大谷翔平「FA移籍」に暗雲? 現地エンゼルス・ファンからは冷静な分析も
前回は、8月23日(日本時間24日)に、大谷翔平選手(ロサンゼルス・エンゼルス)がシンシナティ・レッズ戦に先発登板し、わずか1回1/3で降板した試合を生観戦した様子をご紹介しました。
今回は続編として、試合以降の現地の様子をお伝えしたいと思います。
大谷選手負傷報道後の現地の様子
ご存知の通り、試合があった日の夜に、エンゼルスGMのペリー・ミナシアン氏が、大谷選手の右肘靱帯(じんたい)に損傷が発覚したと衝撃の発表を行いました。
その日は水曜日でした。翌木曜日はニューヨークへの移動日にあたり、エンゼルスの試合はありませんでした。その後、金、土、日のメッツ戦に大谷選手が指名打者としてフル出場したことも皆さんはすでにご存知でしょう。
週が明けても、大谷選手を巡る状況に大きな変動は伝わってきません。このまま今シーズンの残りは打者として出場し続けると見られています。
トミージョン手術を受けることになるのか、受けるとしたらその時期はいつになるのか。様々な憶測報道は飛び交っていますが、肝心の大谷選手本人も代理人も沈黙したままですので、本当のところは誰にもわからないと言ってよいでしょう。
エンゼルスのレギュラーシーズン最終日は10月1日(日本時間で2日)。あと約1か月間で31試合を残しています。
大谷翔平を目当てにエンゼル・スタジアムへ大挙してやってくるファン
大谷選手が緊急降板した試合の話に戻します。
球団の公式発表では、エンゼル・スタジアムには28,776人の観客が入場しました。その日の夜に行われたダブルヘッダー2試合目の観客数24,596人ですので、水曜日午後1時試合開始のデーゲームとしてはかなりの数です。
現在のエンゼルスは勝率5割を下回り、早くもプレーオフ進出がほぼ絶望的となっています。いわばシーズン終盤の消化試合を残しているだけのようなもので、ふつうならスタンドはガラガラで閑古鳥が鳴いていてもおかしくありません。
エンゼルス・ファンというより大谷ファンがエンゼル・スタジアムに押し寄せたとみていいでしょう。
あくまで感覚でしかありませんが、選手の名前が書かれたTシャツやジャージを着ていた人のうち、8〜9割は大谷選手の名前が入ったユニフォームだったのではないかと思います。
それだけに、大谷選手がマウンドから降板し、また次の回に大谷選手の打順で代打が送られたときは、スタンドから大きな落胆の声が聞こえました。
現場にいるとかえって状況はわかりにくいもので、大谷選手はマウンドを降りても打席には立つだろうと皆が期待していたのです。
「大谷選手が見られないなら」と、3回裏が始まったばかりで早々にスタンドを立ち去る人も多くいました。
大人は「今日は残念だったね」くらいで済みますが、がっくりと肩を落とした子どもたちは本当にかわいそうでした。ひょっとしたら学校をさぼって観戦に来ていたのかもしれないのに。
敵地のファンも惹きつける唯一無二のユニコーン
大谷選手の圧倒的な人気と集客力は、エンゼルスの地元ロサンゼルス周辺だけにとどまりません。
北米大陸の反対側にあるニューヨークでおこなわれたメッツとの3連戦では、敵地であるにもかかわらず、大谷選手が登場するたびに大きな声援がスタンドから上がっていました。大谷選手に敬遠四球が申告されると、地元メッツに対してブーイングの嵐までもが巻き起こりました。
これは野球だけではなく、アメリカのスポーツ全体からしても極めてめずらしい現象です。ことスポーツに関して、アメリカは地域色がとても強く、圧倒的に地元チームへの応援が多くなることがふつうだからです。
メッツは大都市ニューヨークでヤンキースと人気を二分するチームであることに加えて、オーナーで大富豪のスティーブ・コーエン氏がチームの補強に大金を惜しみもなく費やすことでも有名です。
そのコーエン氏、7月末のトレード期限にマックス・シャーザー投手とジャスティン・バーランダー投手という両エースを放出するという思い切った手段に出ました。不振の今シーズンはあきらめ、シーズンオフにフリーエージェントとなる大谷選手を獲得するために、必要となる莫大な資金を空けるためだという見方が濃厚です。
メッツの本拠地シティ・フィールドの観客が大谷選手に声援を送ったのはそうした期待も背景にあったのかもしれません。