最難関の「大阪駅」へ…5歳の私と妹が体験した、はじめての電車旅
「意外と簡単やな」少しの余裕の後に…
母が書いてくれたメモの時間ぴったりに、赤と白の近鉄電車がホームに入ってきました。それまでは大人の後をついて電車に乗り込んでいただけなので、「この電車で合ってる?」なんてドキドキしたのも、人生でこれが最初。(方向音痴な私は、いまでも知らない土地の電車に乗るときは、このころと同じ緊張が走りますが…。)
このときのミッションは「生駒駅でいちばん前の車両に乗ること」です。近鉄鶴橋駅からJR大阪環状線内回りへの乗り換え口は、先頭車両付近にあるのです。後方の階段を上ると外回りのホームになってしまうので、ここが最初の緊張ポイント。
とはいえ先頭車両に乗るなんて小さな子どもでも造作もないことで、難なくクリア。先頭車両の座席にちょこんと二人で大人しく座りました。
いつもなら景色が綺麗だの(石切駅付近から見える大阪市内の景色は圧巻なんですよ)なんだのうるさい私たちですが、さすがにこのときは静かに座っていました。緊張していたんでしょうね。15分ほど電車に揺られると、近鉄鶴橋駅に到着です。
電車を降りるとまあびっくり。ただの乗り換えだと思っていたのに、目の前に階段があったのです。「どうしてもわからんかったら、人の流れに着いて行ったらいい」という母の伝言どおり、鶴橋駅で下車したほとんどの人が階段を登っていきます。
戸惑いながらも階段を上がった先には、大阪環状線のホームがありました。カバンの中に大切にしまった切符をもう一度改札に通して、再び電車を待ちます。
ここでのミッションは、「アナウンスに惑わされずに、とにかく来た電車に乗ること」。
JR鶴橋駅は大阪環状線以外にも阪和線などいくつかの路線が通っていて、ちょっとややこしいんです。でも、私たちの次なる目的地「大阪駅」には、どの電車に乗っても、必ず停車します。
だから、アナウンスで「大阪駅」という言葉が聞こえてこなくても、とにかく来た電車に乗ればよかったのです。
ここも難なくクリア。だって、来た電車に乗るだけですから。
「意外と簡単やな」「ほんまやな」
ちょっと、妹とおしゃべりする余裕も出てきて緊張も解けてきたころ、ハプニングがおきたのです。