フライドポテトはベルギー発祥?身近な食べ物に隠された意外な由来
フレンチフライの「フレンチ」
ニュージーランドのホテルの部屋でテレビを見ていたとき、「フレンチフライはサラダじゃない!」と視聴者に熱狂的に、しかしユーモラスに訴えている地元のテレビ番組がありました。
番組ではスタジオ内のアイランド式キッチンで、フレンチフライを生野菜のように扱う演出がされていました。フレンチフライとは日本語でいうと「フライドポテト」で、長細いスティック状のジャガイモの軽食ですね。
この食べ物、上述の番組のように英語ではフレンチフライと呼びます。
フライドポテトといえば、マクドナルドなどのファストフード店が真っ先に思い浮かびます。マクドナルド発祥の地はアメリカ。それでも英語では「フレンチフライ」と呼びます。「フランスが発祥の地で、アメリカで改良されたの?」などと、勝手に思い込んでいました。
「フレンチフライ」はフランスではなくベルギー発祥?
しかし、真相は違っている様子。実はベルギーが発祥の地という説があり、オランダに取材にでかけたとき、デンハーグという街で話す機会のあったベルギー人も、フライドポテトはベルギー発祥だと語っていました。
南米のアンデス高原で生まれたジャガイモはヨーロッパに渡り、寒冷地でも育つ作物として重宝されました。ベルギーでも日本人のお米感覚で食べられていて、そのなかで現在のフレンチフライが生まれたとの話。
では、なぜベルギー発祥といわれているのに「フレンチフライ」と、フランス料理のような名前で呼ばれているのかといえば、
- ベルギーのフランス語圏である「ナミュール」という街でフライドポテトが盛んに食べられていた
- 1680年に街の中心を流れるムーズ川が凍り、魚が取れなくなったので、小魚のようにジャガイモをカットし、フライにして食べた
- このフライドポテトがおいしくて、現地で広く食べられるようになる
- 第1次世界大戦のころ、アメリカ兵がベルギーのフランス語圏に駐屯した際に、フライドポテトを食べて感動し、アメリカに持ち帰った
- フランス語を話す人たちの料理だったので、フランス人の料理と勘違いして、アメリカではフレンチフライと呼んだ
という話が、さまざまなメディアでも報じられています。ちなみに現地ではフレンチフライとは呼ばず、「フリッツ」と呼ぶそうですよ。
一方で、フランスで生まれたとの説もある
ベルギーでは自分たちの国のフライドポテトを、UNESCO(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産のリストに入れようと、動いているとのニュースまであります。
ただ、この説に関しては、当のベルギーにあるリエージュ大学の料理歴史研究家による反論もあります。
BBC放送(英国、正式名称は英放送協会)の「Can Belgium claim ownership of the French fry?(ベルギーはフレンチフライの所有権を主張できますか?)」で紹介されているように、南米から伝わってきたジャガイモですが、
<potatoes were not introduced into the region until 1735.>(BBC放送の記事より引用)
とあるように、「ジャガイモはナミュールの地域には1735年まで伝わっていなかった」との話もあるのですね。
フレンチフライの名前の通り、フランスで生まれたとの話も同記事で紹介されています。冷静な反論意見が国内から出てくるあたりに、ヨーロッパの文化レベルの深さを感じますよね。
結局、フライドポテトはベルギー発祥なのかフランス発祥なのは、はっきりしないところもありますが、なんであれベルギーで食べるフライドポテトはおいしいです。
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一般的なフライドポテトとは違い、ほくほくとしていて、とても食べ応えがあります。東京など国内でも、ベルギー産の芋を使った専門店で試すチャンスがありますから、ぜひとも口にしてみてくださいね。
- 参考
- 山口佳紀編『暮らしの言葉 新語源事典』(講談社)
- 吉田金彦編『衣食住語源事典』(東京堂出版)
- 『日本語大辞典』(講談社)
- Can Belgium claim ownership of the French fry?-BBC
- image by:Shutterstock.com
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