世界文化遺産を堪能!美しき教会と自然を巡る、長崎「五島列島」の旅
「久賀島」で世界遺産の集落・教会をめぐる
2日目は、旅のハイライトでもある「五島列島キリシタン物語【縦断クルーズ編】」(2023年3月26日まで〈土・日のみ※除外日あり〉、2023年4月以降のスケジュールは準備中)に参加します。
これは五島市観光協会の企画による世界遺産の集落・教会を地元ガイドとめぐるツアーで、朝8時45分に「福江港ターミナル」に集合。午後2時30分に「若松港」で解散するまで、久賀島、奈留島、若松島をめぐります。
世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」には、長崎県を中心にした13の歴史的な遺産があげられており、五島の教会の名前が並びます。
江戸時代に迫害を逃れて五島へやってきたキリシタンたち。豊臣秀吉のバテレン追放令に始まった弾圧は、明治初めまで続いたのですが、200年以上も信仰を絶やさず生き抜いた奇跡の島としてユネスコに登録され注目されています。
これらの教会は、1873(明治6)年にキリスト教を禁じた掟が取り払われたことで、弾圧を恐れることなく、祈ることができるようになった喜びを込めて、キリシタンたちが教会堂を作り始めたものです。
1.信徒たちが押し込められた「牢屋の窄殉教記念教会堂」
「久賀島」へはフェリーで向かいます。田浦港に到着後、タクシーに乗車し、「牢屋の窄殉(さこじゅん)教記念教会」へ。
途中、車窓から「浜脇教会堂」を望みますが、こちらの教会は五島初の鉄筋コンクリート造りに1931(昭和6)年に建て替えられています。
1868(明治元)年に、自らの信仰を告白した久賀島のキリシタンが捕らえられ、12畳ほどの牢屋に200名余りの人々が押し込められました。
正面にある塔「信仰之礎」には、入牢させられたキリシタンたちの霊名と名前が刻まれています。
この殉教の地に建てられたのが、「牢屋の窄殉教記念教会堂」。聖堂内部は、約200名の信徒たちが8カ月もの間押し込められた牢屋の広さがわかるよう、中央部に12畳分が灰色のじゅうたんで色分けされているのが特徴です。
私が訪れたときには、脇道で島の工房で作られた五島の特産品・椿オイルが売られていました。
- 牢屋の窄殉教記念聖堂
- 長崎県五島市久賀町大開
- 無料(※献金箱にて寄付が可能)
- 五島市観光サイト
2.「旧五輪教会堂」は歴史的に貴重な建造物
続いては、「旧五輪教会堂」へ。地元のドライバーでも難しいという細く曲がりくねった道を進んでいきます。
車はここまでで、駐車場からは約500mほどの山道を歩いて教会堂へ向かいます。
というのも、五島にある教会の多くはキリシタンたちが潜伏していた場所に造られているため人里から遠く離れており、この教会堂へは現代でも車でアクセスすることのできない五輪地区にあるから。
約5分ほど歩いた先に海が見えてくると、教会堂はすぐそこです。
小さな漁港のわずかな土地に、「旧五輪教会堂」と「五輪教会」が並んで建っています。この旧五輪教会堂は、浜脇教会の建て替えを機に、五輪地区に譲り受けたもので、1931(昭和6)年に移築されました。
以後50年間、信徒たちの信仰の拠り所でしたが、老朽化のため1985(昭和60)年に五輪教会が建てられ、教会の役目を終えています。
木造瓦葺平家建てで、窓がポインテッドアーチ型ですが、外観は和風建築。当時の教会建築の様子を知るうえで、歴史的に貴重な建造物であり、世界文化遺産の構成資産である「久賀島の集落」に建つ教会です。国の重要文化財にも指定されています。
- 旧五輪教会堂
- 長崎県五島市蕨町五輪
- 9:00~16:00
- 五島市観光サイト
- 見学する際は、個人・団体問わず見学2日前までに事前連絡が必要です(対応時間9:00~16:00)。
3.代表的な木造教会「江上天主堂」
ここからは海上タクシーで奈留島にある「江上(えがみ)天主堂」へ向かいます。
白の板張り壁に水色の窓枠がはめられ、背後にある森林とのコントラストが美しい教会です。
内部は立面構成の三廊式、湿気を避けるために床を高くし、柱には手書きの木目模様、窓には花を描いた透明ガラスを工夫しているなどの特徴があります。
世界文化遺産「奈留島の江上集落」の構成資産で、大正時代には鉄筋コンクリートが主流になっていくなか、小規模ながら日本の代表的な木造教会として、国の重要文化財にも指定されています。
- 江上天主堂
- 長崎県五島市奈留町大串1131
- 休日:月曜日定休(月曜日が祝日の場合は翌平日が休み)
- 五島市観光サイト
- 見学する際は、個人・団体問わず見学2日前までに事前連絡が必要です(対応時間9:30~17:30)。
ここまでが午前中の工程。港に戻り、昼食をとります。
4.信者たちが隠れて生活をしていた「キリシタン洞窟」と「ハリノメンド」
その後、海上タクシーで、上五島の若松島にある「キリシタン洞窟」や「ハリノメンド」などを船上から望むことになります。ここから先は船でしか行けない場所です。
上五島に向かって北上する途中、若松島に潜伏キリシタン3家族が暮らしていた「キリシタン洞窟」があります。
ここはキリスト教迫害を避けて信者たちが隠れて生活をしていた場所。焚き火の煙を船に見つけられ、棄教するためにひどい拷問を受けたとのこと。
その後、信仰を守ろうとした人たちをしのび、1967(昭和42)年に洞窟の入り口にキリスト像が建てられ、毎年11月にはこの場所でミサを行なっているそうです。
この洞窟から裏手に回るとあるのが、「ハリノメンド」と呼ばれる荒波の侵食によってできた穴が見えてきます。
五島弁で穴のことを「メンズ」や「メンド」というそうで、ハリノメンドとは「針の穴」という意味。この穴は、マリア様がイエスを抱いている姿(聖母子像)のシルエットに見えることから注目を集めているそうです。
- キリシタン洞窟
- 長崎県南松浦郡新上五島町若松郷
- 長崎県観光連盟公式サイト
若松港へ着くと、これでツアーは終了し、解散です。宿泊先は福江島なので、若松港から福江港へフェリーで戻ります。
福江島には夕方頃に到着。この日は五島の名産品、五島牛のステーキを食べ、温泉で疲れを癒して就寝しました。
最終日は絶対に訪れたい「大浦天主堂」へ
最終日は9時20分の高速船で長崎へ。到着後、港からタクシーで「大浦天主堂」へ向かいます。
大浦天主堂が完成したのは1864年。日本人にはまだキリスト教の信仰が許されていなかったころで、翌65年に浦上の潜伏キリシタンがフランス人神父に信仰の告白をしたという信徒発見の舞台でもあります。
1933年には国宝に指定され、2018年には「潜伏キリシタン関連遺産」のひとつとして世界遺産にも登録されました。
隣接する「旧羅典神学校」や「旧長崎大司教かん」は、「キリシタン博物館」として開館していて、長崎のキリシタン関連資料が展示され、歴史上重要な資料を数多く見ることができます。
- 大浦天主堂
- 長崎県長崎市南山手町5-3
- 拝観料:大人1000円/中高生400円/小学生300円
- 通常は8:30〜18:00、11月1日~2月末日は8:30〜17:30(最終入場は30分前まで)
- 公式サイト
こうして2泊3日の長崎・五島列島の旅は終了しました。五島列島めぐりは、最初、自力でと考えていたのですが、時間的なことや工程内容などを踏まえると、現地の観光協会主催ツアーが一番効率良く、コストパフォーマンスも良かったです。
1日目の福江島めぐりならば、レンタカーで回るのがベストではと考えます。ただ、今回は上五島の島々をまわっていないので、いつの日か再訪しようと思っています。
ちなみに今回私が利用したツアーですが、2023(令和5)年度4月~9月のツアーについては現在準備中となっており、3月から予約開始予定とのこと。詳しくは公式サイトをご確認ください。
五島は年間平均気温が17度と温暖。一年を通して過ごしやすいので、台風シーズンを避ければ、いつ訪れても楽しめるのではないでしょうか。
- 参考:長崎県「五島の概要」(PDF)
- image by:岡田すみえ
- ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
- ※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウイルスの国内・各都道府県情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。