その前で、悪口厳禁。沖縄人が祀り拝む古来からの神様「ヒヌカン」
ヒヌカンは思いや願いを神へ伝達するインターネットのようなもの
では、具体的にヒヌカンの役目とは何なのでしょうか。実は沖縄の女性たちは、ヒヌカンに家族の健康や安全祈願、厄払いのお願いや吉事の報告を行なっているのです。
家族にとって嬉しいことがあったとき、お祝いごとがあったときなど、ヒヌカンの前で報告します。逆に悲しいことがあったときや苦しいときにもまた、ヒヌカンに苦しい胸のうちを明かし、救いや加護を願うのです。
妻や母が、ヒヌカンを前に居住まいを正して対峙する後ろ姿をときどき後ろから眺めることがありますが、とても凛としていて素敵な行為だと感じます。
合理的な考えの人が見たらバカらしく思うかもしれませんが、僕はずっと守っていきたい沖縄の文化・習俗だと思います。
ちなみに、さらにヒヌカンの役割をお教えすると「お通し」と呼ばれる祈願があったり、お墓や仏壇が遠く離れてる場合はなんとヒヌカンを通して拝むこともできるのです。
ヒヌカンを通して各神々へ転送してくれる仕組みですから、インターネットのようなものと考えていただければわかりやすいでしょう。ですから、ヒヌカンの前では絶対に人の悪口を言ってはダメ。転送されてしまいますよ。
1年の最後(旧暦12月24日)は御願解き(ウガンブトゥチ)といって、ヒヌカンが昇天して1年間の家庭での出来事やお願い事を天の神に報告する日となっています。
この日はまず屋敷拝み(ウガミ)をして、ヒヌカンの周りを掃除して清めます。1年間の無病息災に感謝するのです(ちなみに、旧暦1月4日は昇天したヒヌカンをお迎えする日になります)。
他にもヒヌカンについてお話するとすれば、代々継承されてきたウグヮンクトゥバ(御願ことば)や線香の本数や立て方、分家の際・引越しの際のヒヌカンの仕立て方などいろいろとあるのですが、ウチナーンチュでなければ細々としたルールは知る必要もないと思いますので、今回はこれぐらいにとどめたいと思います。
みなさんには、少しだけでもヒヌカンについて知っていただければ幸いです。沖縄の文化・習俗としてのヒヌカン信仰を少しでも心にとどめていただければ、沖縄やウチナーンチュをより理解しやすくなるかもしれません。
ただ、みなさんのうちのどなたかが、ウチナーンチュのお嫁さんをもらったり、ウチナーンチュの男性に嫁いだりする可能性もなきにしもあらず…ですよね。仮にそういう機会があったならば、このコラムでの基礎知識がきっと新婚生活に役に立つと思いますよ。
- image by:伊波 一志
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