春を告げる奈良の風物詩。東大寺の二月堂で行われる「修二会(お水取り)」
お正月を過ぎると、暦の上では春の到来です。まだまだ寒い日が続きますが、あたたかな春を待つ行事が1月末ごろから全国で行われます。
古都・奈良県でも春を待つ行事があり、なんと「この行事を見なければ春が来ない」といわれるほど。そんな歴史のある行事が、東大寺の「お水取り」です。2025年も行われる奈良の春の行事に迫ってみましょう。
東大寺の二月堂で行われる「お水取り」
東大寺にある仏堂「二月堂」で行われる「お水取り」。この伝統行事は、テレビでも度々特集を組まれるほど有名な行事です。コロナ禍で一般公開が叶わなかった2022年には、NHKによって全国へ生放送されました。
「お水取り」と呼ばれている行事ですが、実は通称です。「修二会(しゅにえ)」と呼ばれる行事の中に含まれる一部の儀式のことを指します。
修二会はさまざまな儀式から成り立っていますが、広く知られているのが「お水取り」と「お松明(おたいまつ)」という儀式です。なかには「お水取り」のことを「お松明」と呼ぶ方もいらっしゃいます。
「お水取り」は、毎年3月1日〜15日にかけて行われる伝統行事で、二月堂の本尊である「十一面観音菩薩」に向かい悔い改め、祈りを捧げるために行われます。
3月1日から毎日行われるのが二月堂の舞台を炎が彩る「お松明」で、3月12日の深夜から行われるのが「お水取り」です。
しかし儀式そのものは見学することができません。そのため「お水取り」を見学するということは「お松明」を見に、二月堂を訪れることとなります。
「お水取り」は不退の行法と呼ばれ、雨が降ろうが雪が降ろうが必ず毎年行われ、2025年は1274回目を迎えます。
始まったのは752年で、奈良時代から一度も欠かすことなく行われてきました。戦時中でも、なんと二月堂が消失したときですら欠かさず行われてきたのです。
このことだけでも、奈良の人々にとって重要な行事であることが伺えますね。
3月1日から2週間見られる「お松明」
「お水取り」という通称とは真逆の燃えさかる「お松明」。実は儀式が始まった当初は「練行衆」と呼ばれる僧侶の方々を暗いお堂へと案内するため、実用的なサイズの松明だったとされています。
「練行衆」は2月中ごろから身を清める準備段階に入り、3月になると毎日「お松明」に続いて二月堂に入られ読経を行われるのですが、灯りがないため童子と呼ばれる方々が松明で足元を照らしていたのですね。
しかしいつの頃からか、この「お松明」が通常の小さなものではなく巨大なサイズへと変わり、行事の目玉へとなりました。
長さなんと6mの松明が二月堂の舞台に現れ、火の粉を捲き上げながら進む様子は迫力満点。この火の粉に触れると一年を健康に過ごせると信じられています。
特別な「お松明」の日も!
3月に入り毎日行われる「お松明」ですが、特別な日が2日間あり、一層多くの参拝客が訪れます。それが3月12日に行われる「籠松明」と、3月14日に行われる「尻つけ松明」です。
「籠松明」は通常より巨大な約8m、重さはなんと約80kgにも及びます。この日はいつもの10本より多い11本から飛び散る火の粉が美しく迫力満点です。
二月堂の舞台から大きく突き出した火は、遠くから見ていても熱さを感じるような迫力です。
そして「尻つけ松明」とは10本の松明が次々と現れる行事です。二月堂の舞台を走り抜けたあと、一同にそろう様子が見られます。
燃え盛るお松明が10本そろうのはこの14日だけ。想像するより大きく燃え上がるお松明がずらりと並ぶ様子は圧巻の一言です。
「お水取り」は3月12日に行われる
「お水取り」の儀式は、3月12日の深夜1時ごろから始まります。しかし先ほどもご紹介した通り、この儀式は秘儀となっており、見学することはできません。
内容としては二月堂のほとりにある湧き水を組み上げ、そのお水を本尊に捧げる儀式で、3度にわたって汲み上げられるこの儀式が終わると春が来るといわれています。
修二会が秘儀といわれる理由は、この姿を見ることができないからですね。何がどのように行われているかは分からないからこそ神秘的で大切な儀式なのです。
はるか昔から伝わる古都奈良の儀式は、とても迫力はあるものの、神秘的で不思議な美しさがあります。近畿地方に春を呼び込む伝統行事を見学しにぜひ出かけてみましょう。
- 東大寺 修二会(お水取り)
- 奈良県奈良市雑司町406-1
- 毎年3月1日〜15日
- 公式サイト
- image by:photoAC
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