最高の美女とデートだったのに…「大切な夜」に僕が犯した大失敗とは

口実は「日本の話題」それでも彼女は…

3度目のデートは『Japan Societiy』という、日本のイベントで催された映画上映会へ出かけた。日本でヒットした映画を上映するというイベントで、話題がたくさんありそうな感じ。

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僕らが見たのは、『バクマン』というマンガ作品の実写映画だった。

彼女自身、日本のマンガやアニメに詳しいというわけではなかったが、上映中は笑うほど楽しんでいるようだった。

映画を楽しんだあとは、イベント会場をめぐり、少しばかりの日本料理を楽しみ、ふたり別々の帰路へ。

全く甘い考えだが、何もかもうまくいっていると思っていた。このまま彼女と恋人同士になって、本場の日本を思う存分楽しんでほしい。もちろん彼女の夢であるアナウンサーを叶えるために全力でサポートしたい。

そのために僕は、ドイツへ行ってもかわまわない。ときにはお互いの文化に触れて、知らないことを知っていきたい。

でも、4度目のデートで、僕は盛大にやらかした。

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ある日、同じ卒業生が主催したホームパーティーに彼女を誘った。

アメリカではたびたびホームパーティが開催されていて、食事やお酒を持ち寄って、音楽を流しながらゲームをしたり話をしたり、楽しみ方はそれぞれである。もちろん健全なパーティもあれば、少しばかりよくないことをするパーティもあるそう。


ただ僕は、ここで決めるつもりだった。いい雰囲気になったら、ふたりで抜け出そうと思っていたのだ。

…が、僕はその日の朝に38度の高熱をだした。素直に断ればいいもののドタキャンするのもなんだし、きょうでケリをつけなければいけないという謎の強迫観念にかられて、熱があることを黙って参加した。

いまのご時世ではありえないことだが、当時は「少しの熱くらいは大丈夫!」という、謎の自信があったのだ。

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薬が効いたのか、パーティーの序盤は楽しく話ができていた。

キッチンのカウンター席で彼女と横並びに座って、ふたりの空間を演出していたところまでは良くやっていたと思う。

この前の映画の話だったり、マンガについてだったり、たわいのないことを話していた。ところが酒が回ってきた途端に、吐き気と頭痛がひどいことになり、僕は耐えきれずに会場の隅のソファーで横になった。

初めは心配してくれていたけど、僕がうめき声しか発しないので近寄らなくなった彼女。もちろん知人からも、とても空気の読めない参加者だと思われていただろう。

ただ、家に帰るほどの体力もなく、気持ち悪いという思いが勝ってしまい、起き上がっただけで、もよおしそうだった。

出さないように我慢することに徹していたら、彼女がほかの人と楽しく会話している声が聞こえる。「よかった、ほかに話す相手がいて…」と、思ってからの記憶はない。

僕はパーティの最中、知人の家のソファで意中の人を放置してうめきながら寝転んでいたのだ。身体を起こす気力もなく、ハッキリと意識を取り戻したときには、彼女の姿はなかった。

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とうに朝になっていた飲み会のあと、僕以外はすでに帰宅していたようだった。

パーティの主催者は、きっとベッドルームにいたのだろう。とりあえず家主にはのちほどお礼と謝罪をしようと思い、先にメッセンジャーで彼女へ謝りながら自宅に帰れたかどうかの確認を含めてメッセージを送った。

もちろんダメ元だ。でも、ダメ元もなにも一切の返信は来なかった。

彼女のアイコンが表示されたが、返信がくることはない。既読もついているのに返信は一度もなかった。

もちろん熱があるのに、他人への配慮もなく参加した僕に問題がある。それでも彼女にだけは嫌われたくなかった。その日に愛の気持ちを伝えようと思っていたからだ。

そんな僕の一方的な気持ちは彼女に伝わることはなく、あっけなく片思いの幕は閉じた。

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あれから数年が経ち、僕はいま日本の会社で働いている。留学したのに語学力を活かすことなく、毎日決められたタスクをこなす社会人だ。

大学を卒業したあと、自分が何をしたいのかわからなかった僕はニューヨークへの留学という道を選択したけど、結局のところ就職や今後の人生を考えることからも逃げていた。それでも、それなりに楽しい思い出はあったし、いろんな経験ができたと思う。

でも彼女のことだけは、いまだに少しだけ気掛かりだ。

ああ、思い出した。

僕は彼女と初めて卒業パーティで話したとき、「明治神宮前という場所があって、近くには木々が美しい代々木公園があって、そのあとに原宿とか渋谷とか歩いたりすると素敵な日本旅行になる!」といった気がする。いや、きっといったはず。

そういって彼女に、僕が知ってる限りの日本の魅力を伝えたんだ。

いつか彼女がほかの誰かと日本を訪れたとき、僕が話した日本のことを思い出してくれるといいなと、最後まで図々しいことを思う僕がいる。

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