関西の大動脈を止めないで造るのがミッションだった「大山崎ジャンクション」
「工場萌え」「ダム萌え」「公共団地萌え」など、数ある「インフラ(都市施設)萌え」の中で、今、ジワリジワリと人気になっている「ジャンクション萌え」。
その魅力を探るべく、ジャンクションや橋梁に詳しい建設コンサルタントの橋梁エンジニア(技術士:建設部門)愛橋家の丹羽信弘さんにガイドをしていただき、京都府内のジャンクションを訪ねる企画第2弾。今回は大山崎町にある「大山崎ジャンクション」に潜入してきました!
大山崎ジャンクションとは
JR山崎駅から車で東へ約5分、阪急西山天王山駅から徒歩で南へ約15分。京都府乙訓郡大山崎町にある大山崎ジャンクションは名神高速道路、京滋バイパス、京都縦貫自動車道の3つの道路が交差するジャンクション。
しかも、高架下には関西人から「イナイチ」の愛称で親しまれている国道171号や東海道新幹線が走り、その狭いスペースの中でそれぞれの行先に分岐・合流させるため、運転者には難解ということでも知られるジャンクションです。
ですが、丹羽さんが思う大山崎ジャンクションの魅力は、分岐や合流の複雑さより別のところにありました。
「西の横綱と呼ばれる阪神高速道路の“阿波座ジャンクション”のように何層にも重なる立体交差はありませんし、前回、訪れた“久御山ジャンクション”のような美しいループが描かれるわけではありません。ですが9つもの橋が横並んで立つ迫力が素晴らしいんです。これだけの数の橋が並んでいるのは他にないのではないでしょうか。それに他にも見どころはありますよ」
今回はどんな魅力が待っているのでしょうか。それでは大山崎ジャンクションの魅力に迫ってみましょう~!
橋の構造については前回の記事も参考にしてくださいね。
▶圧倒的迫力! あの有名映画にも登場する久御山の「巨大ジャンクション」へ
剛結構造と支承構造、両方を見ることができる
こちらが大山崎ジャンクションの地図。それではAから順番にポイントを回っていきましょう。
Aポイントの辺りはちょうど京滋バイパスから京都縦貫へ抜けるところで道が一直線に走っています。大山崎ジャンクションのように多数のランプ橋が計画される場合、通常一つの会社だけでなく、複数の会社で設計するのだとか。丹羽さんの会社でもこのうちの一つのランプ橋を設計されたとか。
より近づいてみるためにBポイントへ移動。柱の数がすごいですね。
「ここの特徴は、剛結構造(ごうけつこうぞう)を採用していることですね。橋桁と橋脚の間には上部構造から下部構造へ自重や自動車荷重、地震時慣性力を伝えるとともに、温度変化にともなう桁の伸び縮みや、たわみによる桁の回転に対応する機能を有するゴムの支承(ししょう)を設けることが多いのですが、ここでは簡単に言うと鋼鉄で作った橋桁と鉄筋コンクリートで作った橋脚が支承を設けずに一体化しているのです。こうすると耐震性能が高く、支承が無い分メンテナンス的にも優れているのですよ」
剛結構造にするか、支承を入れるかは、橋の線形や地形・地盤条件に基づき、橋の構造形式や規模を検討シミュレーションして、建設費だけでなく将来にわたる維持管理費も含めたライフサイクルコストや、構造性、施工性、維持管理、周辺との調和(景観)などを総合的に評価して決定するのだとか。
ただ丈夫で美しい橋を造るだけではなく、さまざまな条件下による健全性や耐震性などを考えつつ、いかに低コストで作れるかも計算し、造られるのですね。
この剛結部分は、写真左のように橋脚柱を橋桁間にスポッと嵌めて連結すると施工しやすいのですが、右の辺りは計画道路幅が狭いため橋桁の幅が狭く、必要な幅の橋脚を橋桁間にスポッと嵌め込めないのだとか。そのため橋脚柱の先端の部分が主桁を貫通するため細部構造が複雑で製作施工は難しくなるんですって。
「それから見てください。剛結構造の橋脚は梁が無くて、スッキリとした形状になっています」
ほんとだ!橋面からの排水管も橋桁の内側に収めて、目障りなものを取り払い真っ直ぐ直線的に伸びるようすが美しい~。点検時に仮設足場を掛ける吊り金具もなるべく目立たないように隅の方に付けているのもニクイですね。