「木漏れ日」のなかで本を愛でる。美しい光が差し込む「金沢海みらい図書館」
北陸の石川県にある金沢が、観光地として絶好調です。いつ行っても観光客が多く訪れていますし、外国人旅行者の姿もたくさん見かけます。
金沢には兼六園もあれば、近江町市場もあります。金沢21世紀美術館もあれば、以前TRiP EDiTORでご紹介した忍者寺もありますよね。ただ、そうした観光地は全て、JR金沢駅の兼六園口(東口)側。
反対の金沢港口(西口)側は、兼六園口側に比べるとちょっぴり寂しい印象もあります。
しかし、実はそのJR金沢駅の金沢港口側にも、時間があれば立ち寄っておきたいスポットがあるとご存じですか?
そこで今回は金沢駅の金沢港口を出て自動車で20分ほど行った寺中町(じちゅうまち)にある公立図書館「金沢海みらい図書館」を紹介します。
金沢の姉妹都市である中国の蘇州、韓国の全州など、世界各地から視察団が訪れる素敵な図書館ですから、ぜひチェックしてみてくださいね。
金沢の名建築群に負けない公立図書館
金沢には有名な建築物が多いです。金沢駅の鼓門、金沢21世紀美術館などは、分かりやすい例ですよね。
歴史ある建物で言えば、石川四高記念文化交流館、しいのき迎賓館(旧石川県庁舎)もあります。
さらにもっと歴史をさかのぼれば兼六園もありますし、主計町、ひがし茶屋街、卯辰山麓、寺町台など伝統的建造物群保存地区(重伝建)も点在しています。
そうした見どころたっぷりの建築物と比べても、そん色のない存在感を放っている公立の図書館が、先ほどの「金沢海みらい図書館」になります。
同館は2011年3月に完成し、同じ年の5月21日にオープンした金沢市4番目の市立図書館になります。公立の図書館と言うと、なんだかちょっぴり古くて、地味な印象を抱く人も少なくないかもしれません。
長谷川幸代著『公共図書館のイメージについての調査研究』などを見ても、公共図書館は「古い」「やぼったい」「地味な」といったイメージを持つ人が実際に存在していると分かります。
もちろん本好きの筆者としては、その手の年季の入った、「図書室」とも呼べる図書館めぐりもしびれるほど興奮するのですが、金沢海みらい図書館は「新しく」「おしゃれ」で「目を引く」デザインが特長的。公立図書館のネガティブな印象を完全に覆してくれます。
有名な建築家たちが設計した図書館
金沢海みらい図書館は、リニューアル工事が目立つ全国各地の図書館とは少し誕生の背景が違います。
道路建設後の余った土地を金沢市が買って、地域の住民たちの声を受け、新設した図書館になります。その際に公募をかけ、素晴らしい設計プランを募りました。
設計会社を調べてみると、筆者が移住した富山にある芝園小学校・中学校(富山市立)の設計も担当した、シーラカンスK&H(東京)という会社だと分かります。
芝園小学校と中学校は富山県内でも伝統のある名門校として優秀な生徒を輩出してきた公立校。
歴史だけでなく建物そのものの設計も他の学校と比べて突き抜けていて、「なんだか素敵な校舎だな~」と目の前を通るたびに思っていました。
その設計者が担当した図書館と聞いたときは、点と点が結ばれたような納得感がありました。
国内外の賞を次々と受ける公立図書館
金沢海みらい図書館は、単に旅行者として目の前を車で通りすぎるだけでは、図書館だとは分からないかもしれません。
ホールケーキを入れる紙箱みたいな外観の白い壁面にはたくさんの穴が開いていて、とてもユニークな外観をしています。
しかし、この建物はもちろん立派な図書館として、各界から極めて高い評価を受けています。
地元の新聞のバックナンバーを調べてみると、2012年の「第34回金沢都市美文化賞」から始まって、国内外の建築関連の賞を次々と受けていると分かりました。
BBC放送(正式名称は英放送協会)の番組では、「世界のスーパーライブラリーベスト4」のひとつとして取り上げられたという話もあります。
米国の旅行ガイド、米国のインターネットサイトなどでも「世界の魅力的な図書館ベスト20」、「世界の最も美しい公共図書館ベスト25」などと、極めて高く評価されているのだとか。
その評価は今も変わらなくて、2018年11月18日の地元の新聞には、2011年の開館から数えて、累計で500万人の来館者を突破したというニュースがありました。
2011年のオープン前日に書かれた北陸中日新聞には、「光注ぐモダン空間 海みらい図書館あす開館 年40万人利用見込む」とあります。実際は7年ほどで500万人を突破するペースですから、単純に割ると1年で70万人近くが訪れている計算になります。
当初の想定を超える勢いで、今も人が集まっているのですね。