日本一美しい「本棚」と言われる、文京区「東洋文庫ミュージアム」
ところで皆さん、きっと今「モリソンって何?」と思われていることでしょう。
この美しい書庫に冠された、栄えあるその名はオーストラリア出身のジャーナリストだった、ジョージ・アーネスト・モリソン(1862-1920)から。
モリソンは約20年間、北京に暮らし、英国の新聞『Times』の海外特派員や中華民国の政治顧問を任された人物。
彼が中国滞在中に収集した資料を、東洋文庫の設立者である岩崎久彌が1917年に買い取りました。これが東洋文庫の設立につながったわけです。モリソンから買い取った資料は関東大震災や太平洋戦争など消失することもなく、現在に至ります。
このモリソン氏はジャーナリストにして旅人でもありました。
1894年には、上海からミャンマーのヤンゴンまで100日かけて約5,000kmの旅を敢行。その紀行文が評価され、イギリスのTimes社からオファーを受け、やがて中国に赴任することに。
北京滞在中の1912年に中華民国が成立すると、モリソンは大統領府の外国人顧問に就任しました。第一次世界大戦が開戦すると、モリソンは日本との外交などにも関わったそうです。この頃に、岩崎久彌と出会ったのかもしれません。
旅人でもあったモリソンが集めた本が並ぶ書棚は、旅の結晶といえるもの。
1冊1冊が彼を通した「旅のかけら」だと思うと、いっそうこの空間が愛おしくなってしまいます。
2階ではモリソン書庫のほか、定期的に企画展が行われています。
訪れた時は「悪人か、ヒーローか」展(開催中〜2018年9月5日<水>まで)が開催されていました。
古今東西の「悪人」または「ヒーロー」といわれている人物に関する資料を集め、その虚像と実像に迫るというユニークな内容でした。
企画展示室をつなぐのはスリリングな通路「回顧の道」。
透明な床の下が底なしに見えるような仕掛けがなされています。これは「クレバス・エフェクト」という手法。正直、なかなか一歩が踏み出せず、コワさのあまり、両股の間が涼しくなってしまいました(失礼!)が、実際の深さは10cmだそうです。照明がかなり落とされているので、歩く時はスリル満点です。