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ニューヨーカーは道を聞く時 “Excuse me?” なんて言わないよ

高橋克明
2018/08/14

日本では常識だけど、海外生活を経験した人の視点で見てみると、とても変に感じる習慣がたくさんあるようです。米国の邦字紙「WEEKLY Biz」CEOでメルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者であるニューヨーク在住の高橋克明さんは、久々の日本出張で帰国したときに感じた「日米間の文化の違い」について語っています。

どうして日本人は人に話しかける時、いちいち謝るの?

先日の日本出張でいちばん感じた日米間の違いは、人と人の距離感です。

NYに戻ってきて、日中、街を歩いていると、いきなり見ず知らずの黒人のおばさんに話しかけられました。人間を横に3人くっつけたような体型の年齢不詳の(それでもおばさんということだけはわかる)女性は第一声、

「Where can I eat the egg foo young ? このあたりでカニ玉食べれるお店ある?」ー。

不機嫌そうな表情は怒っているわけではなく、ただ単にお腹が空いていたのか、なんの躊躇(ちゅうちょ)もなくかなりのボリュームで聞いてきます。

「たぶん、そこの角を曲がって2ブロック歩けば、 右手に中華料理屋さんはあったと思うけど、、、でも、メニューまでは知らねえよ」

そう答えると、お礼もそこそこに彼女は教えられた角を曲がって行きました。直後、「あっ!」と思い出し、その後ろ姿に「てか、オレ、中国人じゃねえけどな!」と叫ぶも、もう聞いちゃいねえ。 。

この街では、こんなことしょっちゅうなので、特にひっかかることもないのですが、先日の日本で遭遇したおそらくはその黒人のおばちゃんと同世代の日本の女性は、逆にとても印象に残りました

新宿駅でのこと。

「あの~、、、、大変、申し訳ございません、、」

と話しかけられます。

「はい」

と返事をする僕に、彼女はさらに(なぜか)謝ってきます。

「スイません、実は、ごめんなさい、おいそがしいところ」

特に忙しくはありませんが、と答える間も与えてくれない彼女はさらに謝罪の言葉を述べてきます

「ほんと、ごめんなさい、呼び止めて、スイません」
「あ、はい」
「実は、、西武新宿線の駅を知りたくて、、、あ、方向だけでも、あ、はい、申し訳ございません」

西武新宿線の駅入り口なら知ってる僕は、事細かく説明しようと

「あ、そこのキヨスクを左に入ってもらって、その道をまっすぐ歩きます、10メートルくらいかな、、で、、、」

の時点で

「あー、ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます、スイません、スイません、スイません、あ、ありがとうございます」

とその先を聞こうとしません。

まだまだ続きはあります。 この時点までの説明では目的地にはたどり着きません。

「そこまで行ったら、また人に聞きますので、、すいません、ありがとうざいます」

と、もうその場を離れて、体を斜めにして、立ち去って行きそうです。

「あ、いや、その先も、、」

と言いかける僕に、左手を立てて、お礼のポーズで、10回以上頭を下げて、行っちゃいました、、、、10メートル後にまた人に聞くのだろうか。 。 。 また「スイません」を連呼して、、、、。

人と人との距離感に関して。

おそらく、見ず知らずの人の時間を奪ってしまうのは申し訳ない、という日本人ならではの奥ゆかしさが発動するのだと思います。それにしても、道を尋ねる、という本題の前に、何度「スイません、申し訳ないです」を繰り返しただろう。やはり日本は、見ず知らずの人に話しかけることに対してのハードルが高い。 それは他人の時間と距離をリスペクトする、とても優しく奥ゆかしい習慣。

それでも、不便を感じられすにいられません

冒頭の黒人女性。 彼女は「カニ玉」を食べたくなった。 その時に前から中国人が歩いてくる(中国人じゃねえけど!)なので、こいつなら、カニ玉がメニューにあるこのあたりの店を知ってるかもしれない。 であれば、聞くのが一番手っ取り早い

実は、人間にとって、何もおかしくない、自然な方法ー。 犯罪でももちろんないし、聞かれたこっちも別に嫌な気はしない。 奪われる時間も5秒以内で、迷惑ではまったくない。カニ玉を食べたいから、知ってそうなやつに聞く。 人類であれば、至って普通な行為なはずです。

でも、もし、日本でいきなり、しつこいほどの「スイません、申し訳ございません」の枕ことばもまったくなく、なんなら「ちょっといいですか」すらなく、通りすがりの見ず知らずの人が、あまりに唐突に「 なんこつ定食食べたいんだけど、このあたりで食べれるお店知ってる!?」と大声で聞いてきたら。やっぱり、絶対、変なやつ、ですよね。

本来であれば、「知らないことを人に尋ねる」という人類にとって自然な行為も、日本だと不自然な行為」。 絶対、そのあと、知人友人に「こんなやついた!」と吹聴するに違いない。「いきなり、スイません、もなく、「なんこつ定食どこで食える!?」って叫ばれた(笑)」とちょっとの期間、鉄板ネタとして、使い回すに決まってる。

ニューヨークは世界の縮図。 全世界のあらゆる国籍、人種、習慣を持つ人の集合体なので、社会のルールは至ってシンプルにするしかない。 すべての人のバックボーンにいちいちあわせられない。 なので、普遍的な人類のルールが浸透しやすい。

この街を歩いていると他にも、「New Balanceのスニーカー買いたいんだけど、このあたりで売ってる店あるかな」「ストッキングが破れちゃったんだけど、どこで売ってる?」。 ギフトカード売り場で「こっちとこっちとどっちが可愛いと思う?4歳になる孫に渡すんだけど」。 エンパイアーステートビルの前で「エンパイアーステートビル、どこ?」と聞かれたこともあります。 彼にしてみれば、振り向く動作より見ず知らずの目の前の僕に聞く方が容易かった。

それらすべてに「Excuse meの枕ことばはありません。 聞きたいから、聞いただけ。

そして「尋ねる」目的だけでなく、他にも多いのは「褒める」こと。 見ず知らずの通りすがりの人が人をやたら褒めます

時間を聞かれた際、腕にしている時計の文字盤を見せると「おー!いい時計だね」。 横断歩道で待っていると横の人に「いーじゃん。 そのネクタイ、どこで買った?」。 エレベーターの中で、鉢合わせた女性に「あなたってとても綺麗な目の色をしてるわね」と言われたこともあります。 (もちろん逆ナンパじゃ決してないよ)

そして、それはとても嬉しいことです。

前回の山手線、横に座った20代くらいのビジネスマンが持っている鞄がとてもセンスよく、思わず「いいね、それどこで買ったの?」と聞いたときの、彼の驚きドン引きした顔。 一緒にいた日本の知り合いに「やめましょ、高橋さん、やめましょ」となだめられました(笑)

人と人との距離感に関して。 両国を行き来する僕たちは気をつけなければいけない。 見た目がおもいっきりアメリカ人であれば、自然に見える行為も、見た目が思いっきり日本人の僕たちが、ニューヨークの日常を持ち込むと、ソッコー、変な人、だ。

もちろん、今回のメルマガで僕が言いたいことは「欧米はみんなが自然体。 島国の日本は異常に社会が気を遣い過ぎるからダメなんだ」というアメリカ至上主義なブロガーあたりがよく言う偏った理屈を言いたいわけでは決して、ありません。 その国それぞれの文化と習慣がある。 「欧米をすべて見習わなきゃいけない!」的なかぶれたことを言うヤツには、じゃあ、日本でも駅前でいきなり「なんこつ定食食べたいんだけど!」と無差別に訪ねまくれと言えといいたい。 それが出来なければ、その理屈は通らない。

似てるようで、まったく違うふたつの国を行き来する。 どっちかにどっちかの理屈を持ち込む前に、どっちにも対応できる柔軟性を持つべきだと思うのです。

image by: shutterstock.com

『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』
全米No.1邦字紙「WEEKLY Biz」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ400人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。

ニューヨーカーは道を聞く時 “Excuse me?” なんて言わないよ
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