「木漏れ日」のなかで本を愛でる。美しい光が差し込む「金沢海みらい図書館」
館内では、壁に並んだ穴の小窓から青いドットの空が見える
大まかに館内を説明すれば、1階の入り口には総合受付カウンターがあり、その奥に児童図書が置いてあります。金沢海みらい図書館は出入りのたびに職員の前を通過するので、セキュリティの面を考えると、小さなお子さんと一緒に訪れたときでも安心ですね。
筆者が取材に訪れた際も、近隣にお住まいの方がたくさん訪れていました。しかしながら、もちろん金沢市民だけでなく図書館は誰でもウェルカムですから、旅の途中の旅行者が入館しても問題はありません。
最大の見どころは、総合受付カウンターを越えてらせん階段を上った先にある、2階の「一般図書エリア」になります。
約15.9万冊(『図書館をつくる』(彰国社)より)が配架された一般図書エリアは天井の高さが圧倒的で、その広がりに誘われるように見上げた視線の先には、壁一面に並んだ丸い小窓から青いドットの空が見えます。
密閉された空間なのに、空気は澄んでいて、目に入る人の多さの割に不思議と静かで居心地の良い空間です。
緊張するほどの静けさではなく、吸音が上手に考えられているようで、何か館内に漂う気配に「品のいい静けさ」があるのですね。
自然光が均一に広がる館内
写真を撮影するために訪れた時期は、春の昼過ぎで、天気は晴天でした。
普通なら図書館の南向きの窓際席に座っていると、太陽の光がまぶしくなる時間帯ですよね。まぶしすぎて本が読めなくなる上に、春でも昼間の窓際は暑くて、読書には好ましくない環境になってしまいます。
しかし、金沢海みらい図書館では、自然光が均一に広がっているため、時間帯に関係なく居心地の良さも一定しています。極端に言えば、南向きがどちらか一瞬で判断しかねるくらい、館内の光がうまく調整されているのですね。
「木漏れ日で本を読んでいるみたい」という評価も一部にあるほど、柔らかい光が館内に広がっています。読書や勉強をする利用者の目に優しくなるように、考えられているのですね。
ドラマティックな「出会い」を演出してくれる図書館
特に人気の3階にある吹き抜けに面したカウンター席は、座ると天井の高い吹き抜けの大空間が目の前に広がり、その足下には膨大な本が並ぶ形になります。座って本を広げ何かの作業をしているだけで、自分が普段よりも格好良く感じられるから不思議です。
近所の市民にとっては、石を投げれば届くくらいの距離にある公立図書館に、このような大空間があるのです。人生の豊かさは何メモリか、確実に増しますよね。
本を年間で400冊以上読む本好きの立場から考えてみると、本を図書館で読んでいる時間などは、1年のうちでほんのわずかです。むしろ図書館は予期せぬ本との出会いの場所であり、その出会いの興奮に静かに打ち震える場所でもあるはず。
男女の出会いも一緒のように、やはり本との出会いもドラマティックな方がいいですし、絵になる場所であってほしいです。
その意味で、金沢海みらい図書館は、本との出会いのロケーションとしては実に絵になる場所です。壁に面して長い閲覧カウンターがあるため、出会った本をさっと広げて、中身を試し読みもできるようにもなっています。
旅行者の場合、借りては帰れませんが、壁際の閲覧カウンターに腰掛け、書籍名をメモすれば自宅に帰ってからその本に再アクセスもできます。
初めての金沢旅行、北陸旅行とは言いません。しかし、2度目、3度目の金沢、あるいは北陸旅行で少しユニークな場所に出かけてみたいと思ったら、世界でも美しいと評価される金沢海みらい図書館を、ぜひとも思い出してくださいね。
- 金沢海みらい図書館
- 金沢市寺中町イ1番地1
- 076-266-2011
- 休館日:水曜日(祝日・振替休日と重なった場合は開館)
- 平日 10:00~19:00/土日祝日 10:00~17:00
- 金沢海みらい図書館 公式ページ
- 特別整理期間(6月第1月曜日〜翌々日、11月の最終月曜日〜翌週の金曜日)、年末年始は休館です。
- 参考
- 伝統的建造物群保存地区 金沢市
- 長谷川幸代『公共図書館のイメージについての調査研究』
- 金沢海みらい図書館 概要 – 金沢市図書館
- シーラカンスK&Hのホームページ
- 堀場弘・工藤和美編著『図書館をつくる』彰国社
- image by:Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)
- ※館内の写真撮影は特別に許可をいただいております。
- ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。