能登七尾湾、癒しの絶景。石川県の観光列車「のと里山里海号」

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2019/07/05

本に手を伸ばす時間もないほど、乗客を魅了する「のと里山里海号」

image by:Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)

「のと里山里海号」は、金沢にも直接通じるJR七尾線の七尾駅と、七尾湾の北部で穴水港に面した港町にある穴水駅を結んで走ります。七尾→穴水で乗車してもいいですし、穴水→七尾で乗車しても構いません。

チケットには観光列車の乗車日から見て翌々日まで使用可能な「お帰り乗車券(普通列車)」もセットでついています(※ゆったりコースの場合)。

例えば七尾駅やその隣にある和倉温泉から穴水まで観光列車で行き、穴水からバスで輪島に向かって1泊。次の日にバスで穴水に戻ってきて、七尾まで普通列車で帰るなどの旅のかたちが考えられます。

「のと里山里海号」の魅力は、もちろん車窓に連続する穏やかな海辺の景色が、筆頭に挙げられます。プラスして、その景色について語ってくれるアテンダントの解説の素晴らしさにも、大いに注目したいです。

マイクを通じて景観の変化を「実況」してくれるスタッフの話し方はとても洗練されていて、声のトーンが車窓の眺めと見事にマッチしています。

車内の様子 image by:Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)

説明の内容も構成が十分に練られていて、片手間で観光列車を走らせているのではないという意識の高さが伝わってきます。何しろ、「のと里山里海号」は石川県で初めて誕生した観光列車という歴史と誇りがあります(現在は他の観光列車も走っている)。

既存の車両を利用して観光列車として改装したのではなく、販売カウンター、海向き席、ボックス席などを完備した車両を全てイチから作ったという背景もあります。

外装の色、座敷の間仕切りの細工、シートの絵柄、テーブルの樹種、ヘッドレストにいたるまで、能登の里山、里海に由来するこだわりの設計が施されており、サービスの面でも、専用のコスチュームで身を装ったアテンダントが、折り目正しいサービスを提供してくれます。

土日祝日の「ゆったりコース」の乗車時間は、穴水〜七尾の片道がおよそ60分。全線を通じて窓の外に美しい景色を楽しめる上に、構成にメリハリをつけるために、見どころがハイライトとして3カ所用意されています。電車が停まり、アテンダントが解説を加えてくれます。導かれるままに目線を向けて、車窓を楽しんでください。


筆者が初めて乗ったときは、途中で読書でもしようと思っていましたが、本に手を伸ばす時間がないくらい、景色に魅了され、あっという間に終点に到着してしまった記憶があります。

沿線には個性的な停車駅がたくさん

車窓からの眺め image by:Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)

ただ、乗車方法には少し注意が必要かもしれません。「のと里山里海号」は、水曜日を除き毎日走っています。

その中で、土日祝日の「ゆったりコース」は全席指定の予約制(座席が空いていれば、当日の飛び込みもOK)となっています。途中下車に関しては認められておらず、七尾駅か和倉温泉駅発(着)〜穴水駅着(発)の行程しか乗車できません。

深浦漁港 image by:Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)

一方の平日の「カジュアルコース」は全席自由で、逆に予約はできません。しかし、七尾駅と穴水駅の間であれば、どこの駅でも乗り降りが自由という気軽さがあります。

沿線には七尾駅、和倉温泉駅から始まって、田鶴浜駅(たてぐのまち駅)、笠師保駅(恋火駅)、能登中島駅(演劇ロマン駅)、西岸駅(小牧風駅)、能登鹿島駅(能登さくら駅)、穴水駅(まいもんの里駅)と、素敵な愛称で親しまれている駅が続きます。

それぞれに良さがあり、例えば能登鹿島駅では、1932年の開通の際に植えられたソメイヨシノが楽しめます。春になると花のトンネルを電車が通る、桜の名所として知られています。訪れる季節や曜日に合わせて、柔軟に乗り分けたいですね。

image by:Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)

以上、「のと里山里海号」の魅力を紹介しました。かつて「のと鉄道」は、穴水から能登半島の西側(外浦)にある輪島(七尾線)や、東側(内浦)をさらに北上した蛸島の方まで(能登線)線路が続いていたという歴史があります。

全線の距離が約100kmを越えていたそうで、廃線になった区間の駅スタンプが、穴水駅で押せるようになっています。併せてチェックしてみてくださいね。

  • のと里山里海号
  • 穴水駅〜七尾駅
  • ゆったりコース大人1,500円/子ども1,000円、カジュアルコース普通運賃+300円
  • 公式サイト
  • image by:坂本正敬
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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