アメリカ集団強盗の損失総額は約17兆円…でも現地住民からは意外な声
最近、アメリカにあるドラッグストアや百貨店などで、化粧品や医薬品がカギのかかったケースに入れられていることをよく目にするようになりました。買い物客は店員に頼んで商品を取り出してもらわなくてはいけません。
宝石店などは別ですが、こうした店舗が盗難防止の措置を取ることは今までにはなかったことです。その背景には最近のニュースでよく見聞きする集団万引き事件の急増があります。
“万引き”という言葉は適当ではないかもしれません。店員の目を盗んで、商品をそっとポケットに入れる。最近アメリカで問題になっている犯罪はそんな牧歌的なものではありません。
大きなバッグやショッピングカートに大量の商品を詰め込み、そのまま店を立ち去るといったものが大半です。白昼堂々、バールで商品ケースを叩き割るような荒っぽいケースもあります。盗まれた商品はオンラインで転売されていたりします。
こうした犯罪が報道されるたびに、Shoplifting(万引き)、Theft(窃盗)、 Burglary(強盗)、あるいはSmash-and-grab(破壊して奪う)という言葉が使われてきましたが、最近ではOrganized Retail Crime(組織的小売店犯罪)、略して「ORC」と総称されるようにまでなってしまいました。
各地の警察組織に続々とORC対策専門チームが誕生しているそうです。
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アメリカ最悪のORC多発地域はロサンゼルス
全米小売協会(National Retail Federation, NRF)が最近発表した年次報告書によると、昨年、組織的小売店犯罪により企業が被った損失総額は1,120億ドルに達したとのことです。
大雑把に1ドル150円※で計算すると1億ドルは150億円(※以下、すべてこのレートで計算します)。その1,120倍となれば約17兆円の金額に達します。考えただけでも頭がクラクラしてきますね…。
同報告書は地域ごとの犯罪発生数も発表しています。全米で最も組織的小売店犯罪が頻発している第1位の(と言うか、最悪の)都市はカリフォルニア州ロサンゼルスでした。ワースト10都市は以下の通りです。
- ・ロサンゼルス/カリフォルニア州
- ・サンフランシスコ、オークランド/カリフォルニア州
- ・ヒューストン/テキサス州
- ・ニューヨーク/ニューヨーク州
- ・シアトル/ワシントン州
- ・アトランタ/ジョージア州
- ・シカゴ/イリノイ州
- ・サクラメント/カリフォルニア州
- ・デンバー/コロラド州
- ・マイアミ/フロリダ州
東西南北まんべんなく、全米各地に広がっていますが、ワースト10に3都市が入るカリフォルニア州の突出ぶりが目立ちます。
大手百貨店チェーン『Target(ターゲット)』は、サンフランシスコなどにある9つの店を閉店すると発表しました。
「組織的小売店犯罪が我々チームと顧客の安全を脅かし、ビジネスを極めて不安定にしているため」と声明で発表しています。
カリフォルニア州では2014年に成立した州法修正案47によって、被害額950ドル(約14万2,500円)以下の暴力を伴わない窃盗は軽犯罪扱いになっています。
このことを組織的小売店犯罪が急増している理由だとする意見もありますし、そうではないとする意見もあります。
シンクタンク『ピュー研究所』は、2000年以降に重罪とされる被害額を引き上げた州はカリフォルニア州を含めて最低でも37州あるが、そのことは犯罪率の増減に大きな影響を及ぼしていない、とした研究結果を発表しています。