【永遠の青春スター】24歳でこの世を去ったジェームス・ディーンの栄光を辿る旅
ジム・モリソン27歳、リバー・フェニックス23歳、そして尾崎豊26歳。古今東西、映画や音楽の世界では、夭折した天才が後を絶ちません。彼らは短い人生をフルスピードで駆け抜け、そして死んだ後にも長く人々の記憶に残ります。
1950年代の映画俳優、ジェームス・ディーンもそのひとり。その伝説は半世紀を過ぎた現在でも色褪せることなく、輝きを放ち続けています。
1931年にインディアナ州で生まれたディーンは、1955年にカリフォルニア州で亡くなりました。享年24歳。俳優としての活動期間はわずか4年。主な出演作品は3本のみです。
初の主演作品で一躍スターに
無名の俳優だったディーンは1955年の映画『エデンの東』で主役に抜擢されました。原作はジョン・スタインベック。旧約聖書に書かれたカインとアベル兄弟の確執、父親と息子の関係、そして原罪をモチーフにしたとされるこの作品で、ディーンはキャル・トラスク(カイン)を演じました。
舞台となったカリフォルニア州・サリナスにあるスタインベック記念博物館には公開当時のポスターが貼られ、ディーンの生涯も詳しく紹介されています。
この映画でディーンはアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされました。初の主演作品であったにもかかわらずです。
しかし、ディーンがその栄光を長く味わうことはありませんでした。作品公開後のわずか半年後に、交通事故でこの世を去ったからです。日本での公開はディーンの死後でした。
32歳で謎の死を遂げたブルース・リーも代表作『燃えよドラゴン』が公開されたときはすでに故人でした。ディーンとリーは俳優としてのタイプは大きく異なります。
しかし、死んだ後も世界中で少年たちの心を揺さぶり続けていることでは共通してはいないでしょうか。私もまた、この2人のポスターを自室の部屋に貼っていたひとりです。
『理由なき反抗』の名シーン舞台に建てられた胸像
ディーンの主演2作目は『理由なき反抗』、続いて準主演の『ジャイアンツ』が遺作となりました。
しかし、この2作はどちらもディーンの死後に公開されたものです。『理由なき反抗』は1955年公開、『ジャイアンツ』は1956年公開。ディーンは代表作3本が約1年半の間に次々と公開されていたさなかに亡くなったのです。
『理由なき反抗』でディーンが身に纏っていた赤いジャケットと白いTシャツ、そしてブルージーンズ。このファッションに憧れた少年が世界中に一体どれだけいたでしょうか。
またしても恥を忍んで告白するのですが、私も高校生のころにそっくり真似をしていたものでした。身の程もわきまえずに。
ディーンがナイフを持って喧嘩をするシーンの舞台となったグリフィス天文台はこの映画によって有名になりました。現在はハリウッド・サインを見渡す名所としても知られ、ロサンゼルスでも屈指の人気観光スポットになっていますが、その展望台にはディーンの胸像が建てられています。
ジェームス・ディーンが散った平原のなかの州道交差点
ディーンが死亡した事故現場はカリフォルニア中央部の平原を走る2つの州道(46号線と41号線)がY字に交差する地点でした。私も通ったことがありますが、見渡す限り何もないところです。
アメリカではよくこのような場所を“Middle of nowhere”と表現します。「James Dean Memorial Junction」という看板がなければ、きっと気づかずに通り過ぎてしまっていたでしょう。
ただ、その交差点から約40km離れた場所に、ディーンが事故の直前に立ち寄ったとされるガソリンスタンド兼雑貨店「Blackwells Corner」があります。現在も営業中なのですが、同時にディーンの記憶を人々に伝える記念博物館のようになっています。
ガソリンスタンドにはディーンの大きな看板が道路脇に立ち、雑貨店内の壁にはディーンの写真や事故を報じる新聞記事などが数多く飾られています。アーモンドやカシューナッツといった地元名産品のラベルにもディーンの顔が描かれています。
ディーンはカーレースに出場するためにサリナスのサーキットへ愛車のポルシェ・550スパイダーで向かっていた途中で事故を起こしたと言われています。
この店の所在地名は“Lost Hills”。「失われた丘」と訳すべきでしょうか。まるでゴーストタウンのような地名ですが、それが正式名称なのです。ロサンゼルスとサンフランシスコのちょうど中間地点のような場所にあります。
視界を遮るものが何もない平原に道路が交差しているだけの場所です。ロバート・ジョンソンが悪魔に魂を売る代わりにギターのテクニックを手に入れたとされる伝説の十字路「ザ・クロスロード」を彷彿させます。
車で行くしか現実的なアクセス方法はありませんし、そこまでのドライブもかなり長く、退屈なものになるでしょう。それでもディーンの姿に胸を熱くした記憶を持つ人には、ぜひ目指してほしい場所のひとつです。
- image by:角谷剛
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