ネギ丸ごと一本がお箸!?大内宿の変わり種グルメ「ねぎそば」の歴史
全国には、他県民からするとちょっと変わった「ご当地グルメ」があります。それらは町おこしをきっかけに注目されるケースもありますが、地元の伝統と歴史にヒントを得ているので、各地の食文化が透けて見えて面白いですよね。
福島県の会津若松市の南、下郷町にある大内宿の「ねぎそば」もその代表例のひとつ。なんと、お箸を使わずに長ネギをまるごと1本使って食べるんです!
今回は、そんなユニークなねぎそばの食べ方や歴史をご今回は紹介します。
※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウイルスの国内・各都道府県情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。
美しい街並みがのこる「大内宿」
そもそも会津若松市の南、下郷町にある「大内宿」といわれて、地元民でもないのにどこにあるかすぐにわかる人はかなり珍しい存在のはず。ただ「重伝建」にも指定された古い宿場の街並みは、写真を見れば「あ、何かで見た」と思うかもしれません。
大内宿とは、冒頭でも出てきた会津若松から栃木県の日光を結ぶ、街道に存在した宿場町です
宿場町としての機能がなくなり、時代の変化とともに一時はすたれたみたいですが、宿場全体の保存の機運が高まり、電柱が移転されたり、かやぶき屋根や建物が修景されたりするなかで、観光地としての評価が高まり始めます。
1989年からのデータを見ると、一貫して観光客は増え続けています。東日本大震災と福島第一原発事故の風評被害で一時期伸びが止まるものの、平成の終わりに向かって客足は回復し、人気を堅持してきました。
大内宿や長野県の妻籠宿など、古い宿場町の街並みを住民が一丸となって守り・整える地域は、外国人観光客を中心に人気ですよね。さらに、大内宿の場合は「ねぎそば」という食の楽しみもありますから旅先としての魅力も大きいです。
これは超レア。なんと長ネギでそばを食べる!
福島県の大内宿で食べられる「ねぎそば」の直接的なルーツは、長野県伊那市高遠町地区から会津に持ち込まれた「高遠そば」です。
<”辛つゆ”と呼ばれる、辛味大根のおろし汁を焼きみそで味付けしたつゆで食するそば。>(小学館『大辞泉』より引用)
古くから交通・軍事の要地だった高遠は城下町です。高遠藩の藩主である保科正之が領地の移し替えを幕府に命じられ、山形県の出羽を経て福島県の会津に移った際に、会津にもそば文化が伝わります。
郷土食として家庭内でそばが食べられる本家の長野では、商売として表立ったブランド化がされてきませんでした。しかし、福島の会津では高遠そばとして商業的な成功を収めます。2000年代になると、高遠町へ福島の高遠そばが逆輸入されたほどです。
さらに、同じ高遠そばでも、会津若松の南にある大内宿では、商売上の工夫として独自の食べられ方が生まれます。大内宿にあるそば屋「大内宿 三澤屋」が太い長ネギをお箸の代わりに使う食べ方を提案し、ブームとなりました。