廃線駅舎がなぜ人気の絵画館に? 街を元気にした70代の「ひらめき」
正真正銘ジモティの誇りと意地
生まれも育ちも置戸という細川さんには家庭の事情で、同級生たちのように都会に出ていくことができなかったという思いがあります。だからこそ、その裏返しとしての強い郷土愛があります。自分が一生かけた町だから、なんとしてもよくしたい。それは年齢を重ねた今、自身の人生への肯定という意味でもあります。
細川さんは置戸で暮らすと決めてから、「町づくりに力を注ごう」と、仕事の合間に、公園を作ったり、お祭りを運営したりとさまざまな活動に参加してきました。
昭和51年に演劇の仲間と企画した「人間ばんば」は、全国的に知られる置戸の名物行事となりました。鉄製そりを障害のあるコースで曳き競う馬のレース「ばんば」の人間版です。これはサントリー地域文化賞や過疎地域活性化優良事例国土庁長官賞なども受賞して、地域おこしのモデルイベントとして評価を得ています。
「コマネズミみたいに、町を活性化する活動をずっとやっています(笑)」。
年齢を重ねるに連れ、わが町は一層愛着あるものになっていくようです。地方創生に、こういうシニア世代の思いや知恵を活かさない手はありません。
細川さんはジモティではありますが、自分の町だけを見ているわけではないのです。アイデアと協力者は地元以外で見つけました。東京の画家と画廊の経営者らは都会の風を送り込んでくるいっぽう、地元の人が気づかない地域の良さを教えてくれます。地元の人たちの心意気や熱意は不可欠ですが、それだけでは、「置戸ぽっぽ絵画館」は生まれなかったでしょう。
地元民/よそ者、田舎/都会、若者/シニア、女性/男性、有名/無名。
こうした異なった文化や価値観の融合が新たな町おこしのタネを作り出していくのではないでしょうか。その時、シニア世代はつなぎ役としての役割も果たせそうです。
「置戸ぽっぽ絵画館」と運営メンバーは今、2016年11月の開館5周年とNPO法人化に向けて準備の真っ只中にいます。
住所: 〒099-1100 北海道 常呂郡 置戸町字置戸456-1
Tel: 0157-52-3742
- image by:松本すみ子
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