援したり、観光地域の活性化に役立てれば嬉しいです。」
「まちづくり」や「地域活性化」の視点でも期待が高まっている「観光」。このような先進的なツールが観光の現場に届き、誰でも簡単に使えるようになりました。この新たなツールによって、観光するお客さんにとっても、地域にとっても、「観光」が良いモノとなっていけばと思います。あなたのまちでもぜひ、利用してみてはいかがでしょうか?