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ロンドンで子育てをしてわかった、保育園の悩ましい問題

待機児童問題をはじめとして、子育てに関する問題が山積しているとされる我が国・日本ですが、福祉制度が進んでいるイメージがあるヨーロッパでも、親たちは子育てにおける金銭的・人手的負担に大いに頭を悩まされているようで……。無料メルマガ『出たっきり邦人【欧州編】』のライターでロンドン在住の藤隼人さんが、イギリスならではの育児の大変さを紹介しています。

ロンドンでの子育て

春になり草木が大きく育つように、我が家のお嬢もはや3歳半となりました。日々の成長を目を細くしながら見守っています。

どこでも子育ては大変ですが、その国独特の苦労さがあります。Nursery(ナースリー)と呼ばれる保育園が数多くある地域に住んでいるので、それほどどこに預けるかを悩まずに済んだのはいいのですが、それ以上に頭を悩ます問題があります。それは保育料金です。

相方の産休からの職場復帰を待って、お嬢は1歳半から保育園に行くようになりました。異なる環境に慣らすため全日ではなく半日で始めるにしても、共稼ぎの我が家ではとても成り立ちません。そのために住み込みのオーペアさんを雇い、保育園への送迎と子守りを頼まなければなりませんでした。

オーペア? シッター?

日本でも私立などでは高額な保育園もありますが、ロンドンでは料金がほぼ横並び全日預けようものなら1か月あたり20万円近くになります。半日でもその半分で、さらにオーペアさんの生活費も負担するため、1か月の支出はかなりになります。また、オーペアさんを受け入れるための部屋も必要なので、それなりに広い物件に住んでいる必要があります。

シッターさんはどうなのと疑問に感じる方もいるでしょう。こちらではシッターさんにもいくつかのカテゴリーがあり、ちゃんとした資格を持つ人から小遣い稼ぎにする人まで様々です。どちらにしろ時間給となるため、長時間頼むとそれだけ出費がかさみます。

我が家はお嬢一人なので何とかなりましたが、子供が多い家庭ではとてもではないですが保育料を負担するのも難しいため、どちらかが子供の世話をみることも珍しくありません。スイス人の友人はパートナーの女性の方が収入多く、そのため仕事を辞めて子育てに専念しました。

国の財政を圧迫する税控除

英国の税制は幅広く均等に課税する趣旨から、税控除も年収に応じて年間いくらあたりと決められています。これは伴侶がいるとか子供がいるとかもあまり関係なく、会社勤めで逃げ場のない中間層に重くのしかかるシステムとなっています。会社から福祉厚生を受けていようものなら、これも控除に加算されて全体の控除額が減る仕組みです。また子育てや住宅ローンなどに対する考慮も全くありません。

これとは対照的に、低所得者層は手厚く保護されていて、行政から補助金などをもらえるだけでなく、子沢山の家庭で親が働きに出られない場合は行政がほぼ面倒を見てくれるシステムになっています。


英国の福祉制度はかつて「ゆりかごから墓場まで」と揶揄され、もうなくなったように思われていますが、まだまだこうした形で健在しており、財政を圧迫する要因となっています。以前より厳しくなったようですが、負担する側としてはまだまだという感じです。


3歳からようやく補助金、でも……

子供も3歳になるとようやく国から補助金が出るようになります。これも収入より異なりますが、週当たり15時間まで無料扱いで、それ以上については個人負担になります。所得が少ない家庭はこれがさらに増えます。ただ、英国の新学期は9月から始まるため、9月に生まれた児童に関しては適用が翌年1月まで先延ばしになります。これも負担が増える要因なので悩ましいところです。

こうしてみると子育ての山場は3歳になるまでのように見えますが、子供は大きくなるまで保護者の監視下にあるべきという社会概念から、小学校を終えるぐらいまで、共稼ぎ家庭ではシッターさんが必要となります。親が自宅に戻るまで子供一人だけでは過ごすことが許されておらず、下手をすると福祉事務所が介入することもあり得ます。

英国の高等教育も以前は無料ですが、財政健全化の動きから有料化され、近年では1年間の学費は9000ポンドになりました。その後、学校によってはこれを引き上げてもよい制度になったので、これからさらに高くなるのは必至でしょう。

休みが多い保育園や学校

最後に付け加えておきたいのは、保育園や学校に行くようになっても休みが多く、これも親への負担となることです。通常の夏休み冬休み春休みだけでなく、3学期ある期間中でも中休みとして、それぞれ2週間ほどの休暇が設けられています。この時期はほとんど例外なく、子供がいる人たちは休みを取らなければならない状況に陥ります。またはシッターさんを雇ったり、キャンプに入れたり、または親戚の助けを求めたりという結果になります。

金銭と時間に余裕のある家庭は、間違いなくどこかに家族旅行というのもお決まりのパターン。子供たちはどこどこに行ったと自慢しあいます。うちのお嬢もどこに行ったと仲の良い友達に自慢気に語ったりするほどです。学校の休みに合わせて多くの家族が旅行に行くため、航空運賃やホテル代も値上がり。ただでさえ苦しい台所が火の車になること間違いなしです。

こうやって例を挙げればキリがないですが、どこの国でも子育てはそれなりの覚悟が必要であることは間違いないようです。

image by: Shutterstock.com

プロフィール:藤隼人
『街角の風景』連載。イギリス・ロンドン在住。米国に長年住んだあとに意を決して帰国したものの、ちょっとした縁からロンドンに移住。欧州の歴史や文化に惹かれた著者が、東西奔放し欧州の今を多角的な観点からお伝えします。 日本ではあまり知られていない音楽シーンなどもぜひ紹介していきたいと思います。現在、無料メルマガ「出たっきり邦人【欧州編】」のライターとして活躍中。

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