5年前と比べて京都はどう変わったのか?コロナ前後のオーバーツーリズムの現状
日本を代表する観光都市「京都」。特に、春の桜、秋の紅葉のころは、国内外から多くの観光客が訪れます。
その京都は、コロナ前からインバウンドの旅行者(訪日客)が多いことで問題となっていましたが、コロナ禍は入国制限もあって激減。その入国緩和後の今、再び訪日客が押し寄せて「オーバーツーリズム(観光公害)」の状況が続いています。
5年前の2019年と今の2024年、この5年で京都はどう変わったのでしょうか。京都をよく訪れる筆者が、この5年における京都の状況、その比較などを紹介します。
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JR京都駅はいつも混雑。路線バスは「対策」続々
京都の主な玄関口は、JR京都駅。東海道新幹線が停車する主要駅で、観光客のほとんどはこの駅に降り立つでしょう。いつも多くの乗降客であふれています。
京都駅の北、烏丸口にあるバスターミナルは、特に、旅行客が多い時期は、主要観光スポット行きは長蛇の列。
しかも、多くの訪日客は路線バスにスーツケースを持ち込んで乗車することもあり、普段使いの市民から苦情が出ています。バスターミナル付近で多くのスタッフが案内する様子が見られますが、根本的解決には至っていないのが正直なところです。
そして、この5年で大きく変わったのは、京都市内でバス乗り放題だった「バス1日券」(600円)が2023年9月末でなくなったこと。
現在、「地下鉄・バス1日券」(1,100円)はあるものの、京都市内の観光はバスだけでほぼ網羅できたのと、地下鉄の路線網が便利とは言えず、ずっと昔からバス1日券を重宝していた筆者からすると割高になった感があります。
バスでは、京都駅から清水寺近くの五条坂、祇園などを通る銀閣寺といった主要観光スポットを結ぶ「観光特急バス」が、2024年6月から運行が始まりました。
運賃が大人500円/子ども250円と、通常の2倍。しかし、途中で停車する停留所が少ないうえ、路線バスの混雑解消になると期待されています。
一方、京都駅のタクシー乗り場にも、スーツケースを持った訪日客の長い行列ができています。これは以前からですが、今の日本はタクシーの運転手不足で京都も例外でなく、タクシーがなかなか来ないことも。しかも、京都の街中でタクシーを拾うのも、今では至難の業となっています。
観光地で外国人トラブル増加、社会問題にも
主な観光スポットの混雑ぶりは「コロナ前以上」といっても過言ではないかもしれません。
例えば、舞妓さんを執拗に追いかけて撮影しようとする「舞妓パパラッチ」と呼ばれる外国人観光客、祇園の私道に「通り抜け禁止」の立て看板が登場したり、八坂神社の本殿にある「鈴の緒」で悪ふざけするガイド引率外国人グループの動画が拡散されたりするなど。約5年前より、外国人による混雑だけでなくトラブルも増えている印象です。
例えば、「スターバックス コーヒー 京都二寧坂ヤサカ茶屋店」は、2017年6月のオープン時から国内外の観光客に人気。それでも当時はまだ「店内で落ち着いてコーヒーを飲みたいなら、午前中がおすすめ」と言われていました。
そして、コロナ禍は外国人ゼロ、日本人も少ないため、開店直後の平日だと「客が自分1人」ということもありました。
そして今、開店前から訪日客が列をなし、日中ずっとほぼパンク状態。二寧坂自体も、清水寺から八坂神社の方面へ向かう通り道で風情があるため、早朝からSNS映え狙いの訪日客がいて桜の時期などは大混雑という状況です。
ほかにも、京都市民の台所で知られる「錦市場」は、昔ながらの店舗より、食べ歩きできる串などを売る店が増え、海鮮丼や焼き蟹などを売る立ち食いスタイルのフードコートは訪日客で大賑わい。値段も軒並み強気で、円安で訪日客には高くなくとも、日本人にはなかなか高額です。
京都の蔵を改装した「シティベーカリー」まで出店し、この店舗限定で1個1,000円以上する「マシュマロ最中」なども販売しています。
なお、コロナ前に多かった中国人旅行客は今は少なく、現在よく見かけるのは欧米人。台湾や韓国といったアジアからの旅行客も多いものの、欧米人のほうが目に付きやすいです。
ホテルは高騰、フロントで外国語が飛び交う
「京都市内のホテルが高い」というのも、最近よく言われています。桜や紅葉の時期など、シティホテルのランクで10万円超えも。ビジネスホテルですら平気で1泊2~3万円します。
約5年前はどうだったかというと、多少は高かったものの、今ほど高くなかった印象です。世界の高級ホテルブランドが次々と進出して開業ラッシュのころにコロナ禍となり、海外はおろか国内からの旅行客も激減。
そのころのビジネスホテルなどは1泊3,000円台、しかもGoToトラベルや全国旅行支援などあり、宿泊で付いてくるクーポン券の金額などを差し引くと「宿泊費ほぼゼロ」ということも実のところ、けっこうありました。
現在はなかなか京都市内に泊まるのは至難の業ではあるものの、先の4月最終週、筆者は四条烏丸に近い外資系ホテルチェーン(3つ星)に1泊5,000円台で予約。
「大型連休前」「桜の時期が終わった後」「平日の中日」という絶妙のタイミングだったからでしょう。ホテルは時期により、まだ安いこともあります。
宿泊客は、自分以外ほぼ外国人。しかもフロントで対応するスタッフも大半が外国人で、英語とフランス語が飛び交っていました。
晩ごはんを食べるために夜の四条烏丸エリアを歩いても、外国人ばかり。ラーメン屋に入るとスタッフはもちろん日本人ですが、メニューは日英中韓対応で、日本語での会話すら明らかに浮いている感じでした。
「円安」がインバウンド後押し、日本人どうする?
京都は昔から外国人の観光客に人気がありました。しかしコロナが明け、円安となっている今、その人気は過去と比べ物にならないほどです。
日本人にとっていくら高くとも、外国人には安く感じるようで、長期滞在も珍しくありません。ホテルの宿泊費が上がると、普通の日本人には1、2泊が限界。特に夜の街を歩くと、京都に宿泊する外国人が多く目につきます。主要な観光スポットも、路線バスも、外国人はもはやどこにでもいます。
京都駅の新幹線改札の近くには「SHINKANSEN TICKET HERE」と、英語だけの貼り紙も。いかに外国人の問い合わせが窓口なので多いのかがうかがえます。円安が続く限り、この状況は続くでしょう。
桜や紅葉のシーズンは厳しくとも、見ごろの時期を外す、外国人の休暇ピークを外す、日本人の大型連休も外すなど、あくまでタイミング次第ではあるものの、京都はまだまだ観光で楽しめます。
誰もがまず行くような主要な観光スポットではなく、やや郊外にあるマニアックな場所などですと、外国人観光客は今も皆無もしくはかなり少ないので、今の狙い目と言えるでしょう。
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